第274話.作戦の失敗
さて、下着を取りに行くために素肌の上に直で寝巻きを着たのは別にいいのだが、いざこの状態でなるとなるとやはり気が引ける。
いつもよりも布一枚分自分の体を覆うものが少ないせいか少し寒いし、何よりも守られている感じがしない。
どれもこれも私の不注意のせいで引き起こしたものだから誰かに愚痴を言うこともないが、それでもだ。
「うぅ……心臓がうるさいよ……」
バクバクと動きっぱなしの心臓の辺りを手の平で擦りながら、廊下に繋がる扉に手をかけた。
ぺたぺたと裸足で廊下を歩きながら刻のいるリビングに辿り着く。刻の目の前で私は布一枚の状態で下は何も無いのだと考えると恥ずかしさがまたぶり返してきた。
「……ってあれ?刻がいない」
テレビの電源は点いているところを見ると今はトイレにでも行っているのだろうか。
これを好機と捉えた私は足早に下着の入ったカラーボックスのある寝室へと向かった。
扉に手をかけガチャりとのぶを回し中に入ろうとすると、
「うおっ!?」
「きゃっ!?」
中にいたらしかった刻と鉢合わせした。しかも、不幸なことにというか事故というか、ぶつかった際に刻の体の一部が私のブラのされていない胸部に思いきり触れてしまったのだ。
「お、おぉ、大丈夫か?」
だが、どうやら刻はぶつかった事の方に意識を持っていかれたようで、胸の事には全く気付かずに私の事を心配してくれた。
「う、うん、驚いただけ」
「ならよかった」
そう言った後にぐるりと上から下まで私の体を刻は見る。
もしかして下着を着ていないことがバレたのだろうか?
少し心臓をドキドキとさせながらなにか話されるのを待っていると「蒼も風呂から上がったみたいだし俺も入ろうかな〜」と言って大きく伸びをした。
よ、よかった。バレてなかったみたい。
と、ホッとしつつ私は一点不思議に思う。なぜ刻は寝室にいたのだろうかということだ。
「あのー、つかぬ事を聞きますが」
「うん?」
「刻はなぜ寝室に?」
「ん、あぁ、これ取ってた。もうそろそろかなって思って」
そう言って刻が手に出したのは刻の新しい寝巻き。黒基調で冬は暖かく、夏は涼しいという一年を通して着られる機能性抜群のものだ。
「いや、これを早く着たいなぁって思っててな。それで蒼が出てくるまであと少しかなってなったからいつでも入れるように準備してたんだよ」
「あぁ、そういう事」
「うん、そういう事」
いや、もしかしたら私の下着を探してたりー?なんて思ったりしたがさすがに刻はそんな事をする人ではありませんでした。うん、心の中で謝っとこ。
ごめんなさいと内心で合掌しつつ私は「それじゃあ、早くお風呂行ってきなさいな!温かいよ!」と言って刻を送り出した。
刻は急に送り出されるものだから少し困惑した表情を見せるが、「お、おう」とだけ残して素直にお風呂に向かってくれる。
「ふぅ……これでバレずに下着を着れる」
そう独り言を零しながら私はするりと上を脱ぐ。
「なぁ蒼ー、俺部屋にスマホを置いてなかっ……た?」
「へぁ……」
私は扉をちょうど開けた刻と目が合う。
上半身がほとんど裸の私と、それを目を点にして眺める刻。奇妙な構図の出来上がりだが、それよりも私の頭の中は真っ白だった。
第274話終わりましたね。続きが気になるところですが、今回はここまでです!なんで書かへんねん!と思ったそこのあなた!僕がこのあとがきを書いている時間が投稿の5分前だと分かればかけない理由が分かると思いますのでご了承くださいな!(早く書き始めないのが悪い)
さてと次回は、25日です。お楽しみに!
それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!