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第694話.僕だってお嫁さんになりたいの

 蒼ちゃんと刻くんが結婚したのは記憶に新しい。と言っても数年前の話。今では立派にパパとママをやっている。

 時が経つのは早いもので時折見せてもらう双子姉妹の写真も、見る度に成長しているのだ。なんだか親になった気分。

 かくいう僕はCAとしてバリバリ働いているのは言いものの、これといった進展がない。あるとしたら上木くんと付き合い出してから何年か経ったということくらいだろうか。この前が付き合ってちょうど10周年記念。長すぎだろうという感じだ。正直ベテランの域に入ってきている。

 ここまで長引いている理由は簡単なのだ。ぼくも上木くんもあまりに忙しすぎるというのが他でもない理由。僕は飛行機に乗っているから世界各地に飛ぶし、上木くんは大学卒業後プロの選手になって今ではポーランドの名門チームに所属しているし。

 連絡は取れど実際はなかなか会えていない。この前の10周年記念だってテレビ通話でいつもよりも長くお喋りしただけだ。

 結婚の話があるとすればおそらく周年のタイミングだろう。しかしそのタイミングもこの前逃したし、どうなる事やら。

 僕は休日の部屋でため息をつきながら1人うなだれる。

 CAとして働く自分はキラキラしているが、家に帰ればどこにでもいるOLと何ら変わらない。怠惰な姿だ。


「大地くん、僕の事をお嫁に早く貰っておくれよぉ……」


 誰にも聞こえぬこのセリフ。部屋の壁に音が吸収されて反射することなく、虚しく静かになるだけだ。

 上木くんの選手としての邪魔をしたい訳では無い。彼はオリンピックなどの時は日本代表選手に招集されるような人だ。彼の栄光の道を閉ざしたくはない。けど、もう少し僕のことを見てくれてもいいんじゃないかとは思う。

 寂しいから、たまにCAとして働いている時も仲のいい夫婦を見ると大地くんのことを思い出す。僕もたまにはああやって一緒に旅行に行きたいなとか、2人でのんびり部屋で過ごしたいなとか。色々ある。そりゃ遠距離恋愛の時期だって沢山あったし、今もその延長線上だ。けど、それもそろそろ終わらせたいのだ。

 こう見えて僕は意外と貯金はマメにするほうだ。口座には沢山お金がある。今すぐ仕事を辞めたって困りはしない程度に。

 いっその事会いに行ってやろうか。

 いや、迷惑だろうな。重く感じられるかもしれない。

 けど、僕はどうしても会いたい。画面越しはもう嫌だ。

 抱きつきたい。

 頭を撫でて欲しい。

 もっと愛して欲しい。

 欲求ばかりが募って心がキャパオーバーしそうになる。

 どうしようもなくて、うわぁー!と叫びたくなったちょうどその時に電話が鳴った。

 僕は慌てずゆっくりとした手つきで手に取る。画面に表示している名前は僕の彼氏だ。


「大地くん?」

『あ、もしもし?今ちょっといいか?』

「うん、僕はいいけど。大地くんは忙しくないの?というかそっちは何時?」

『こっち?こっちというか、そうだな……今から会えるか?』

「え、あ、会え……?」


 大地くんはポーランドにいるはずじゃ。


『いや、ちょっと今帰国しててだな、今空港着いたんだよ』

「え、じゃあ事前に連絡くれたら迎えに行ったのに」

『ま、まぁ急遽というか、急ぎだったもんで連絡する時間がな。まぁ、とにかく会えたら嬉しい』

「あ、うん。僕は暇だし、適当にどこかで落ち合おうか」

『おう。じゃあまた後で』


 そう言って電話が切れる。


「連絡くらい忙しくてもよこせるくせに……」


 少しだけツンとしながら、少しだけ弾むような足取りで服を選ぶ。メイクもしていなかったし、CAの時とは違う、僕の好きなメイクで可愛くしよう。

 犬と同じしっぽがあれば確実にブンブンと振っている、そんな感情に僕は心を満たす。

 準備を爆速で終わらせて僕は意気揚々と外に出た。スマホで連絡を取って場所の確認だけすると足早に歩き出す。

 今日は空がきれいだ。家に篭もるつもりだったから見る予定もなかったから余計にそう思う。

 自然と笑みが零れて少し不気味な人にも見えそう。けど、僕は楽しいからそれでよし。

 スキップしだしそうな足取りのまま僕は大地くんに会いに行くのだ。


第694話終わりましたね。凛と上木の話でした。この2人ちゃんと付き合ったんですね。というか蒼と刻の結婚した時期が実は一番よくて、話の中でもあった通り凛達はかなり遅いんですよね。

さてと次回は、5日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

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