第79話.ハプニングと赤面
バシャンという浮き輪が水に落ちる音が辺りに鳴り響く。その音が鳴り響いている、一瞬。そのたった0コンマいくらかの間、周りの時間の流れが遅くなった気がした。辺りを見渡してみると、時間の流れが遅くなったおかげでよく見ることの出来る光を反射した無数の水滴たち。
そして、もう一度水面を弾んでバシャンと音が響いた。
「あっははは!怖かったー!」
俺の目の前に座っている空宮は笑いながらそう言う。
怖がっていると言うよりかは心の底から楽しんでいるなと、そう思いながらも、それを口に出すことは決してせずに浮き輪から降りた。
「よいしょっと」
「あわわっ!」
俺が浮き輪から勢いよく降りた時の反動のせいか、空宮もつられて一緒にプールに落ちてしまった。
「おわっ!っと、大丈夫か?」
何とか体勢を整えて空宮を抱きかかえる形で支えた。
「う、うん。その、ごめ……ん」
空宮がそう言った時に超至近距離で目が合う。
あまりにも近かったせいなのか、数秒間の間俺と空宮の間に何とも言えない空気が流れた。
よくよく空宮の事を見てみると、耳や頬がほんのりと朱に染っている。そして何より、支えるときに持った空宮の肩にすら少し熱がこもり始めている。
「あ、あの、出よっか……」
「お、おう……」
2人して顔を赤くしたまま、ゆっくりとプールから浮き輪を引き上げて上がった。
一体この空気をどうしようか。空宮もなぜかさっきから珍しく、もじもじとしてしおらしくなっているし。ああ、ダメだ。余計なことは何も考えるな。今の第一目標は流れるプールで流れ続けている凛達と合流することだ。
✲✲✲
「あ!蒼ちゃんと刻くんやっと帰ってきたよ」
凛はそう言いながら俺達の方にへと駆け寄ってくる。
「もう、どこに行ってたのさ!二人がいきなり居なくなるから、てっきり合コンで二人抜け出す的な展開なのかなって思っちゃったよ!」
「違うからね?」
凛は腕を組みながらぷんぷんと怒っている。怒っているというにしては、随分と可愛らしいけど。
「ま、何でもいいや。あ、そうだ。お腹空いたし少し早いけどご飯にでもする?」
その引き締まったお腹をさすりながらそう言った。
「そうですね!私もお腹減ったし。それでいい刻兄?」
「別にいいけど」
「じゃあ一旦、荷物を取りに行きますか?」
「だな」
華山の提案で俺たちは移動する。
(こういうところにあるお店ってさ、お値段が少し高くない?学生の財布には厳しいよな気がするんですけど)
そう思いながら、自分達が占有しておいたレジャーシートの上に置いてあるカバンから財布を取る。
(誰もいない所に荷物置いておいても平気なのって、本当日本くらいなんだろうなぁ)
「ねぇ刻くん。何食べる?」
「んー、ラーメン?」
俺は凛がそう聞いてくるのでそう返す。
「ラーメン!いいね!」
凛はグッと手をすると俺の横を歩く。
あの、横に立たれると色んな人の視線が来るから、出来れば水着の時は控えて欲しいんですけどね?主な理由はその豊満なもののせいなんですけども。
俺はそう思いながら歩く。
「じゃあ私はフランクフルト〜。有理さんも行きましょ!」
「は、はいっ!」
現は華山を連れて先にお店の方に走っていってしまった。
「じゃあ、俺たちは先に席のキープにでもしとくか」
「だね〜」
「そうしよ」
俺達はそう言うといい感じに日陰の席を取る。
「空宮は何にするんだ?」
そう聞くと空宮は少し悩む仕草を見せながらもすぐに答えてくれた。
「そうだねー。丼物?」
「なぜ疑問形」
俺達はそんな会話をしながら、現達が帰ってくるのを待つ。
腹が減った。
この時間が多分何気に一番幸せ。こいつらとバカみたいな話して、ゆっくりできて、こんな時間がずっと続けばいいのにな。
第79話終わりましたね。最近文量少なくないか?と思われた方がいられるかと思います。作者今絶賛テスト期間なんです!だから許して・・・
さてと次回は28日です。お楽しみに!
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