第261話.母親の企み
今日も今日とて刻兄と蒼姉のイチャイチャを眺めているわけですが、もはやそれに動じることすら忘れてしまった自分を少し恐れてたりします。
今日はお母さんも仕事がお休みで一緒にこの光景を眺めているけど「仲良しねぇ」と微笑ましそうに見るだけで、特にちょっかいはかけていない。
「むふぅ」
「どうしたの?そんな独特なため息ついて」
「んえ?あー、いや、別に何でもない」
実際何でもない。何でもないのだがふと思ってしまったのだよ。なんでこの2人は人の目の前でここまで堂々とイチャイチャ出来るのかと。友人の前ならまだしも、一応家族の前ですぜ?恥ずかしくないかい?
足の間に蒼姉を座らせて一緒に仲良く猫ちゃんの動画を見てらっしゃいますけども。しかもスマホからBluetoothを飛ばしてテレビの大画面で。おかげで私がテレビ使えなくて泣きそうなのです。まぁ、イチャイチャしてるのを見るのも楽しいからいいけどさ。
「あ、このグレーの猫ちゃん可愛い」
「だな」
刻兄ったら蒼姉の言葉に賛同してるように見せかけて、蒼姉の事可愛いって言ってるようなものだよね。だって視線が画面じゃなくて蒼姉の方向いてるんだからさ。
「ふぅ……いっその事あの2人同棲させたらいいのに」
ポロッと何の気なしに口から出た言葉。それを聞いたお母さんは目を一気に爛々と輝かせ始めてこちらを見てきた。
「現!」
「ど、どうしたの?」
「それよ!初めからそうしたらいいんじゃない!」
「え、え?」
「そうと決まったら蒼ちゃんママと作戦会議しないと!」
お母さんは言うが早いか、勢いよく椅子を引くとスマホを片手に「ちょっと行ってくる!」と言って駆け出してしまった。
ドタバタと騒がしかったのだが、それにもかかわらず刻兄達はお母さんがいなくなったことに気付いていない。
はたして大丈夫なのだろうか。自分達の知らない間に何やら壮大な計画が進んでいる事に不安を覚えたりは……しないか。知らないんだからするわけがない。
「ふっ」と笑いながら頬杖をつくと片手でパシャリと刻兄達を撮った。
「あ、この赤ちゃん猫も可愛い」
「可愛いなぁ」
「いいなぁ、赤ちゃん」
何だかこれ以上聞いていると砂糖を吐き出しそうになるので私は退避をする。
エマージェンシーエマージェンシー、お母さん隊員。現隊員は砂糖地獄から逃れるために退避します。お母さん隊員も砂糖にはご注意下さいませ。
適当なメッセージを脳内テレパシーを使って送信するとリビングを出た。
✲✲✲
「あれ、現ちゃんとおばさんがいなくなってる」
「ん、本当だ。いつの間に」
ふとスマホに何か連絡が来ていないだろうかと思って確認してみると、案の定連絡が現から来ていた。
『お母さんは蒼姉のお家に行ったよ〜。私は砂糖を吐きそうになったから苦ーいコーヒーを買いに行ってくるね』
砂糖を吐くとはどういう事なのだろうかと思いつつも、気にしない事にする。気にしても分からないものは分からないのだ。特に現の場合はそう。
「ねぇ」
クイクイっと服の裾を引っ張るようにして蒼は俺の事を呼んだ。
「どうした?」
「これ見て」
そう言って見せられたのは蒼とおばさんのやり取り。
もっと正確に言うとおばさんから一方的に送られてきたメッセージ。
『今日の夜ちょっとお話したいことがあるから、刻くん連れてお家に帰ってきてね!あ、現ちゃんの事も呼んでね!』
あのおばさんが話したい事。しかも俺も含めて。何やらただ事ではない気がするのをヒシヒシと感じながら、蒼の方を向く。
「何やらやばそうだね」
その一言に大きく頷くと、「ふっ」と苦笑いを浮かべた。
第261話終わりましたね。さぁ!イチャイチャ始まりますよ!また始まりますよ!
さてと次回は、27日です。お楽しみに!
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