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第49話.楽しい事

 日は傾いてきており、段々と辺りの街灯に光が灯り始める。だがそれでも周りから人っ子一人居なくなるということは無く、常に誰かいる。

 日が傾いたおかげか直接肌に日光が当たる事がないので、昼に比べたら幾分過ごしやすい。それに風も程よく吹いて尚更だ。


「刻くんはお土産誰に買う?」


 隣を歩く凛は俺にそう聞く。


「そうだな。家族と空宮達と先生と、あとは灯崎達かな。凛は誰に買うとか決めてるのか?」

「僕も刻くんと同じ感じだよ。灯崎くん達がいたのは忘れてたけどね」

「まぁ、凛はあいつらとあんまり関わりないもんな」

「うん」


 基本バレー部のあいつらと関わりがあるのは俺と空宮だけで、それ以外は本当に関わりがない。まあ、灯崎は華山と凛と仲良くなりたがってたけどな。「あの美人2人と仲良くなりてー」ってこの前もボヤいてたし。

 近くにいい感じのお土産屋さんを見つけると、その店に入った。中は昔懐かしの感じでとてもいい。


「わ、いっぱいお菓子に種類があるよ!」

「そうだな」


 店に入ってすぐの所にはお菓子系のお土産が大量に積まれている。京都の名産のものだったり、建物系の物をお菓子で再現したりしたものとか。

 あとは店内の奥の方を覗くと、ストラップだったりぬいぐるみだったりが売ってある。よく分からない剣のストラップとかも。


「ねぇねぇ刻くん。刻くんはどれにする?」

「いや、特にまだ決めてないけど」

「それなら良かった!」


 凛は笑顔でパチンと手のひらを合わせながらそう言う。

 何が良かったのかとそう思っていると、凛が説明してくれる素振りを見せる。


「あ、良かったってのはね、僕と刻くんでお土産が被っちゃったら蒼ちゃんとか、華山さんが同じものを二つ貰ってつまらないだろう?だからだよ!」

「なるほど」


 納得して頷いた。

 確かに同じもの二つはきついな。色んな種類を貰った方が色々と楽しいし。


「だから刻くん一緒に選ぼ?」


 凛はそう言って誘ってくる。


「了解」


 簡潔にそう応えると凛の隣まで移動した。


「ねぇ、どれにするどれにする?」


 凛はキャピキャピと楽しそうな笑顔でそう言う。

 どれにすると言っても軽く十種類以上はあるんだよな。そう簡単には選べないし、あげる相手の好みにも合わせないといけないからな。


「うーむ、家族に買うやつは決まったけど問題はあの二人だな」

「だね」


 そう言うと凛も大きく頷く。

 まあ、考えている事は一緒って事だ。


「空宮ならな好みとかはよく分かるんだけど……」

「へー、蒼ちゃんは何が好きなの?」


 凛は小首を傾げてそう聞く。

 俺はコホンと一つ咳き込むふりをした後に口を開いた。


「空宮の好きな物はな、美味しいもの全般だ!」

「おぉ!……おぉ?」


 そう言った後すぐは凛も大きく驚いていたが、時間が経つにつれて違和感を持ったのか声の語尾が弱くなる。


「ね、ねぇ刻くん?それって好みを知ってるって言うの?」

「うん、多分言わない」


 はっきりとそう言った。だって空宮のやつ美味けりゃ何でもパクパク食べるからな。ピーマンだけは嫌いだけど。


「まぁ蒼ちゃんが美味しいものなら何でもいいって言うのなら、問題は華山さんだね」

「あぁ」

「何が好きなのかな?」


 凛は腕を組んで考える仕草をする。


(にしても凛って本当に綺麗なんだな。異様なくらいこの仕草が様になっている)


 って、俺は何を考えてんだろ。


「多分華山は甘いものが好きだぞ?」

「何で?」


 凛は首をこてんと傾け俺にそう聞く。


「理由は簡単だ。何回かカフェでケーキを一緒に食ったんだけどな、そん時にめっちゃ嬉しそうな笑顔になってたんだよ」

「へー、一緒にケーキ食べたんだ?」


 俺が提供した華山情報を聞いて凛は喜ぶのかと思ったら、何だか羨ましそうな目をこちらに向ける。


「え、どうしたの」

「いーや。ただ一緒にケーキを食べてるのが羨ましかっただけだよ」

「じゃあ、いつか一緒に食いに行くか?」

「え、いいの!?」


 俺がそう言うと凛はパァーっと顔を明るくした。


(そんなに嬉しかったのか?いや、喜んでもらう分には別にいいんだけどね。)


「んふふ〜」


 凛は見るからに上機嫌になりながら、お土産をまた選び始めた。


「甘いお菓子〜♪甘いお菓子〜♪」

「何か良いやつあったか?」

「んー?これ何かどう?」


 凛はそう言うと今日俺達が食べたのと同じ生八ツ橋を取り出して俺に見せてきた。


「いいと思うぞ?甘いしな」

「でしょ?喜んでくれるといいな。じゃあこれ買ってくるね」


 凛はそう言うとタタっとレジの方へ小走りで駆けていく。



✲✲✲



 辺りは完全に暗くなり人もお昼に比べるとかなり少ない。

 俺達は電車に乗りこんで神戸を目指す。車内はクーラーが効いているため涼しく過ごしやすい。


「今日は楽しかったね」


 凛は向かい側の窓の外を眺めながら俺にそう言う。俺も窓の外を眺めながらそれに応える。


「そうだな。楽しい事はいい事だ」

「だね」


 俺達は楽しい事を終えたあとからの虚無感からによるものなのか、無言の時間が続く。

 だが凛はその空気を破って俺に話しかけてきた。


「ねぇ刻くん、さっきの話どうする?」

「さっき?」


 俺は何の事かと首を捻ると凛が人差し指をぴんと上に立ててまた口を開く。


「ほら、あれだよ。ケーキを食べに行くって話」

「あぁ、それな。いつ行きたい?」


 俺が聞くと凛は間髪入れずに応える。


「明日がいいな」

「お、おう。食い気味だな。別にいいけど」

「やった!」


 俺は凛のその笑顔を横目に見ながら吊革を握り直した。

 明日もまた楽しい事がありそうだ。


第49話終わりましたね。京都に本当に行きたいです。でもって八ツ橋が食べたい!

さてと次回は30日です。お楽しみに!

ブックマークと等よろしくお願いしますね!

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