第267話.お引越し
ソファの上に座りながらゆっくりとして刻を待っているとインターホンが鳴った。私は立ち上がりモニターを見ると、どうやら先程私の家で動いてくれていた引っ越し屋さんのお兄さん達だ。「はーい」と言って私が出ようとすると現ちゃんが私の服の裾を引っ張った。
「私が出るから蒼姉は座ってて〜」
「そう?」
「うん。あ、でも刻兄には引っ越し屋さんが来たこと伝えといて欲しいな」
「分かった。それくらいなら任せておきなさい!」
エッヘンと胸を張ると私はタタターっと階段を駆け上がった。そして刻の部屋に扉をノックしてから入ると後ろから抱きつく。
「蒼どうした?」
「引っ越し屋さんが来たよーって報告」
「あ、了解」
「現ちゃんが対応してるから多分すぐ来るよ」
そう言ってから私は腕を解いて刻から離れる。
私の部屋と同じようにダンボールで埋め尽くされた部屋は何だか不思議な感じがする。
「スッキリしちゃってるね」
「そうだなぁ。まぁ、ベッドだけは置いてくけど」
「私もそこは同じ」
「2人で暮らすんだもんな」
お互いの顔を見合いながら少し笑う。
向こうでの寝具は予め家具屋さんに行って2人で選んだのだ。1人用よりも少し大きいサイズ。ちゃんと並んで寝転んだから寝れることは間違いないし、何より寝心地が良かったので期待も大なのだ。
「失礼しまーす」
私達が話している間に廊下や階段に養生シートを貼り終えたらしく、帽子を外しながらお兄さん達が2人ほど入ってきた。
「こちらで全てでいいですか?」
「そうです。お願いします」
「します!」
刻と一緒に頭を下げてお願いするとお兄さん達は「分かりましたっ!」と元気に言ってどんどんと荷物を運んで行った。流石プロと言ったところだろう。
✲✲✲
お兄さん達が先に向かったのを見送った後に私達も新居に向かう準備をした。バッグを持って靴を履くと現ちゃんの方を振り返る。
「じゃあ引っ越してきます」
「うん、行ってらっしゃーい。刻兄は蒼姉を困らせたらダメだよー?」
「困らせないようにする」
「それでよし!」
2人のやり取りを見終えると、私達は手を繋ぎながら駅の方に向かった。
新居のある灘は摂津本山から電車で四駅と、さほど離れているわけではないので、案外すぐ着く。
これから完全に2人で暮らすという現実にまだ少し信じられない自分もいるが、楽しみなところの方が大きいので心は踊る。
「今日は寝かせないんだからっ♡」
「そりゃ楽しみだ」
第267話終わりましたね。次回から完全二人暮しがスタート!お楽しみにね!
さてと次回は、11日です。お楽しみに!
それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!




