第611話.なんでもない1日
どうでもいい日なんてない。
そう思える人生がどれだけ幸せな事なのか分かるだろうか。
私は正しくそう思える人生を生きている。
「せんせー、お腹の赤ちゃんはどんな感じ?」
1人で廊下を歩いていると後ろからそう声をかけられる。振り返り視界に映るのは私のクラスに所属する空宮だ。
「空宮、おはよう。お腹の子はすくすく成長しているぞ。今は妊婦用のゆったりした服の方が合うようになってきたくらいだな」
「へ〜!元気な子が産まれるといいね」
「あぁ。元気すぎるくらいが丁度いいな」
「元気すぎるのも大変じゃない?先生振り回されちゃいそう」
「安心しろ。普段の私は騒がしいお前達を相手に授業してるんだ。そのくらいなんてことないさ」
「どうかなぁ。ま、でも元気すぎるのに越したことはないか〜」
にへらと彼女は笑って私の隣を過ぎる。
直前に今日の授業について聞かれたが、このシーズンは完全に受験真っ只中。授業も全て終えているので各々自習にしてもらうとだけ伝えておいた。
自習にすれば私の体の負担も減るし、生徒達も自分のしたい勉強ができる。悪くはないだろう。
前までの私なら階段を使って上に上がっていたのだが、さすがにもうエレベーター無しでは学校生活は送れそうにもない。自宅のマンションも健康のために階段を使用していたのだが、最近ではすっかりエレベーターのお世話になっている。
エレベーターの箱が降りてきて中に乗り込んだ。相乗りする先生もおらず、私1人で使うことが出来る。こうして広々と使えるのもストレスがなくていい。
お腹に子供を宿してからエレベーターに乗る時はできるだけ少人数の時を狙うようにしている。朝のマンションでのエレベーターも出勤ラッシュにちょうど当たる時間なのでサラリーマンの人などが多くいる。だからこそ私はほんの少し遅らせたり、わざと譲ったりするようにしているのだ。私のストレスが今は子供のストレスに直結してしまうからな。
でも、こういう生活を続けているおかげか、最近ではご近所さんにもお腹に子供がいると分かってもらえて、優先的に乗らせてもらえたりもするのだ。もちろん少人数のストレスフリーで。
夫にもご近所さんにも生徒にも恵まれている私は本当に幸福者なのだろう。そしてお腹に宿したこの子も幸福者だ。何せ私の幸福はこの子の幸福なのだから。
エレベーターが目的の階にたどり着き私は箱から出た。
授業開始の5分前。まだ生徒達は談笑したりトイレに行ったりと各々自由にしている。
そんな生徒達の横を通り過ぎながら私は教室に向かうのだった。
第611話終わりましたね。作者課題がやばいです。この時期は単位に直結する課題が山ほど出るのですが、結局のところこの課題を出さないと単位は貰えないわけです。それまでの授業に出ようが出まいが、この課題さえ出せたら勝ちみたいなところがあるのです。不思議ですよね。
さてと次回は、21日です。お楽しみに!
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