第550話.ブルーマウンテンとモンブラン
白いコーヒーカップの中からゆらゆらと湯気が立っている。
ふーっと熱いコーヒーを冷ますように息を吹きかけてから口にカップを運んだ。くぴりと飲んで広がるのはブルーマウンテンの仄かな苦味と酸味。そしてかすかに感じる甘味だ。
コーヒーと言っても一律に苦い訳ではない。このブルーマウンテンのように、それぞれに個性があるのだ。苦味に酸味にそして甘味、それぞれに違いがあるからこそ、コーヒーは奥が深い。
「ふぅ……」
息を吐きながら口の中に残った香りを楽しんでいると凛さんの注文したケーキが届く。コトリと小皿に置かれて運ばれてきたのは栗の甘い香りが広がるモンブラン。クリをペーストにしたものがケーキ本体に巻かれており、可愛らしい見た目となっている。
「おぉ……可愛い。そして美味しそうっ」
テンションが静かに上がりながら写真を何度も撮る凛さん。微笑ましいなと思いながらその様子を見ていると、こちらの視線に気がついたのか、少し恥ずかしそうにする。
「こ、子供ぽかったかな……?」
「ん?別にそんなことはないと思う。写真を撮ってる時の笑顔は可愛かったけど」
「そ、そう……ありがと」
「いいえ」
外にいた時に赤くしていた頬とはまた違う理由で頬を赤く染める。白い陶器の様な肌がりんごのように染まるのは見ていて不思議な感じがするのと同時に、やはり可愛らしいとも思うのだ。
感覚を少し開けてから、自然に冷め始めたコーヒーをまた口に運ぶ。冷めても味の濃さというのは変わらず、むしろ冷めてきたからこそ分かる味の深みというものもあるのだ。
「はむっ……ふふ〜んっ、美味しいなぁ」
頬に手を当てがいながら、栗の甘さを最大限楽しむ凛さん。本当に美味しいのだろう、モンブランがどんどん小さくなっていく度に段々と食べるのを惜しそうにしだしてきている。しかし、いずれは最後という瞬間が来るのだ。大切に大切に最後まで残していたケーキの上に乗っていた栗。それを一口で平らげるとしゅんとした様子でこちらを見てきた。
「どうしたの?」
何と言うのだろうか。凄くこの表情の凛さんに犬っぽさを感じるというか、甘やかしたくなってしまう。本当はこの後も何件かカフェを回る予定だが、スイーツは別腹だろうしいいか。
1人無理やり納得させると、俺は店員さんにモンブランをもう一つ頼むことにした。前提は俺のものということだが、まぁ察しの通りこれは凛さんにあげる。というか、俺はコーヒーだけで割と満足だ。
「何見てるの?」
スマホの画面を愛おしそうに眺める凛さんにそう尋ねる。
「ん、これを見てたの。さっきの写真」
表示されたのは先程平らげられたモンブランだ。
ふむ、相当気に入ったらしい。
早く店員さんが注文したモンブランを届けてくれる事を祈りつつ、俺はもう一口コーヒーを飲むのだった。
第550話終わりましたね。作者、コーヒーは飲みますが基本牛乳を入れる派の人間です。ブラックも飲めますが、やっぱり苦いのでね。マイルドな方が好みです。
さてと次回は、21日です。お楽しみに!
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