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第72話.水着

「ということで、行ってきまーす」


 朝ソファに座って本を読んでいると、なんの前触れもなく(うつみ)にそう言われる。


「え?どこか行くの?」


 当然俺は現がどこに行くのか知るわけがないので、現にそう尋ねた。


「どこに行くのかって、年頃の女の子に聞いちゃうのー?」


 現は少し煽り口調でそう俺に言ってくる。


(年頃とかあんま関係なくないかな?ただ気になっただけなのに〜)


「はいはい、年頃の女の子ね。で、どこに行くの?」

「あれ!?刻兄私の話聞いてた!?一応本当に年頃の女の子なんですけど!」


 (うつみ)は俺が予想外の反応を示したせいか、少し焦ったような反応を見せる。


(別にな、年頃の女の子でも妹が相手だと特に動じなくなるものなのよ)


「まぁ、別に言ってもいいんだけどさ」

「なら、初めから言えよっ!」

「ごめーん」


 (うつみ)はペロッと舌を出しながらそう言う。


(ほんと、そういうのはね可愛いから許されるんだからね?だから許してあげる!)


 自分でも中々重度なシスコンだと思いながら、俺は(うつみ)に早く話すように促した。


「ほら、明日プールに行くでしょ?」

「うん。確かに空宮達と行くな」

「そうそう蒼姉達と。それでさ、明日着る水着を新しく買おーって事になったの」

「だから、今から買い物に行くと」

「そ、そゆこと」


 (うつみ)は「よっ、さすが刻兄」と言いながらビシッと指を指してくる。


(なんか、そのポーズだと名探偵さんみたい)


「ふぅん、ま、それなら行っておいで」


 そう言うと(うつみ)はニンマリと不敵な笑みを浮かべた。


「うん!せっかくだし刻兄を悩殺出来るような水着を買ってくるよん」


 (うつみ)はそう言うと、シュタタタターっと忍者の如く玄関に走っていった。


「面積少ないのはダメね」

「りょーかいっ!」


 そうとだけ言うと(うつみ)は玄関から少し大きめの声でそう言う。


「行ってきまーす」

「おう、気を付けてな」


 玄関のドアの鍵をガチャりと閉める音が聞こえると、この家には一気に静寂が訪れた。


(水着か。俺持ってたっけな?)


 ふとそう思い、俺は自室へと向かう。


「水着さんやーい、出ておいで〜」


 よく分からない鼻唄を歌いながらタンスの中を漁った。

 しばらくタンスの中を探していると、水着独特のポリエステルの感触が手に触れる。俺はそれを手につかんで奥から取り出した。


「おー、あったあったー」


 出てきたのはそれなりの大きさがある男性用水着。

 まぁ、男性用じゃなかったらビビるけどね?

 黒基調で所々に青いラインがアクセントとして入っている程度のシンプルなものだ。


「いやー、去年灯崎(ともさき)の野郎と海に行っといて正解だったなー。じゃなかったら、俺も水着買いに行くはめになってたわ」


 俺は過去の自分の選択に感謝する。そして俺が感謝をし終えて目線を下に下げると、窓の外から入った日光に反射して何かがキラッと光った。


「ん?」


 もう一度水着を取り出した辺りに手を突っ込み、その正体を探そうとする。ものの数秒もすると、何かプラスチックのような固いものに指が当たった。


「何だろ」


 そう思いながら先程と同様に指で掴んで取り出す。すると出てきたものは、棒状の中が空洞になっている筒と、鼻と目がいい感じに覆えそうなゴーグルだった。


「あ!これシュノーケリングの一式装備じゃん!てっきり親に捨てられてたものかと思ってたけど、まだあったのか」


 俺は昔夏になると行っていた海で、遊ぶ時に使っていたシュノーケリングの装備を、少し懐かしく思いながら光にかざしたりして遊んだ。



✲✲✲



 見つけた水着を分かりやすい場所に置き、シュノーケルを仕舞うとリビングに戻る。先程も少し思ったが、(うつみ)がいなくなると本当にこの家は静かになる。

 寝やすくなったりと色々静かになることで発生するメリットもあるにはあるが、少し寂しくも思うな。あとは暇。ただひたすら暇。


「暇だし本でも読むか」


 俺はテーブルの上に栞を挟んで置いておいた本を手に取る。


(クリープハイプだっけか?栞って曲があったの。それでも流しながら読もうかな?)


 俺はスマホをスピーカー代わりにして音楽を流す。

 音楽を聴きながら本を読む。これ、なかなか至福の時間。


 世間様は思いっきり平日ってこともあって、夏休み真っ只中である子供達の声以外は、外からはほとんど何も聞こえない。

かく言う俺も夏休み真っ只中なわけであって、働く社会人様には頭が上がらない。


(こんなに暑い日に今日もお疲れ様です)


 全国の働く大人に労いの言葉をかけながら、本をひたすら読み続けた。


「図書館戦争シリーズやっぱり面白いな。と言うか、有川先生が書く話が面白いんだよな」


 俺はリビングに置いてある本棚に目をやる。

 そこには様々なジャンルの小説が置いてあるが、その中でも特別目立つように置かれているのが、有川先生の小説だ。

 図書館戦争の映画も面白かったし恋愛要素もあるのがいいよな。有川先生に恋愛物書かせたら、右に出る人いないんじゃないのかってくらい面白い。

 ソファから立ち上がり本棚に近付いて、本を元の場所に戻す。


「昼寝でもするか」


 そう思いソファにまた戻ると、ドサッと倒れるように寝転んだ。


第72話終わりましたね。有川先生の小説を読まれたことはありますか?僕自身かなり有川先生の作品が好きなんですよね。特に恋愛パートが!

とまぁ、有川先生大好きな作者でした。ぜひ読んでみてくださいね。

さてと次回は14日のバレンタインデーの日です。お楽しみに!

もしよろしければブックマークと☆もお願いしますね!

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