第632話.インスタントカメラ
最初はお喋りだけで帰るつもりだったのだが、結局写真も撮っていこうじゃないかという方向に話が進んでいた。
カメラは自宅にあるから使うのはインスタントカメラ。現像するまでどんな風に撮れたのか分からないのでドキドキ感も楽しめる古き良きカメラだ。
最近は白黒カメラなど、綺麗に撮るのもそうなのだが、エモさを追い求めて写真を楽しむのも増えているようだ。
夕日とかに照らされた建物とか、お花とか、それだけでなんだか泣きたくなるような写真あるもんね。
にしても、インスタントカメラの予備が部室の隅にあったダンボール一杯に詰まっているのを江草ちゃんに見せられた時は少し驚いたけど。なんであんなにあったんだろ。PhotoClub体験者のためかな。
なんとなく考えてみるが、詳しいところは分からない。
私達は荷物だけを部室に置いて校内に出る。
いざエモエモな写真を撮るぞー!と意気込んではみるが、中々そう上手くもいかないものだ。光加減がどうのこうのと考えたかったのだが、何せインスタントカメラ。どうフィルターに収まっているのか、現像された時の想定画像が分からないので難しい。というか成功しているのか否かもすぐには分からないのがもどかしい。
こんなことを言ってはインスタントカメラの良さが全て消し飛ぶような気がするが。
緩やかな風に髪を揺らしながらカメラを覗き込む。
各々好きなように写真を撮るみんなのことを収めて私はシャッターを切った。短くカシャッと音が鳴る。
エモエモかどうかは分からない。けれど、いい写真は取れたと思う。
PhotoClubも正式に引退となるし、学校も卒業。
早いものだ。
入部してざっくり2年と言ったところか。
刻が水泳部じゃなくてPhotoClubに入ると言った時は驚いたものだ。一緒に帰るつもりだったのに部活があるだなんて。予想外すぎて思わず水泳以上に刻のことを引き付ける素晴らしいものがあるのかと気になってしまったほどだ。でまぁ結局ついて行ってそこにいたのがユウなのだからそりゃそうかと納得したくもなる。
でまぁなんやかんやあって楽しく初めての部活生活を過ごしたわけだ。
けれどそれももう終わる。
おそらく正真正銘、今日が最後だろう。
最後に後悔の無いだけ撮っておこう。撮り収めておこう。
思い出を。この景色を。
私の心のメモリーファイルに保存するのだ。
高校の3年間、そのうちPhotoClubの2年間。人生換算したらたった数パーセントの話。けれど濃い話だ。
第632話終わりましたね。いやはや最近は雨やら雪やら晴れ!という日が少ないですね。これからみんな大好き桜の咲く季節だというのに春さんがなかなかやってきません。お寝坊したんですかね。
さてと次回は、3日です。おたのしみに!
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