第682話.お酒
1回、2回、3回生と大学で過ごす時間も終わりが見え始める。就活に奔走する刻は毎日疲れていてしんどそうで、私も私で免許の取得と幼稚園への実習課題で忙しい。
まだ学生だが、していることは社会人と何ら変わらず、段々と自分の身分が分からなくなってきそうだ。
けれどしんどいのは変わらないが意外と食らいついていけるかものなのだ。しんどいし、休みたいし、バックれたくもなる。子供たちが幼稚園に来るよりも随分前には出勤しないといけないし、帰りだって遅い。こんなことを毎日やっていたら頭がおかしくなりそうになる。けれどこうやって食らいついていけてる。
案外私でもちゃんと大人になれるのかも、なんて思えてきたりもしているのだ。
明日は休みで刻も久しぶりに就活から解放されている。すっかり体の大きくなったましろを抱きかかえてソファに座る刻。私はその隣に座ってお酒を渡す。私達も既に20歳を超えてお酒が飲めちゃうのだ。
「ん、あんがと」
プルタブを上げてカシュッと音を鳴らす。刻は煽るようにしながら一気に流し込んだ。
「私も飲もっと」
私も刻もお酒にはある程度の耐性がある。だからこうして時々一緒に呑むのだ。ほろ酔いになったらそのままイチャイチャする事もよくある。
「んは〜……美味しぃなぁー」
私が飲むのは大学生御用達。ほとんどジュースで有名なほろよいだ。アルコール度数も低いし、気軽に飲む時にはちょうどいい。
「ん〜?ましろにはあげないよ?」
飲ませんかいという瞳でこちらを見つめていたのでそう釘をさしておく。
刻はカコンと空になった缶をテーブルに置くとふぅ、と息を吐く。疲れのせいかアルコールの回りもいいようで普段ならまだ赤くならないのに、今は少し頬を赤くしている。
「刻さんや、今日はお疲れ?」
「んー……そうだな」
「じゃあ、もうお休みする?」
尋ねると刻はすぐには首を振らずしばし悩んだ仕草を見せた。
「もう少し、起きとく。せっかく蒼との時間が取れてるんだし」
そう言って刻は立ち上がると冷蔵庫からもう一本お酒を取り出した。今度のは発泡酒。ほろよいよりも随分とアルコールが入っている。
「酔っちゃわない?」
「蒼の前で酔うのなら大丈夫だ。何かあったらましろがしばいてくれるだろうし」
「ましろに頼るくらいならもっと私に頼りなさいな」
「蒼は俺の事優しく寝かしそうだからなぁ」
「いや、それでいいんだよ。酔ったなら寝ちゃった方がいいんだから」
「まぁ、そうだけどさぁ」
前述の通り刻は疲れから普段よりもアルコールの回りが早い。そのせいで思考も呂律もだんだんとぐちゃぐちゃになり出す。
いつもはもっと飲むのに今日は相当らしい。
私は刻の瞳が静かに閉じるのを見届けてから寝室の方から枕とタオルケットを取ってくる。私1人では刻の事をベッドに運ぶのは到底無理なので今日はリビングで休んでもらおう。
第682話終わりましたね。お酒飲みだしちゃったね。ここまで来ると終わりがすぐそこまでやってきています。多分そう遠くないうちに最終回です。
さてと次回は、11日です。お楽しみに!
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