第610話.彼氏バカ
パタンと手に持っていた漫画を閉じる。
まだ読み始めとはいえさすがアニメ化にまで漕ぎ着けるだけのストーリーだ。ギャグ漫画と言いつつ、しっかりシリアスシーンやラブコメ要素も細かく入ってきているので読んでいて飽きがこない。というか、これだけの要素を入れ込んでおきながら、よくここまでまとまっているものだ。普通なら物語が渋滞して読み手側の頭が大変なことにもなりそうなものなのに。
物語を分かりやすく作っているおかげなのか、スルスルと流し読みでもしっかりと入ってくるあたりこの作者、物語構成が異常なほど上手なのだろう。これはアニメも期待してしまう。
と、1人漫画をまとめながらそんな事を考える。
「読み終わった?」
そんな事をしていると隣から刻にそう尋ねられた。見てみるとどこか不満げな表情。
「どうしたのムスッとして」
「いいや、別になんでも」
なんでもない事は明らかなのだけど、それでもツーンとしているのはいささか放ってはおけない。
「どうしたんだい。お姉さんに話してみな!」
「お姉さんちゃう。同い年でしかも俺の彼女さんや君は」
「あはは〜。でも、まぁ言いたいことがあるなら言っておきな?モヤモヤもぱや〜って飛ぶかもよ?」
そういうと刻は「ふーん?」と言いながら私の顔を見る。
「なんだね。言ってごらん」
「んー……俺の彼女さんが、漫画に夢中でせっかくの2人の時間が消えていってる事が不満かな」
「あー……」
原因私でした。
い、いやいや、漫画が面白いって勧めてきたの刻だし!?いいかなって思ったんだけど!?
でもまぁ、不満に思わせてしまったのならそれは謝るしかないか。
「それは、ごめんね。ほら、今からはフリーだし、2人の時間作れるよ?」
「今からってもう深夜の2時ですが。明日家に帰る日ですけど」
「そ、それはほら!大人だし夜更かしもおっけーってことで!」
「ふーん?なら、いっか」
そう言うと刻は私の方にやってくる。
「わぶっ……」
覆い被さるようにして抱きつかれた。
下はベッドなのでクッション性は抜群。でも刻の身体で息はしにくい。
どうやら不満が甘えたいモードに切り替わったらしい。ずっと私の耳の下辺りに顔を近づけてふんふん息を吸っている。
頭を撫でてあげながら私からも抱きしめてあげる。
うんうん、大きな子供だね。
けど、可愛いんだもん、仕方がない。
親バカでは無い。親ではないからね。けれど、彼氏バカではあるのかもしれない。
第610話終わりましたね。最近はホラーゲームを見ながら寝るのが楽しみなのですが、叫ばれるとせっかく寝落ちそうになったタイミングで目が覚めますね。
さてと次回は、19日です。お楽しみに!
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