第46話.デート?
ベットの上で寝転がりながらスマホをいじる。俺の部屋には幸運な事にクーラーがついてるため、夏でも冬でも快適だ。夜に暑苦しくて寝れないという事もなく、すっと夢の世界に入れてとてもいい。
クーラーによって生じるメリットについて1人でプレゼンしていると、スマホがぶるっと震えて通知が来た事を知らせる。画面をつけてみると凛からのLINEだった。
「何だ?」
LINEのアイコンをタップして凛とのトーク画面に移った。
内容はこういったものだ。
『ねぇねぇ、刻くんは今暇かい?』
(凛からのLINEで暇かどうか聞くのってなかなか珍しいな。普段はどうでもいいことしか話さないのに。例えばナマケモノは哺乳類なのに変温動物みたいな体温だったりな)
そんな事を考えながら返信をした。
『一応暇だけど』
そう返信すると、スマホをベッドの上に置き本棚から本を取って読み始めようとした。しかしすぐに通知を知らせるバイブが震える。
想像以上の返信の早さに驚きながら俺はスマホの画面をつけてまたLINEを開く。
『暇ならちょうどいいや。ちょっとご相談があるんだけどいいかい?』
内容はそういったものだった。
相談てなんだ?そもそも凛に相談事なんてあるんだな。
そんな事を思いながら返信を返す。
『別にいいぞ、で相談って何なんだ?』
『それはよかった!えーとね、実は明後日行きたい場所があってだね』
『ん?行けばいいじゃないか』
『いや、簡単に言ってくれるけどねそうはいかないから相談してるんじゃないか』
『確かに。じゃあどこに行こうとしてるんだ?』
ふーむ、そう簡単に行けないってこの子は一体どこに向かっているのやら。
『よくぞ聞いてくれました!実はね僕は京都に行きたいんだよ〜』
凛からLINEでそう送られて来た。
(へー京都ね。京都……。京都?)
まさかの県外だということに驚きすぎてしまい、思わず思考停止しかけてしまった。
『え?京都なの?それまた何で』
『いや、僕ってイギリスにいたでしょ?だから実は京都に行ったことがなくてね、行ってみたくなったのさ!』
『はぁ……。でも京都って隣の県だから別に行けなくもないだろ?』
(だってまじで隣の県だぞ?電車とか上手いこと使って行ったらそれなりに早く着けるしさ)
疑問に思いながらも凛の返信を待つ。すると先程よりも少し間隔を開けてから返信が来た。
『実はお恥ずかしいことにだね……』
『お恥ずかしいことに、なんだ?LINEだと、ただ文が途切れてるだけなんだけど』
『ごめんごめん、間違って途中で送信しちゃった。それでね実は僕ってかなりの方向音痴なんだよね』
凛って方向音痴なのか。初めて知った。ん?というかそうなってくると京都なんかに行ってみろ、迷子に絶対なるじゃん。
その事に気が付くとすぐに返信を返す。
『じゃあ、京都に行ったら帰って来れないじゃんか』
『そうなんだよ。だから明後日一緒に京都に行ってくれないかい?』
マジ?明後日に京都に行くのん?合宿に行ってたからお金がないんだけども……。
お金の心配をしているとまた凛からLINEが来る。
『ま、つまるところ、僕と刻くんとのデートだよっ!』
✲✲✲
という事が一昨日あったのだ。その後もすぐにどこに行くとか、何時に集合とか色々決めたしな。おかげで寝たのは深夜の3時です。昨日はひたすら眠たかった。
俺が昨日を思い返していると頬にチクッとした痛みが走る。見てみると原因は凛が俺の頬をつねっているためだと分かった。
「刻くん?ぼーっとしてないでさっさと行くよー?」
「すまん。でもぼーっとはしてない」
「そう?ま、なんでもいいけど。ほらさっさと歩く!」
俺達は祇園の街をどんどん練り歩いた。歩いていくと周りには浴衣を着た外国人観光客の人や舞妓さんなんかを見かける。
舞妓さんの化粧とかってどれくらいかけてするんだろ。
ふとそんな事を思ったが、また凛に「ぼーっとしてる」とは言われたくないので俺はしゃんとし直して、しっかりと前を向きながら歩いた。
「ねぇねぇ刻くん」
急に凛が俺の肩をトントンと叩いてそう言った。
「どうした?」
そう聞くと凛が指を斜め左前方を指さした。俺がその方向を見ると凛がまた喋り始める。
「人力車に乗って街を見てかないかい?」
「人力車?」
「そうだよ。ほら、歩かずに色んな所を見れるって結構お得じゃない?気になるお店があったらすぐ降りれるし、人力車を引っ張ってくれるお兄さんしか知らないようなお店にも行けそうだし」
「うん、まあ確かに」
「じゃあ刻くんも賛成ってことで、すみませーん人力車乗りたいんですけどー」
凛はそう言うとタタタッと駆け出して、人力車のある方に近づく。その京都の観光をする様は本当に楽しそうで、とても可愛らしい。
ゆく人ゆく人間違いなく凛のことを二度見して通り過ぎる。俺はそんな子と一緒にいるという事実に少し信じられない気持ちを持ちつつも、少し誇らしくも思った。
「刻くんー、人力車乗ってもいいってさ!ほら、早く来てー」
凛はそう言って俺に手招きする。
「りょーかい」
そうとだけ言うと凛の元に小走りで近付いた。
凛が楽しんでるんだ、俺も今日1日最後まで楽しんでやるか。
第46話終わりましたね。人力車に僕は乗ったことがありません。とても乗りたいです。何故かって?なんだか楽しそうじゃないですか!
さてと次回は24日です。お楽しみに!