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第41話.探し物

 先生と凛が来た後に一度部屋に戻った。正確に言えば女子たちの泊まっている部屋と、一階下に泊まっている俺の部屋。

いよいよこの合宿も終わりを迎える。

 なんせ二泊三日だ、一週間の半分もない。楽しい時間はどんどん過ぎる。過ぎてほしくなくても、時は刻むことをやめない。やめれない。止まらない。

 ガチャリと俺が泊まっている部屋の合鍵を使い扉を開く。

 当たり前の話だが、中には俺の荷物以外は特に何も無い。むしろ俺の荷物以外に何かあったら背筋が凍るほど怖いしな。


「えーと、財布に本は……どこ置いたっけ?」


 部屋の中に置いていた自分の物を探しながら、旅行カバンの中に突っ込んでいく。

 淡々と作業を進めていると、部屋に付いているインターホンのベルが鳴り響いた。

 誰だろ?

 そう思いながら玄関まで歩き扉を開く。


「どちら様ー?」

「やぁやぁ、刻くんの大好きな凛様だよ」

「人違いでしたね」


 外にいた人にそう言うと、扉を素早く閉めた。


「ええっ!?ちょ、ちょっとー!?開けてよ!」


 外にいた人、正確には凛が扉をドンドンしてそう言った。他の人の迷惑になってはいけないので、俺はもう一度扉を開く。


「あ、開いたー」

「そりゃ開けるだろ、他の人の迷惑になりかねんし。で、何の用だ?」

「えーとね用件はね……」


 凛はそう言って腕を組むと真剣な目をしてこちらを向いた。

どんな用で俺の元に来たんだ?


「用件は……」

「おう……」


 俺はごくりと固唾を飲み凛の次の言葉を待った。


「何だったか忘れちゃった〜」

「は?」


 俺は思わずそう言ってしまう。こんな反応になっても仕方がなくないか?一体どんな用件で来たのかと思えば、可愛く「忘れちゃった〜」だぞ?世の男子がこの笑顔に免じて凛のことを許しても、俺は許しませんね!


「本当にごめんね?」


 凛は両手のひらを合わせて上目遣いでそう言う。

 今回はこの可愛さに免じて許してやろう。


「まぁ、別に大丈夫だ」


 片手を上げて凛を制すと、そのまま凛は手を下ろした。

 用件を忘れてしまったのなら仕方がないしな。うん。さっきの意見と違うじゃねぇかと思ったそこのお方。気にしたら負けよ?


「で、凛は俺の部屋に来た用件を忘れたわけだけども、どうするんだ?」


 俺が凛にそう聞くと凛は首を傾けて「どういう事?」という顔になる。


「えーとな、つまるところ、ここにしばらく残るのか女子の部屋に戻るのかって話だよ」

「あー、そういう事ね」


 凛は合点がいったように大きく頷く。

 まぁ、ここにいても女子の部屋に戻ってもあんまし変わらんきもするけど。


「えーとね、僕は帰る準備も出来てるし、この部屋で刻くんの邪魔をして遊ぶよ!」

「よし帰れ」


 俺はそう言うと凛を部屋から追い出そうとする。


「えー嘘だよ嘘。お手伝いするからさ、僕を部屋から出そうとするのやめて欲しいな?」


 凛はそう言いながら俺の事を見てくる。

 あぁ、その目はやっぱり反則だな。


「本当に手伝ってくれるんだな?」


 そう聞くと凛はコクコクと頷く。


「じゃあ、別に残っててもいい」

「やったね!」


 凛はそう言うと笑顔になった。

 そんなに嬉しい事か?人の身支度の手伝いって楽しいものかな?

 俺は疑問に思いつつも、身支度に戻る。


「ねー、僕は何を手伝えばいいかな?」

「うーん、そうだな……」


 何かあったかな?身支度って言っても、突っ込んでいけば終わるしな。服系も入れ終わってるし残るとすれば……、


「あ、そうだ。凛には俺の本を探すのお願いしようかな」

「本?」


 凛はそう言うと、なんで本?と言った顔になる。まあそりゃそうか。身支度の手伝いかと思ったら、本探してって言われるんだから。


「いや、暇つぶしに持ってきといた本がさ何か見つからないんだよ」

「ありゃりゃ、そりゃ大変だね」


 凛はそう言うと軽く周りを見渡した。

 それで見つかってたら俺も苦労してないって。


「確かにパッと見じゃ、見当たらないね」

「だろ?」

「まぁ、僕が見つけてあげるから刻くんはゆっくり支度を済ませてね!」


 凛はそう言うと布団の下やらを漁って探し始めた。



✲✲✲



「あったよー!」


 部屋に大きな声が響いた。


「まじか」

「まじだよ!ほら!」


 凛はそう言って両手で本を持って俺に見せる。

 確かに俺の本だ。そのブックカバーの色あせ具合と言い使い込み方と言い、何よりカバーのデザインが俺のものだ。


「見つけてくれてありがとうな」

「えへへ〜、褒めて〜」


 凛はそう言うと頭を近付けてきた。

 撫でろと?まぁ、いいか。

 俺は手を伸ばして凛の頭に手を乗せて撫でる。


「んふふ〜、やった」


 この角度からは凛の表情はよく見えないが、声のトーンからしてかなりの笑顔になってるんだろう。あと疑問に思うところがあるとすれば、凛の耳がなぜか真っ赤になってるところだな。なんでこんなに赤くなってるんだ?


「よしっ、おしまい」


 俺はそう言うと凛の頭から手を離す。


「えー、もっと撫でて欲しいな?」


 凛はそう言って下から俺を見る。

 女の子の上目遣いは本当に反則だって。何度も言うけどね?


「今回はこれでおしまいだ」

「ぶー、けち〜」


 今回はもう終わりだが、またいつかするだろうよ。凛には割と感謝することが多い。神戸に帰ってからでもその機会は十分あるだろうなと思いながら、俺達は帰る準備を終わらせた。


第41話終わりましたね。凛ってハーフって設定があるじゃないですか。実は僕ってハーフの友達が多いんですよね。それだけです。

さてと次回は14日です。お楽しみに!

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