第31話.ゲームスタート
凛が空宮と華山を起こしに行く間に、俺はデッキの配分を進めておく。
強いカードが入っていろと、念を送りながらデッキ配布をさらに進めていると、和室の方から眠そうな空宮と華山を引き連れた凛が帰ってきた。
「刻くーん、2人を連れてきたよ」
「むにゃ……」
「おう、空宮眠そうだな」
本当に眠そうだ。目を完全に閉じてるから、空宮の長いまつ毛が余計に際立って見える。
「鏡坂くん今から何をするんですか?」
空宮の方を見ていると、その隣から俺に声をかける言葉が聞こえた。
「UNOだよ、UNO」
「ほへ?」
華山に何をするのか聞かれたので、ご希望に沿うように答えると、華山は「何それ?」という感じで小首を傾げている。
「UNO知らない?」
「あ、すみません。実はそういった類のものに詳しくなくて」
「あぁ、別にいいぞ?ルールくらい教えてやれるし」
「すみません、ありがとうございます」
華山は少しだけ申し訳なさそうに頭を下げた。
(別に申し訳なさそうにする必要ないのにな)
そう思いながら説明に使う例になりそうなカードを選び出していると、隣に華山が座った。
「あれ、隣に座る感じ?」
隣を見ればすぐそこにいる華山と目が合う。
「あ、いえ。ここの方が鏡坂くんの説明を聞きやすいかと思って。すみません、もし邪魔でしたら退きますけど」
「いや、別に退かなくてもいいけど。ただ……」
「ただ?」
「そんなに密着しなくてもいいんじゃないかな?」
(そう、実は華山は俺の隣に座ってからずっと密着状態なのだ!って、この説明いるのか?いるか)
「あぁ……すみません。まだ少し眠たくて、何か支えがないと寝そうで……」
華山はその後、何か言葉を喋ることは無かった。
「すー」
隣からは柔らかい寝息が聞こえてくる。
(華山さん寝てらっしゃいますね。え、どうしよう。起こした方がいい感じ?でも起こしたのって俺達だからな。ゆっくり寝る権利が華山にはあるわけであって)
どうしようかなと悩んでいると、空宮の相手をしていた凛が帰ってきた。そして凛の傍らにいたはずの空宮がなぜかいない。
「ありゃ?華山さんも寝ちゃったかぁ」
「華山もってことは、もしかして?」
「そう、そのもしかしてだよ」
「寝ちゃったか」
「そうなんだよ」
凛は腕を組みながらどうしようかと悩んでいる。
まぁ、そりゃそうだよな。UNOして遊ぶのに2人ってどうしようもないしな。
一応解決案というか代案を凛に提案しておく。
「UNOはこいつらが完全覚醒した夜中でいいんじゃないのか?晩ご飯の頃には多分起きてるだろうし」
「そうだね」
凛は俺の提案した代案で納得したようで深く頷いた。かと思えば凛はまたすぐに口を開く。
「じゃあ刻くん」
「ん?」
「私達も蒼ちゃんと華山さんを見習って一緒に寝ようか!」
「は?」
(この子は一体何を言ってらっしゃるのでしょうね。僕にはもう分かりません!)
と、そんなふざけた事を言っている場合ではない。凛を正気に戻さなければ。
「あのさ、今晩寝る時どうしようか、って話の時もこんな感じになったの覚えてない?」
「もちろん覚えているよ」
「じゃあ俺がなんて言うかもわかるよな?」
そう聞くと凛はもちろんとでも言うかのように大きく頷く。
「もちろん、刻くんも私の膝枕で寝たいんだよね!」
「違うよ?」
「違うの?」
ダメだ。俺じゃなくて空宮とか華山じゃないと、これは何とかできない。
✲✲✲
凛の相手を一通りした後、ベッドに倒れるようにして寝転んだ。
「あはは、刻くんごめんね?僕の相手をしていたばっかりに疲れさせちゃって」
「いや別に大丈夫だ。凛も暇なのは嫌だろうしな。ちょっとくらいは暇つぶしの相手になってやらないと」
「そう?じゃあもっと遊んでもらわないと!」
凛はそう言うと何やらスマホで調べ物をし始めた。
もしかして、また別の遊びでも調べてるの?確かに相手はするつもりだけど今は疲れてるからちょっと待って……。
そんな儚い願いも凛に届くことはなく、俺はまた遊びに駆り出された。
「何するの?」
「ゲームアプリで遊ぶの」
「ゲーム?」
スマホゲームか。どのジャンルするんだろう。
「そ、まずはこのアプリダウンロードして」
「えーと……」
って、このゲーム俺もう持ってるじゃん。
「なぁ凛。俺このゲームもうインストールしてるんだけど」
「そうなの?」
凛は少し驚いたような顔になったあと、可愛らしい笑顔になってこういった。
「じゃあ一緒にイベントクエスト行こうよ!あのボス強くてなかなか倒せなくて」
「確かに強いな。俺も時間かけて何とか一回倒したけど、それ以来もう挑んでないわ」
もうあのボスヤバすぎるんだよ。ボスのターンになれば毎回HP回復するし、強力な必殺技バンバン打ってくるし。非常にきつい。
「じゃあスタート!」
「おう」
過去のクリアした経験を活かして凛と協力プレーを始めた。
今回は勝てるかな?
第31話終わりました。スマホゲーム楽しいよねぇ。
さてと次回は24日です。お楽しみに!