第645話.集合写真
桜吹雪の吹く中庭を刻と2人で歩く。
校舎近くのベンチには部活の顧問の先生と話す卒業生などが多くいる中、私達はPhotoClubの部室のある交流棟に向かっていた。
十中八九、この階段を上るのもこれが最後になるだろう。もしかしたら顔を出した時に少し入れてもらえるかもしれないけれど、それまでPhotoClubが残っている確証は無い。
証書は左手に右手は刻の手を握って。
階段を登りきった先にあるPhotoClubと書かれた看板。懐かしいなと思う。
ユウが精一杯他の人に部活がここにあるということを気付いてもらえるようにした努力。結局場所が場所なだけに大半の人は気が付かず、気が付いたとしてもスルーされてしまっていたようだが。
扉を開けて中に入る。
この前掃除したばかりなので随分と綺麗だ。
そうしてぐるりと辺りを見渡しているとあることに気がついた。
「あ、黒板」
「黒板?」
見るとそこには卒業おめでとうございます!と書かれていた。左下には小さく江草ちゃんたちの名前が書いてある。
わざわざこんなこともしてくれていたのか。というか私達が式の後ここに訪れることも加味していたというのが驚きだ。さすが出来る後輩と言ったところか。
証書を机の上に置いて座っていると凛達も後からやってくる。そして最後には華山先生もやってきた。
さすが姉妹。ユウと似た顔立ちでとても綺麗で尚且つ可愛らしい。
「みんな卒業おめでとう」
華山先生からの言葉に私達はぺこりと頭を下げる。実の姉からそう言われるのは少し気恥しいのかユウはほんの少し後ろから先生のことを見ていた。
「私がユウのために作ったこの部活も、本当はユウの卒業と同時に廃部にする予定だったけどね、みんなが来てくれたおかげで後輩が入ってきて存続できることになりました。とは言っても人数が少ないから長くは続かないかもしれない。けど、みんなの思い出の片隅にこの部活のこと、覚えてくれていたら嬉しいな。……と、私は思います」
先生の短いけどまとまった言葉を聞いて私達は誰となくふふっと笑う。
寂しさよりも穏やかで、ほのぼのとした別れの日だ。
「そうだ、この後はみんなどーするの?」
凛が立ち上がってそう尋ねる。
「この後は特には何の予定も無いけど」
「じゃあさ、みんなでご飯行こうよ。お昼ご飯!」
「おー、いいね。お腹ぺこぺこだ」
時刻はお昼時を少しすぎた1時頃。ご飯屋さんも程よく暇になり出す頃合だろう。
「よしっ、じゃあ私は職員室に戻るからみんなは楽しんできてね」
「あ、その前に先生もっ!」
「えっ?」
凛に引っ張られて私達の元に連れてこられる。
私達は最後にここでの集合写真を撮るのだ。
1人から始まったこの部活もこの部屋には部員が4人も集まっている。そして顧問も合わせて5人だ。
証書を顔の横にしながら、炊かれるフラッシュに目を瞑りそうになる。
そうして撮り終えた写真を確認してから私達は解散するのだった。
第645話終わりましたね。作者は自撮りが大変苦手でございまして、というか写真自体撮るのあまり得意ではないんですよね。
さてと次回は、29日です。お楽しみに!
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