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第391話.試合後の帰宅

 試合では山海高校の歴史上初の快挙を成し遂げる結果となった。県大会の優勝。当然雰囲気はお祝い一色で今すぐにでも打ち上げに行こうという空気感だったのだが、主役である選手達の疲労が想像以上に大きく打ち上げはまた今度にと延期になった。

 帰り道を俺は自分の彼女と一緒に歩く。今日は試合で動き回ったせいかいつもよりも明らかに足が重い。


「何か荷物持とうか?」


 俺の不甲斐なさを見せてしまったためか、早苗が心配そうにそう聞いてくれる。だが、俺にも男のプライドというものと、シンプルにこの程度で早苗の手を煩わせるわけにはいかないという心情があったので、普段よりも強めに大丈夫と気張りながら伝えた。


「本当に大丈夫?いつもより無理してるように見えるけど」


 ただ彼女相手には俺の痩せ我慢などほとんど意味ないらしく、一瞬で看破されてしまう。

 渋々といった様子で俺は頷くと「あまり大丈夫じゃありません」と素直に伝えた。するとそれを聞いた早苗は両手を出し俺からいくつか荷物を取っていく。


「少しでも軽い方が楽になるんだから、こういう時くらいは彼女の存在をちゃんと頼って。私は秋に守られるだけの存在じゃないんだから」


 小さな子供を叱るような口調で早苗は俺にそう伝える。


「これからはちゃんと頼ります」

「うん、それでよし」


 早苗からしっかりと許可を得てから俺達は再度歩き出した。


「そういえば最後のスパイク、カッコよかったよ」

「最後?……あぁ、オールのやつか」

「オール……なのかは分からないけど、それで決着がついた最後のポイントの時のスパイクね。あの時のスパイク、私が今までで見た中で一番強かった」

「確かに気合いが入ってたからなぁ。でも逆に言えば一番強かったってことは、力んでたってことにもなるから気を付けないと。肩を痛めたらスパイクどころか試合にも出れなくなるからな」

「そうだね。……あ、そうだ。なら帰ってから私がマッサージしてあげよっか?」

「早苗が?」

「うん。肩と足とかも。疲れ、溜まってるでしょ?」


 確かにこの決勝を除いても今までの試合、練習等で疲労は確実に蓄積されてきていた。監督にも1週間のオフを貰えたし、しっかり筋肉を休めないといけないな。


「疲れてるな」

「じゃあマッサージは決定って事でいい?」

「早苗がしてくれるって言うなら、俺はいくらでも受けますよ」


 そんな会話をしながら改札を抜けて駅のプラットフォームに出る。向かいのプラットフォームにも俺と同じ柄のジャージを着た部員を見つけた。が、今は早苗との時間。あいつらの事を話題に出すような無粋な事はしない。

 会話をしながら少し待つと電車がやってくる。運のいいことに席はかなり空いていて、俺達は端の方に座ることにした。


「ラッキーだったね」

「だなぁ」

「寝たかったら寝てもいいからね」

「んー……じゃあそうさせてもらう」


 言うが早いか、俺は瞼を下ろすと隣に座る早苗に少しだけ体を預ける。早苗はそれを嫌がるでもなく、受け入れるようにしてくれた。

 早苗の体温が暖かくて、俺はただひたすらに癒されるのだった。


第391話終わりましたね。今回は榊原達目線のお話でした。久しぶりにこの子達の目線でしたが、やはり書いていて楽しいキャラクターですね!

さてと次回は10日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

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