第672話.盛大な寝過ごし
蒼が大学の入学式に向かった。
蒼の居なくなった部屋というのは随分とがらんとしていて静か。聞こえてくる音もテレビの音と、駆け回るましろの足音くらいだろう。
暇で暇でたまらない。
蒼が一緒にいるだけで楽しいというか、満たされるのだ。そこには不満も暇という感情も、全ての負の感情が無くなる。だからこそ蒼の側は居心地がいいのだが、蒼がいない家というのは自分の家であってもやはり物足りなさはどうしても感じてしまうものだな。
たかだか入学式程度で何を、と思われても仕方がない。実際そうなのだから。しかしだ。今日に至るまで春休みでずっと一緒にいたわけだ。それがバイトに出ている以上に家を空けるとなると寂しさが爆発してしまうのだ。まるで激重メンヘラ彼女のような思考に至っているが、どれもこれも俺を沼らせる蒼の魅力が悪い。
「なぁ〜、ましろ〜」
「にゃごみゃん」
ましろを抱きかかえながら俺はそう言う。一方的に聞かされるだけのましろはくぁと暇そうにあくびをした。
ましろを離しリビングという名の野に放つ。お眠だったのかベッドに飛び込んだ。
今頃式が始まった辺りかな。
早く蒼が帰ってくることを願いながら、俺はましろと同じくお昼寝タイムとする。昼ご飯はまた後でにしよう。
✲✲✲
お腹が空いたのでムクリと起き上がった。
さぁ、お昼ご飯お昼ご飯〜と、意気揚々とキッチンの方に向かっていると時計がちょうど視界に入る。
「……んぇ?」
写った時計の短針はバッチリ6の方向を向いていた。
そう、思い切り寝すぎたのだ。
あれ、そういえば蒼は!?まだ帰ってきてない!?
そう思い玄関に走り出そうとするタイミングでホカホカと頭から湯気を出した蒼が脱衣所から出てきた。
「およ?起きた?」
「あ、あれ?いつ帰ってきたの?」
「1時間くらい前?電車が遅延しててちょっと遅れちゃった」
「あ、そうなの」
「そうだ。刻はお昼何食べた?」
「え、あ、何にも」
「え、何も食べてないの?」
「う、うん。起きたら食べようと思ってて、でも寝過ぎた」
「なるほどね。じゃあすぐにご飯を作ってあげようじゃないか」
「いや、でも帰ってきたばかりだろ?」
「別になんてことないよ!今日はお友達も出来ちゃったし!」
そういう蒼の表情はキラキラの笑顔でいっぱいになっていた。
第672話終わりましたね。みなさんは寝過ごしたことはありますか?作者はね、美容院を思い切り寝過ごしたことありますね。電話でめちゃくちゃ謝りました。二度と寝過ごさねぇから。
さてと次回は、22日です。お楽しみに!
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