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第30話.休憩の時間

 俺達は温泉から出ると部屋へ戻った。

 風呂上がりのためなのか、全員周りに発している空気は温かい。


「温泉気持ちよかったね」

「だね〜」

「明日の朝も入りに行きますか?」


 女子達は部屋に戻ってきた後も、仲睦まじくガールズトークを繰り広げている。

 朝風呂に入ろうかと考えていると、不意に後ろから肩をトントンと叩かれた。


「ん?」


 後ろを振り向くとそこにはついさっきまで華山や凛と話していた空宮がいる。


「どうした?」


 そう聞くと空宮は俺に一歩近付いてきて、顔を俺の耳元まで持ってきた。


(何かめっちゃいい匂いするけど、多分あれだな、シャンプーの匂いだな。おっと、そんな事はどうでもいい。今は空宮の話に集中だ)


 内緒の話をするかのような感じの体勢になった。


「あのさ、刻温泉で私達が話してた内容って聞こえてたりする?」

「い、いや?別に内容までは聞こえないけど」


(まさか、聞かれる話の内容がこれか。咄嗟に変な嘘ついたけど大丈夫かな?まぁ、大丈夫だと信じよう)


 自分自身にそう言い聞かせた。だがそれでも空宮は俺の近くから離れようとはしない。


「本当かな?」


 大丈夫ではなかったようです。空宮のやつめちゃくちゃ疑ってる。ここは何とか誤魔化し通したいような気もするけど、ボロが出そうだ。

 そう思いつつも、何とか空宮を信じらせにかかった。


「本当だって。確かに何か話してるなってことぐらいは分かるけど、ゆっても外だぞ?近くには海あるし、意外と内容までは聞こえないもんだって」


 自分の出した解答にそれなりに満足していると、またもや空宮が口を開いた。

 今度はなんだ?


「確かに刻の言う通りかも。でも……」

「でも?」


 何だか変なタイミングで話を切ったな。続きが気になるんだけど。

 早く続きを話すようにと空宮に催促する。すると俺の意図を汲んだのか、すぐに空宮は話し始めてくれた。


「刻ってさ、こういう時はいつも私達が恥ずかしくなったり傷つかない方を選ぶじゃん。だから、今回も刻は私たちが恥ずかしくならない方を選んでくれたんじゃないかなーって、思っただけ」


 そう言うと少し頬を朱に染めて微笑んだ。


「じゃあ、そういう事だから。別に本当に聞こえてなかったんならそれでいいし、聞こえてても言わないでくれたのならそれは刻の優しさって事で受け取っておくから」


 それだけ言い残すと、華山達のいる方へと戻って行った。

 やってる事は嘘をつくという、決して褒められる行動ではないのに。確かに嘘も方便という言葉があるが、ここで嘘をつくのは正しい選択だったのだろうか。それを確かめる術は今はない。



✲✲✲



 今晩自分が寝る用のベッドの上でクーラーの冷たい風を直に浴びながらゴロゴロしていた。ベッド自体はもう一つあって、そこに荷物を置いている。


「あぁ……怠惰なこの時間がもっと続けばいいのに」


 そう独り言を零すと、それを零すまいと拾い上げて話題に変えた奴がいた。そうみんな大好き凛だよ。


「怠惰な時間って……。刻くん、今日は楽しい合宿の初日なんだよ?それを怠惰なんて言っちゃって、もっと合宿らしいことしなくちゃ!」

「例えば?」


 そう聞くと凛は自分のカバンを持ってきて中を漁り始めた。

 何探してんだろ?

 疑問に思いつつも、凛がその物を探し終えるのをゆっくりと待つ。するとすぐに凛の方から声が聞こえた。


「これだよ!」


 凛はそう言って小さめの箱を取りだした。赤を基調とした3文字のアルファベットが目立つ箱。


「もしかしてこれって……」


 そう言うと凛は「おやおや、刻くんも分かってしまいましたかな?」とでも言わんばかりの顔でこちらを見ている。


「そうだよ刻くん。UNOだよ!」


 凛はそう言うと俺が寝転んでいるベッドに座ってきた。そして座ったかと思えば、UNOの箱を開け始める。


「ここでやるのか?」

「うん、そうだよ」


 凛は素っ気なく返事をすると、手札を配り始めた。


「なぁ、UNOって二人でやるものか?」

「いや、大人数でやるものだね」

「だよな」


 分かっているのなら華山なり空宮なり呼べばいいのに。何で呼ばないんだ?

 大方俺の疑問に思ったものが顔に出たのだろう。それについては凛が説明してくれた。


「本当は蒼ちゃんとか華山さんとかとも一緒に遊びたいんだけどね、なんせ今2人ともお昼寝中だから」

「あぁ、そういう事ね」

「そう、そういう事。だからもし刻くんがどうしても一緒に遊びたいんなら、あの二人の寝顔を拝みながら起こさないとね」


(え、俺拝まないといけないの?普通に起こしてあげるってのは無し?)


「ウソウソ冗談だよ。起こす時はこしょばすだけだから」


 凛は楽しそうに笑いながらそう言った。

 こしょばすだけって言うけども、多分それ拝むのよりもハードル全然高いぞ?実際にしたらポリスメンのお世話になりそうな案件だ。どないしよ。

 真剣にどうしようか悩んでいると、凛が笑いながら急に頬をつついてきた。


「これも冗談だからね」

「冗談かよ」

「そうそう、僕が起こしてくるから待っといて」


 そう言うと、すぐに立ち上がり空宮達の元へ行ってしまった。俺はその凛の後ろ姿を見届けた後ベッドに座る。

 さてと、俺は会場のセッティングでも始めようか。


第30話終わりました。いやー、UNOって楽しいですよね。なんかこう心理戦的な部分がね、いかにリバースとかスキップとかを駆使するとか、そういうを考えるのがすごく楽しいです。

さてと、次回は22日です。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい文量で、サクサク読めます。ストーリーも青春していていいと思います。旅行行きたくなりますね。 [一言] 先の展開を楽しみに、継続して読ませてもらいます。
2021/10/29 20:53 退会済み
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