番外編第43話.とある日
これは夏休みに入る前の1日です。
君の事をずっと考えてる。朝から晩まで。
授業中も君が何を考えながら受けているのかを想像したり、部活の時も君がカメラを構えている姿を見ている。
家に帰れば、君と今日話した事を思い返しては頬を緩ませる。
君は何を思って、何を考えて、何を感じているのかな。
私はそれが知りたい。
君しか知らない事を私も一緒に共有して2人の秘密にしたい。
君の好きな事をもっと知りたい。
君の事をもっと知りたい。
どうしてそんなに優しくするのかな。
どうして私達の事を、第一に動くのかな。
私達の事をずっと考えてくれる君。
私はそんな君の事が好き。
✲✲✲
「ふわぁ……」
昨日の寝不足が響いたのか朝から欠伸が止まらない。授業中もうつらうつらとしてしまって、話を聞くのもままならない状態だ。一度眠ってしまおうかとも思ったけれど、それはそれで私達に授業をしてくれている先生にも申し訳ない。
眠い目を擦りながら、皆のいる方を向いた。私はその皆の様子を眺めていると、灯崎くんと上木くんと一緒にいる君を見つける。するとその私の視線に気が付いたのか、君はこちらを見た後に私の方に近付いてきた。
「どうした?目の下に少し隈があるけど大丈夫か?」
君はそう言って私の事を心配そうに見る。
「大丈夫だよ〜。ちょっと昨日夜遅くまでドラマ見ちゃっただけだから」
「そうか。まぁきつくなったらいつでも言えよ?」
君はそう言うと灯崎くん達の元へまた戻る。
やっぱりそうだ。君はとても優しい。特に心配して欲しい素振りを見せた訳でもないのに、君はすぐに私の事を心配してくれた。
「おやおやー?頬っぺたが赤くなってるけど、好きな人の事でも考えてたのかな?」
私が君の事を考えていると、クラスメイトで委員長の女の子がそう言ってきた。
「な、なんで分かるの?」
あまりに急な事で動揺を隠しきれずに一瞬言葉に詰まる。
「分かるに決まってるじゃん。だって凄く恋する乙女の顔してたよ?これで分からない私じゃない!」
委員長はえっへん!と胸を反らしながらそう言った。
(私ってそんなに分かりやすく顔に出るのかな?もしそうだったら君にも直ぐにこの気持ちバレちゃうよ……)
私が頭を抱えて真剣にその事について悩んでいると、委員長がまた話し始める。
「それでそれで?恋する乙女ちゃんの好きな人は一体誰かなー?」
委員長の目はキラキラと興味津々の目になっている。
やはり委員長も女の子だ、恋愛事には興味があるのだろう。いや、きっと好きな人がいるのだろう。この子もかなり可愛いし。
「絶対に言いません!」
私は強くそう宣言する。
「えー、教えてくれたっていいじゃん。減るもんじゃないし」
「いや減るよ?物理的には減らなくても、精神的にごっそり持ってかれるよ?」
私がそう言うと委員長はケラケラと笑い出す。
「確かにそうだね、ごめんごめん。でもまぁ、言う気になったらその時は教えてよ。私の好きな人も教えるからさ。さぁ次の授業が始まるよー!」
委員長は言いたいことだけ言うと、自分の席へと戻って行った。
もう、メンタル持ってかれちゃったよ……。しかも次の授業、苦手な数学だし。
(サボりたいなぁ)
✲✲✲
授業が終わりお昼休みに入った。
私は友達とお弁当を食べに教室を出る。この季節はやたらと暑いため本当は教室のクーラーの効いた部屋で食べるのがいいのだけれど、女子たちの間じゃこの季節は校舎裏の日陰がめっぽう涼しいと評判でいいため、今日は私達もそこに行くことにする。
実際に行くと他の生徒はおらず、私と友達2人だけの状態だった。そして何よりも涼しい。噂に聞いていたよりも全然涼しい。もしかしたら人が沢山いる教室よりも全然涼しいかもしれない。
「さぁて、お腹も減ったしお弁当食べよっか」
友達の1人がそう言うと私達は相槌を打ってお弁当を開く。
開いてみればそこには私のお母さんの趣味の一つであるキャラ弁となっていた。
まぁキャラ弁と言っても、お弁当の端っこにやたら精巧に作られたキャラクターがちょこんといるだけなのだけど。
「わ、何これどうやって作ってるの?」
私のお弁当を見た友達の一人が私にそう聞く。
「うーん、分かんない。お母さんがこういうの得意みたいで、朝ちょいちょいって作っちゃうから、正確な作り方知らないんだ」
「へー、お母さん凄いんだね。私の親なんて……」
そんな会話をしていると、気付いたら自分の親に対しての愚痴を言う会に変わっていた。
例えば、もう少し寝かせてくれてもいいんじゃないか?とか、お風呂にあと10分だけでいいからもう少し入らせてくれとか、成績についてはもう何も聞かないでおくれとか、そんな感じだ。
最後の成績に関しては自分自身が悪い気もするけど。
「それで、親に不満はないの?」
私がそんな事を考えていると急に話を振られる。
「不満?不満は特にないかな。基本私の自由にさせてくれるし、勉強嫌いだけど教えてくれる人がいっぱいいるからテストは乗り切れてるし」
「そっかー。じゃあ恋愛について聞かれたこととかない?私の親なんてさ高校生みたいに、好きな人誰?とか聞いてくるんだよ?いても言わないってのに」
彼女はそう言うと「はぁ……」とため息をついた。
恋愛について母親に聞かれたことの有無を問われると、私はそういえばあると答える。
あの時はなかなかキツかった。
アタックしないと振り向いてもらえないだの色々言われたからね、その日の夜は思わずストレスで夜更かししちゃったよ。
✲✲✲
私はお昼を終えて教室に戻った。
教室には君がいる。
君に今日も振り向いて貰えるように頑張らなくちゃ。
番外編第43話終わりましたね。何となく書いてみたかったとある日常回。楽しんで頂けましたか?
さてと次回は18日です。お楽しみに!