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第27話.宿

 太陽の日が強く照り付ける中、俺達は今日明日と泊まる宿に向かっていた。その宿までは途中まで電車で移動し後は歩きで行く。

 歩くと言ってもたった数百メートルの話なので、めちゃくちゃ疲れるのかと聞かれればそうでもないのだ。ただやはり辛いのは太陽の日が痛いくらい照りつけている事だろう。女子達は日傘をさしたり、日焼け止めクリームを塗ってしっかり対策している。


「ここ、神戸よりも暑いね」

「そうだな」

「このままじゃ、お肌が日に焼けちゃうよー!」

「あれ、日焼け止めクリームとか塗ってないのか?」

「塗ってるけどそのクリームをも貫通して日に焼けそうなの!と言うか、刻は日焼け止め塗った?」

「別に塗ってないけど」


 別にそういった類のものを持ってる訳ではない。だから、当然の様にそう返すと空宮はガサゴソとハンドバックの中から何かを取り出した。取り出したものをよく見ると、太陽の顔のようなものがプリントされている。


「はい、刻も日焼け止めクリーム塗って」


 空宮はそう言ってカバンから取り出したそれを俺に渡してくる。


「いや、別に俺は塗らなくてもいい」


 そう断ると、空宮はそんな事はどうでもいいのだと言うかのようにこちらに一歩近づいて来てもう一度日焼け止めを俺に渡してきた。


「刻の意見はどうでもいいの。日に焼けたら後で赤くなってその後痛くなるの分かってるでしょ?だから塗りなさい!」

「えぇ……」


(空宮はあれかな?俺の姉か母親か何かなのかな?)


 そう思いつつも、これは空宮なりの心配だと言うことにして渋々日焼け止めを受け取った。しかし俺この類の苦手なんだよな。手に付いたあとしばらくの間ベタつくからさ。

 内心で日焼け止めに対して愚痴をこぼしつつも、どんどん体に塗っていく。

 絶対に塗っておきたいのは腕と顔と首かな。首に関しては自分では見えないから、その分しっかり塗りこんでおかないと。



✲✲✲



「おー、広いね」

「ホントだね」


 歩みを進めてエントランス内に入るとそこには大きな螺旋状な階段があった。エントランスの奥を見れば壁一面がガラス張りになっていて、端の方を見れば外にも出られるようになっている。そして何より外に出れば海を一望することが出来る位置にここは建っているのだ。

 先生が色々と手続きを済ませている間、俺達はエントランス奥にあるソファに座り込む。


「海綺麗ですね」


 座り込んで間もなくすると、隣に座っていた華山がそう言った。


「そうだな」

「学校から見える海も好きですけど、ここからの景色はそれよりも好きかもしれません」


 俺達の住む神戸は南に海、北には山と挟まれた形になっているのだ。ちなみに学校の部室や教室からは山の方ではなく海の方が見える。

 見えるとは言っても、神戸の街の向こうに見えるから結構遠いところにあるのだけど。


「海で言うんならやっぱ沖縄とかの方がいいんじゃないのか?透明度多分断然向こうの方が高いぞ?」


 そう言うと華山は少し困ったような笑顔でこちらを見た。


「確かに透明度とかそういう点では沖縄の海の方が綺麗なのかもしれません。けど私はそういったとこよりも、なんて言うんでしょう。……少し違ったようなところが好きです。……って私何言ってるかよく分かりませんよね」


 華山はそう言うとまた少し困ったように笑った。


「少し違ったところが好き……か。まぁ、分からんでもない。とは言えその少し違ったところってのは人によって違うんだろうけどな」


 そう言うと華山は少し驚いたのか、目を大きく開いてこちらを向いている。


「どうした?」

「ふふっ、いえ、内緒です」

「なんか気になるな」


 華山は少し笑いながら内緒と言ってこちらを向いた理由を言わなかった。その理由を知るのは華山だけ。いつかはその理由が分かったりするのだろうか?いや、別にわからなくても困らないけど。

 そんな事を思いながらも目を瞑っていると、受付の方から歩いてくる人の気配が近づいてきた。目を開けて確認するとそれは先生だということが分かる。


(なんか、少し顔に影がかかってますけどどうかしました?)


「あ、せーんせっ!受付終わったの?」


 凛がそう言って先生の方へと近づいて行った。


「あぁ、確かに受付は終わったよ。そしてついでに問題点も見つかった」

「へ?問題点?」


 先生のその発言に何だ何だと、空宮と華山の視線も先生に注がれる。もちろん俺の視線も。

 先生は俺たちの視線が集まったのを確認すると、深く深呼吸した後に謝罪をしてこう言った。


「まずは、すまない」

「何がですか?」


 俺がそう聞くと、先生は非常に言いにくさそうに、そして申し訳なさそうにして口を開いた。


「その、実はだね……私の手違いで部屋が一つしか取れてませんでしたっ!ごめんなさいっ!」


 先生は深くお辞儀をしてもう一度謝った。だが俺達はそれよりもまずは解決しなければならない問題の方がよっぽどやばい事に気付く。どうやら空宮もそれに気が付いたようだ。


「もしかしてそれって……」

「あぁ、多分空宮と俺が考えている事は同じだ」

「だよね。てことは、もしかして私達今日刻と一緒の部屋に泊まるの!?」


 そう問題とは男女で別れるはずの部屋がないのでした。

はてさて、今夜は一体どうなるのやら。こっから先は俺にも分からん。

 だが、ひとまずはこの状況から抜け出す方法を考えなければな。


第27話終わりましたね。ついに宿に着きました!しかも刻は華山達とお部屋が同じなんですよっ!夜はどうなるんでしょうね・・・。

さてと次回は16日です。お楽しみに!

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