第273話.下着の行方
マンションに辿り着くと私達は少し体の力が抜けた。
新たな私達の家というのもあるだろうが、やはり帰るべき場所というのは心穏やかでありたい。
鍵をオートロックを解除し、五階の部屋に帰るとコートを脱いだ。ハンガーにかけて備え付けのクローゼットに直すとぽふんとソファに腰かける。
沢山ラーメンを食べたせいか、ソファに沈み込んだ体を持ち上げるのは少ししんどい。
「うぅ……このまま寝ちゃいそう」
「いや、お風呂には入ってもらうぞ?」
「分かってるよ!」
ぷんすかと怒りながら私は頑張って立ち上がる。
うん、お腹いっぱいだから動くのはやっぱり大変。
「じゃあ、せっかく蒼が立ち上がったことだしお風呂は譲りましょうかね」
「いいの?」
「いいぞ。今日はいっぱい動いて疲れただろうし、ほら早く準備して入った入った」
「うん、じゃあお先にお風呂貰うね」
そう残して私は寝巻きとスマホを持つと脱衣所に向かった。バスタオルやスキンケア道具等は既に向こうに用意してあるので持っていくもの自体は割と少なくて楽だ。
「お気に入りの音楽を流してっと」
WiFiのマークのような緑と黒の音楽アプリをタップして、私が選別に選別を重ねた厳選プレイリストを再生した。脱衣所には明るい洋楽が流れ始める。
そうそう、これがいいのだよ。気分が高くなったまま過ごせるこの感じが。
服を脱ぎ洗濯機の中に入れると颯爽と風呂場に入る。先程まで換気扇を回していたせいですごく寒い。
「早くお湯に浸かりたい……」
✲✲✲
お風呂から上がると私はトントンと肌を叩くようにして体を吹いた後に下着を着けようとした。そう、あくまで着けようとしただけだ。
「あ……れ?下着が無い……」
寝巻きの中やスキンケア道具の陰に隠れていないかガサガサと漁りながら私の下着を探すが、結局どこにも見当たらなかった。
頬にタラりと冷や汗が流れた。心臓はバクバクと激しく鼓動を鳴らしている。
「こ、これは、刻にバレないように取りに行かないと……。でもどうやって!?」
急に始まったミッションに私はどうしようもないほどの絶望感を覚えながらも、これはしょうがないことなのだと自身に言い聞かせた。
というかこれは私が悪いだけなのだけど。
私は下着無しの肌の上に寝間着を着る。普段は一つ布を隔てての寝巻きだが、今は何も無い状態で触れているので少し変な感じ。
鏡に映る自分を見てみると少し胸の辺りに小さな膨らみの影が見える。
……これすごく恥ずかしい。あれ、これ刻にバレたらすごく大変なことにならない?刻が本能の獣さんになっちゃわない!?
カッと頬に熱がこもるのを感じながら、それでも私は意を決した。
「……よっし、今から下着奪還に向かうよ」
第273話終わりましたね。今回は手短に、蒼がピンチだということだけ伝えましょう!
さてと次回は、23日です。お楽しみに!
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