第293話.胸の中のモヤモヤ
秋の好きな人は一体誰なのだろうか。
そんな事を考えながら私と秋はそれぞれの部屋の玄関の前で別れる。
「じゃあ、またね」
「うん、また明日」
ひらひらと手を振ると私は部屋の中に入る。
玄関に入った後に後ろからはバタンと扉の閉まる音が聞こえた。
靴を脱ぎ、コートとブレザーを脱ぎながら直接自室に向かう。
私には従兄弟の大地お兄ちゃんはいるが、姉妹兄弟はいない。つまりは一人っ子なのだ。だから、マンション住みにも関わらずちゃんとした自分の部屋があるし、親も私の事をよく見ていてくれる。
まぁ、共働きではあるのだけどね。
だから、部屋の中には私しかいない。
1人だけの部屋だとどうしてもしんと静かで、あまり居心地は良くない。特に秋と一緒に帰ってきた日だと尚更それが顕著に感じる。
ぼふんとベッドに沈み込むように寝転びながら私は天井を見上げた。
「……何でこんなに秋のことでモヤモヤしてんだろ私」
胸の中にできたこの何とも言えぬ蟠りをどうにかしたいと思いながら、けれども消えぬこれに少し精神的に疲れ始めてくる。
✲✲✲
気付いたら寝ていたらしい。
制服姿のまま私はベッドの上ですっかり丸くなっていた。
時計を見てみるが時間はさほど経っておらず、まだ両親ともに帰ってきていない様子。
「先にご飯でも作ろうかな」
共働きがゆえに小学校高学年の辺りから自炊するようにはなっていたので、割と料理自体は手際良くできる自信はある。
料理の工程の中で唯一苦手なのは冷蔵庫の中身からメニューを考える事だろう。
材料が多ければ困ることは少ないが、やはり材料そのものが少なければなかなかすぐには思いつかない。そういう時はネットで調べたりしている。
かぱりと冷蔵庫の扉を開き中身を確認すると材料自体はそこそこ揃っていた。
おそらくある程度のものは作れる。となると、次は効率の良さを求めるのか、贅沢感の方を求めるかの方向性の違いを今から考えなければならないのだ。まぁ、無駄に寝てしまっていたので効率一択なのだけど。
✲✲✲
料理の全工程を終えて私は1人で食事を済ませた。
あとは食器類を軽く水ですすいだ後に食洗機に突っ込んでそのままの足でお風呂に向かった。
服を脱ぎながら思ったが、最近なんだかまた胸周りがきつくなってきた気がする。もしかして胸がさらに成長したのだろうか。
成長する分には構わないのだけど、こうなるとブラをどうしても新しいものに変えないといけない。特にこれなんて私のお気に入りだから、何だかなぁと思ってしまう。
「胸が大きくなるのもメリットだけじゃないんだぞぉ……」
そんな事をボソボソと呟きながら私はお風呂に入った。
湯船に浸かる前に体と頭は入念に洗い、洗顔等も丁寧に行う。タマゴ肌の維持にはこれが不可欠なのだからしょうがない。
ちゃぽりとお湯の音を聴きながら足から順にお湯に浸かっていく。体の芯から温まるこの感じが私はたまらなく好きだ。だから、家族で温泉に行った時でも私だけ極端な長風呂になってしまう。時々のぼせそうになるから危ないのだけども。
「ふぅ……」
深く息を吐きながら私は一つまた先程と同じことを考えていた。
それはやはり秋の事だ。
なぜなのかは分からないが、この胸の辺りに残り続けるモヤモヤとした蟠りだけはなかなか消えない。
そろそろ鬱陶しささえ感じてきたから、さっさと原因を見つけて早急に解決したいところなのだ。
だからそのためにもその原因を探さねばならぬ。
「やっぱり相談は蒼先輩にしようかな」
第293話終わりましたね。もう少しだけ江草たちの話が続きますがご了承ください。こんな時にしか後輩たちの話は書けないんですっ!
さてと次回は、2日です。お楽しみに!
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