第676話.ブルックリン
初夏のような暑さに若干の汗をかきつつ、私は目的地とするカフェに歩を進める。
アスファルトで舗装された道は熱が反射するので直射日光を浴びるのに加えて余計に暑い。しかし、どれだけ暑いと言えどもまだ初春だ。日陰に入ると一気に涼しくなり、かいていた汗も随分な速度で引いていくのだ。
カフェは歩きだと20分ほどかかる場所にある。しかしそこまでの電車もバスも特に通っていないので今回は歩きだ。
若いのだから歩くのは当然という声も聞こえなくはないが、それでも20分というのはそこそこな時間だと思う。特にこの辺り一帯は歩き慣れた場所なわけだ。そんな場所にも関わらず純粋に20分かかるというのは単純に距離があるということにほかならない。むしろ、歩き慣れている場所だからこそ20分で済んでいるのであって、慣れていなければもっと時間がかかっていてもおかしくないのだ。
一通りの熱弁を済ませ、私は黙々と進む。
道中の信号待ちの時間は暇なのでインスタを開いてはみんなのストーリーを眺めていたりする。凛は大学がもうすぐ始まるが、ギリギリまではイギリスのお父さんの家で過ごすらしく、かの有名な時計台をバックにポーズを決める凛の写真がアップされていた。
さすがは英国女子、違和感の無さが半端じゃない。
ハーフの強みだろう。向こうの人と顔の特徴が似ているから極端に浮くという構図には決してならないのだ。日本人も浮きまくるという訳ではないだろうが、それでも凛には勝てないだろう。というか何より、凛はその後にルーツを持っているのだから当たり前と言えば当たり前なのだ。
楽しそうだな、なんて思っていると赤の信号が青に切り替わる。動いていた自動車が止まり人の波が動きだした。押されるように私も前に進む。
信号を渡ってからもしばらく歩いていると雰囲気漂う店が見えてきた。木の立て看板に店名が書かれている。
『ブルックリン』
なぜこの店名なのかは分からない。が、響といいなんだかオシャレそうな雰囲気だし、所詮はただの店名だ。味を左右するわけではない。
ここに来た人間とは思えぬ覚めて思考でそうまとめつつ、私は店の扉を開く。
扉に着けてあるカウベルがカランコロンとなり店主のおじさんがこちらを見た。席に案内されて私はメニュー表を手に取る。
さぁ、いよいよお楽しみのランチタイムだ。
第676話終わりましたね。作者は大学の課題が終わってなくて泣きそうです。正確に言うと作っていたものに欠陥要素が現れ始めて修正せねばという感じですね。どれだけ時間のかかることやら……。
さてと次回は、30日です。お楽しみに!
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