第295話.後輩の恋の行方
「私の中のモヤモヤが……尊い乙女の恋心」
蒼先輩の言葉を復唱するように私は呟く。
頭の中が突然フラッシュを炊かれたように真っ白になった。
恋心。そんなものは蒼先輩や物語の中でしか聞いたことがなかった。それなのに私はたった今蒼先輩に、私が感じているこれはその恋心だと言われたのだ。
「わ、私が……秋に……」
自覚しだすと上がっていく熱は止まらない。
ぐんぐんと熱くなり、頭からはプシューと湯気が出そうになる。
「ふうぅ……」
『……想像以上に悶えてるみたいだけど大丈夫?』
「ち、ちょっと……ダメそうです」
『んー、まぁ、それも仕方がないよね。今日は沢山悩んでみるといいと思うよ。榊原くんの事を早苗ちゃんはどうしたいのか。榊原くんにどうして欲しいのか』
「……はい。そうしてみます」
その後に二、三語のやり取りを終えると私は通話を切った。
枕に顔を埋めながらうーと唸る。
明日からどんな顔をして、どんな表情をして、どんな感情を抱いて……秋に会えばいいのだ。
「……私っていつから秋の事を好きなの?」
思い返すと真っ先に思い浮かぶのはあの出来事だ。
華山先輩のお見舞いに言ったあの日の帰り。灘駅で気持ちの悪いおじさんから秋が守ってくれたあの日の出来事だ。
秋が私の事をギュッと抱きしめてくれたあの日のあの事だ。
あの時の私の心臓は驚くほどに早く鼓動を打っていたのは忘れもしない。
✲✲✲
早苗ちゃんとの電話を切ると私は刻の元に飛んで行った。
「早苗ちゃんが恋心を自覚したよー!!」
「へぇ。……えっ!?」
刻はたいそう驚いた様で座っていたソファから飛び上がった。
「ち、ちなみに、その相手は……?」
「そりゃもちろん、榊原くんだよ!」
「おぉ!」
「ね、ね!これはとっても面白い展開じゃない!?」
「だな!どうなるかなぁ。楽しみだなぁ」
子供のようにはしゃぎながら刻は嬉しそうに笑う。
どうやら榊原くんに相当な肩入れでもしていたのだろう。少なくとも私たちの理解している上では、榊原くんと早苗ちゃんは両想いということになる。つまり私達とお揃いなわけだ。
私達とお揃いということはさらに言えばそう。あの2人は恋人同士にになれるのだ。
「何だかあんなに初々しい反応をされると私も初々しくなるねぇ」
「へぇ、可愛かったのか?」
「可愛かったよー。だけど、彼女が目の前にいるのにその彼女に他の女の子の事を可愛かったのかって聞くのはどうなのかな?」
「イテテ……謝るから耳を離して」
耳をキュッと掴んだ指をパッと離すと刻は「ごめんなさい」と謝る。
「はぁ……まぁとにかく今は見守ろうという事なのだよ!」
第295話終わりましたね。今回は短めに、刻達をもっとイチャイチャさせたいです!
さてと次回は、6日です。お楽しみに!
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