第681話.起きる、愛でる、愛でられる
夢を見ることがある。
途方もない、先の見えない夢。
終わりなき夢だ。
真っ白な光に包まれているかと思えば急に真っ暗になるし、かといって自分の姿が見えないわけではない。くっきりと輪郭を持った自分の手を見ながら、何も無い空間をただぷかぷかと浮くだけ。
時間の概念も無い、思考という概念すらもない。ただ存在するだけの世界線。これが夢だと気が付くのは起きてからで、けれど起きた後にはそもそもの記憶が無くなっている。
色付いた世界におはようと言うのがどれだけ幸せなことか。
俺はそう思う。
夢の世界でも何も無いのは怖い。かといって俺の脳は決して夢物語のような世界は見せてくれない。あるのは虚無だけだ。
だからこそ、この現実が堪らなく好きになる。
触れて感じて、俺の世界と繋がっているから。隔絶されていない、ちゃんと現実の世界だから。
まぶたを持ち上げて体をゆっくり起こす。隣にはまだ寝息を小さく立てているきみが寝ている。
陶器のように白く透き通った肌。それをほんのりと染めて寝ている姿が愛らしい。
さらりと頬を撫でやると、んん、と声を漏らす。
起こさないように撫でるのをやめて俺は部屋を移動した。
✲✲✲
撫でられた頬をなぞるように触る。
彼は気が付かなかったみたいだけど、撫でられる少し前に私も起きたのだ。
彼の後を追って起きるのもいいかなと思ったけど、今起きたらなんだか寝たフリをしていたことがバレそうで少し悩む。別にやましいことがあったから寝たふりをしていたわけではないし、なんとなくの寝たフリだったので起きたって別に問題は無いが。
彼はリビングにいるので寝室の様子は分からない。私は体を起こしてトテトテと扉の付近に近寄りリビングの方を覗き見る。
彼はソファ座ってましろを抱いていた。
成長した元子猫は体高もしっかりとして今では頼もしい番猫となりつつある。けれどそんなあの子も私達の前では甘えん坊になってくれる。
喉をゴロゴロと鳴らし、子猫の時と同じ、みゃん、という特徴的な鳴き声で鳴くのだ。
気持ちよさそうに撫でられるましろ。彼も楽しそうにしていてなんだか羨ましくなってくる。
私だってましろを撫でたいし、彼にも甘えたい。
気が付けば寝たフリがどうのこうのの話はすっかり忘れて寝室を飛び出していた。
勢いよくおはよう!と言い私は1人と1匹に抱きつく。
こんな日常が今日も、そして明日も続くのだ。
第681話終わりましたね。終わりが見えているというか、終わり方みたいなのは決まってるのですが、そこにどう持っていこうかなという段階です。作者、話を終わらせたことあまりないので。というか、思入れ深すぎてあまり終わらせたくない欲もあるので笑
さてと次回は、9日です。お楽しみに!
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