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第687話.トクトクとなる心音

 初めての子供というのは非常にワクワクしつつも、緊張するものである。

 それまでは自分が育てられる子供サイドだったのに対し、いきなり親という責任重大な育てるサイドに回るわけだ。緊張しないはずがない。

 私達は子育ての仕方というものを知らない。私は幼稚園の先生をしているわけだが、あれはあくまで教育機関の一種。子供わ大人にするまで見守る場所ではない。対して子育てはその子が産まれたばかりの状態から、社会に出て戦えるようになるまでを指す。時間とやることのレベルがはなから違うのだ。つまり私達は紛れもない新米両親なのである。

 子育てには当然様々な道具が必要だ。そしてまず必要なのが子供達の寝るベビーベッド。立ち歩きができるようになっても登り落ちないくらいの高さのある柵がついたものが必須だ。そして私達の場合はそれが×2となる。

 次に赤ちゃん服。回し着をさせてあげたら大した着数はいらないのかもしれない。けれどせっかくなのだから、ちゃんとそれぞれの分は用意してあげたい。なので服の数も×2となる。

 そこから諸々用意していくのだが、全てに×2という魔の数字がついていき、順調にお金が溶けていくのだった。

 いや、これから生まれる子供のためだ、親ならむしろ喜んでお金を溶かすべきだろう。


「んー、意外とお腹を蹴る段階に育つまで時間がかかるもんなんだね」


 私はお腹を擦りながら刻にそう言う。


「まぁ、10月10日って言うしな。すぐには大きくならんだろうし、というか双子なら蹴るほどのスペース無いんじゃないのか?」

「あー、それもそうかも。私、細いから!」

「そうだねぇ。でも今からはお腹の子のために沢山食べて栄養送ってねぇ。通常の2倍送るんだよ」

「ふ、太っちゃう!」

「ん、大丈夫。全部子供が吸い取ってくれる」


 これからこの世に生まれ落ちようとしているのだ。それこそ多量のエネルギーを求めていることだろう。

 私は刻を隣に呼ぶ。そして刻の手を借りるとお腹を擦らせる。


「服の上からじゃ分かんないけど、2人分入ってるせいか身ごもった女の人の平均よりも私はお腹が大きい方だってさ」

「確かにポコってしてるな。あと微妙にトクトク言ってる」

「うん、私もよく寝る前の静かな時間とかに感じる。生きてるんだなぁって感じる」


 私の中で確実に生命が育まれているというその事実に不思議な感覚を覚える。

 今までは誰かが産んだ子供しか見た事がなかったから、自分の中から産まれるという感覚が不思議で仕方がない。

 私に親が務まるのだろうか。

 時々そう思う。

 大人と言えるほどの年月は確かに生きた。結婚もしたし、ちゃんと仕事もしている。でも根っこの部分は昔と何も変わらない。子供っぽいままだ。

 子供の時から見てきた親や大人というのは私とは比べられないほどにしっかりしていて、私もいずれそうなるのだと思っていたけど、でも蓋を開けたらこれだ。見た目も機能もちゃんと大人してる。けど、やっぱり中身は子供のままだった。多分、大人になるっていうのはそういう部分を上手く隠せるようになることなんだと思う。

 きっと幼稚園の生徒から見た私は、あの頃の私が見ていたようにとても大人のように映るのだろう。本当はそんな立派な人間なんかじゃないのにね。


第687話終わりましたね。作者のバイト先にはよくお子さん連れが来ます。聞き分けのいい子もいれば、活発な子もいる訳でして、その度に親って大変だなぁと思うわけです。

さてと次回は、21日です。お楽しみに!

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