第618話.お散歩デート
結末までを見届けてから私達はシアターを出る。
周りを歩く人達の足取りは軽いものとは言えず、ズビズビと鼻をすするような音が響いていた。
かくいう私も「うぅ」と声を漏らしながらズビズビ言っている。
結論から言えば映画は感動も感動のストーリーだった。おかげで途中から涙が溢れてまともにスクリーンが見えないなんて珍事も発生するほどだった。刻は泣きはしないものの言葉数は少なくなっている。
前にも刻と映画に行った時にこんなことがあったなぁとデジャブを感じながら、私は少し崩れたメイクを治すためにトイレに行くのだった。
メイクポーチを取り出して軽く整えていく。私と同じ映画を見ていた人は皆同じ状況なのか、みんなして鏡の前で並んでいた。個室はガラガラなのに。
治し終えると私は「よしっ」と謎の気合いだけ入れて刻の元に戻る。
「おまたせ」
「ん」
「この後はどうしよっか。まだ時間あるけど」
「んー、少し散歩でもするか」
「うん、そうしよっか」
なんてことない一言で私達はブルメールの外に出た。南側の大きい道路を横断歩道をちゃんと通って遮断し、海に面したウッドデッキの広がるなぎさ公園にまでやってきた。やってきたと言ってもブルメールからはほど近く、ほとんど目の前と言っても過言ではない。何せ信号の部分を除けば徒歩1分もあれば着くのだから。
ここは平日の3時頃は子供が少なく非常に静かなのだ。土日などの休日は子供の遊び場になったりするので騒がしかったりするが、そうでない日はこうしたお散歩デートなどにはうってつけのコースだったりする。
プラプラと歩きながら海風をあびる。ウッドデッキの上を歩くので木のギィと軋む音であったり、スニーカーのパタパタという音が響く。
話すのは映画の内容……ではない。なんとなく今話すとまた泣きそうだから話さないようにしているのだ。というか、家に帰ったら私はまた速攻小説を読むつもりだし。
という事で話す内容はとても密な話、でもなく普通に晩ご飯の話である。刻がハンバーグを食べたいと言うので、じゃあ帰りにミンチ肉買わなきゃねというような、ごくごく普通の平和な会話を繰り広げているだけだ。
結局、恋人同士のお散歩デートなんてそんなものでいいのだ。お互い気楽に、雑に過ごすくらいがちょうどいい。
お散歩と言えど海風がずっと当たるような場所を歩くので寒くないわけではない。当然時折強く吹く風は寒く感じている。けれどそれも刻が壁になって遮ってくれている分まだマシなのだろう。壁の刻には感謝しかないな。
なんて事も考えれば時間が進むわけで、気が付けばそれなりにある公園の端から端を往復していた。
「よし、じゃあスーパーにお買い物だ!」
お散歩デートはこれまでにし、次はスーパーにお買い物デートというプランに自然に切り替わるのだった。
第618話終わりましたね。作者ついに課題が終わりました。これで落単してるならもうそれは諦めですね。えぇ、やるだけのことはやってるんで、あとは開き直ってラーメンでもすすります。
さてと次回は、4日です。お楽しみに!
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