第299話.出発です
「ふんふふ〜ん♪」
まだ日も上らぬほど早い朝。外は薄暗く、聞こえてくるのは朝の新聞配達のバイクの音だけだ。
なぜこんなにも早く起きているのか。そう思うのも無理はない。なにせ今日は平日で本来ならギリギリまで寝ていたいはずなのだから。
しかし、今日は別。今日は待ちに待ったUSJに行く当日なのだ。だから、朝一番で乗り込むために始発の電車に乗るために今日は早くに起きたのだ。
「今日はいつにも増しておしゃれさんだな」
「えへへ〜、そうでしょ!」
「うん、可愛いぞ」
「ありがと!」
刻にこうやって褒めてもらえるのは非常に嬉しい。おしゃれを頑張った甲斐があるというものだ。
特に今被っているこの黒いベレー帽は最近のお気に入りだ。丸い眼鏡をかけたら何だか頭が良さそうには見えないだろうか。
「刻もかっこいいよ!」
「ん、ありがと」
頬を少しだけ赤くしながら刻はぷいっとそっぽを向いた。
珍しく照れているらしい。
そんな刻の姿が可愛らしいなと思いながら、私は荷物の最終チェックをササッと済ませてしまう。
財布にハンカチに家の鍵と折り畳み傘。それからモバイルバッテリーとスマホと……イヤホン!
小腹が空いた時用のグミも最後に入れて荷物の準備も完了した。ソファに座って荷物をチェックしていた刻もどうやら完了したらしい。
「ねぇ、始発までまだ少し時間あるけどどうする?」
「そうだな……準備も終わってるし普段見れない朝の番組でも見て暇つぶしでもするか」
「あ、それいいね」
言うが早いか刻はリモコンを手に取るとピッとテレビの電源を入れた。
パッと画面に移るのは普段見ている朝の情報番組のオープニング。普段はだいたい始まってから1、2時間ほどしてからの視聴なのでなんだか新鮮だ。
「へぇ、星座占いってこの時間にもやってるんだな」
「だね。あ、私一位だ」
「本当だな。俺は……五位か。微妙だな」
「でも高すぎとか低すぎよりも安定しててよっぽどいいんじゃない?内容も悪くないし」
「まぁ、な」
少し渋めの表情を浮かべながら刻は腕を組んでいる。
そんな様子を私は横目に先程の占いの内容を思い出していた。確か『誰かとお揃いのものを身に付けると運勢アップ』だったはずだ。
お揃いか。東京に行った時にサンタさんのオーナメントをお揃いで持ってはいるが、あれはカバンに付けるものとしてはいささか不自然だから該当しない。となるとだ。これはUSJにてお揃いのカチューシャか何かを買うのが妥当だと私は思うのだ。
「……お金もう少し持って行こっかな」
ボソリと呟くと私は財布に野口さんを3人ほど追加しておく。
そこからしばらくするともうそろそろ始発の時間が近付いていた。
「そろそろ行くか」
「うん」
テレビの電源を消し、部屋の電気も消すと私達は部屋の外に出た。扉の鍵を閉めてまだ空の暗い外を歩く。
胸にあるワクワクは止まらない。
私は刻の手を取ると笑顔を向けた。
「楽しみだね!」
第299話終わりましたね。次回ついにUSJが現れます。楽しみです。遊ばせまくる予定です。
さてと次回は、14日です。お楽しみに!
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