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第37話.そして合宿は終わりの始まりを迎える

 朝、鳥のさえずりが聞こえる時間帯。俺が目覚めたのは6時半と休日の俺にしてはかなり早い時間だった。昨晩あんだけ夜ふかししといて、この時間に起きれたんだ。俺にしては上出来だ。


「むにゃ……刻、そっち……は崖だよ……」


 起きれた理由は簡単。空宮が俺の腕にしがみついて寝てたせいで、腕が痺れてしまって目が覚めたのだ。しかも空宮の寝言付き。


「ほら、空宮起きろ。もう朝だぞ?」


 空宮を摩って起こそうとする。だがまるで反応がない、ただの屍のようだ。って巫山戯(ふざけ)てる場合じゃなかった。

 よくよく考えれば分かる事だか、空宮と俺が一緒に寝ていたという事はおかしな話なのだ。それに俺、昨日の夜布団の外で寝てたはずなんだけど、なんで布団が移動してきてんの?

 そう思いつつも空宮を起こすことに専念しようと決めた。


「ほら、空宮。起きないとイタズラするぞ?」


 そう空宮の耳元で囁く。すると空宮はそれがこそばゆかったのか、るふんと体をビクンとさせた後に寝言でこう言った。


「刻になら……イタズラされ……てもいいよ」

「……」


 俺はただの寝言に意識してしまっているのか、顔やら耳にとても熱を帯びたように感じる。


「お願いだから起きてくれ。華山達に見つかったらなんて説明すればいいのか分からん」


 自分が意識してしまった事を誤魔化すために、空宮にそう言った。


「ん……んふぅ」


 するとやっとの事で空宮は薄らと目を開ける。寝起きのためか目が涙で濡れて太陽の光が反射してキラキラしてる。


「おはよぉ」

「あぁ、おはよう。さっさと顔洗って目覚ませてこいよ?」

「うん……分かった」


 そう言うと、空宮は素直に従ってムクリと立ち上がる。そしてそのまま洗面所の方へと歩いていった。


「よし、空宮が行ってる間に俺も着替えとくか」


 思い立ったが吉日とでも言わんばかりのスピードで、早着替えをしていく。

 着替え終わる頃になると、洗面所の方から聞こえていた水の音が消えていた。多分空宮が顔とか洗い終わったんだろ。

 20秒もしないうちに廊下から足音が聞こえてくる。


「お水冷たいね」


 空宮は目が覚めたようで、帰還早々そう言った。


(確かにね朝の水って超冷たい。冬なんて凍るんじゃねえのかってぐらいだもんな。てか、今思い出したけど空宮も着替えないといけないな)


「空宮、お前着替えなくてもいいのか?」

「はっ!」


 そう聞くと空宮は何かを思い出して震えている。さらに額にはじんわりと汗をかいている。


「どうした?」


 空宮にそう聞いた。

 あ、もしかしてあれか?女の子の日なのか?もしそうなら聞かなかった方が良かったか……。

 俺がしばらく聞いた事を心の中で悔やんでいると、空宮が喋り始めた。


「よくよく考えたらさ、私昨日の夜刻の部屋に遊びに行くって事をユウ達に言わずに来ちゃった……」

「ん?て事は……」


 俺がそう言うと空宮はこくりと頷きこう言った。


「あの2人に、私が刻と一緒に夜を過ごしたのがバレたら」

「ヤバい、って事か」

「ふぇぇー、どうしよう……」


 空宮は頭を抱えてどうしようかと悩んでいる。何かやましい事があるわけではないが、こうなったらもうあれだ、策かなんかをたてよう。


「なぁ、俺にいい案がある」

「え、どんな?」

「ちょっとこっちに来い」


 俺は空宮を呼びその策を話した。



✲✲✲



 俺は今2階にある卓球台のあるゲーム広場的な場所にいる。まだ朝が早いためか、歩いている人もスタッフだけだ。


「これで大丈夫なのかな?」


 カコンカコンとリズムのいい音が響く中で空宮はそう言った。


「大丈夫だろ。昨日の夜卓球をやろうって約束してたって事にすれば。そしたらほら、あいつ達が起きるより前にここに来たことにすればバレない」

「そういうものかな?」

「そういうもんだろ」


 そしてまたカコンカコンとリズミカルな音が響く。

 朝だからあまり動けないかと思っていたが、意外と動けるものなんだな。多少キツいボールでも難なく取れる。


「ほっ」

「よいしょっ」

「よしっ」

「とりゃー!!」

「残念」


 俺達は普通に卓球を楽しみながら程よい時間になるのを待つ。

 空宮のスマッシュ軌道が空宮の性格みたいに真っ直ぐだから凄く返しやすいんだけど。


「くぅ……」


 空宮も凄く悔しがってる。


 そこから俺達がしばらくの間卓球をしていると、1階のエントランスの方がざわついてきた。スマホを見れば時刻は7時半。


「朝ご飯の時間か」

「そうだね」


 俺達は顔を見合せるとこくりと頷く。

 そろそろいい頃合だ。俺達は卓球のラケットなどを元の場所に戻して、それぞれ自分たちの部屋に戻る準備に入る。

 ここからは完全に空宮の演技の実力次第だ。あいつがぼろを見せればバレるし、完璧にすれば一切疑われることなく乗り切れる。

 なんか、自分の運命を預けた代理人ギャンブルしてるみたいで、このちょっとしたスリルが心地いい。


「じゃあ、また後で」

「うん」


 俺達はエレベーター内で別れるとそれぞれの部屋へと戻った。

 先程よりも陽の光が伸びている。俺はその光を左半身に受けながら廊下を歩いた。


第37話終わりましたね。卓球ですか。あれって勝てるとすんごく楽しいんですよね。負けるとすんごく悔しいけど。

さてと、次回は6日です。お楽しみに!

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