第259話.恋人繋ぎの帰り道
さて、新年初日をほとんど刻のお家で過ごしていたわけですが、一旦は家に帰った方がよろしいでしょう。さすがに今日も泊まっていくというわけにはいきません。
「さて、今日は一旦帰るね」
そう言って立ち上がると「もう帰るのか?」と刻は聞いてきた。
私の事を見る表情は少し寂しそうに見える。
こう寂しそうにされると、せっかく帰ろうと思っていたのに、まだいたくなってしまうではないか。
「だって昨日からずっといるんだよ?さすがにお母さんにも顔を見せないと、ね?」
「確かにそうだけど……」
「もうっ……」
やはりまだ寂しそうにする刻に私は一歩近づくと目線を下げた。じっと刻の瞳を見つめて、そしてすっと顔を近づける。
柔らかく重なるのを自分のもので確認しながら、ふっと息を吐いて顔を離した。
お互いの瞳に映る頬は赤く染っている。
「明日も会えるでしょ?だから今日はここまで」
「……分かった」
おそらく渋々というのが正しい表現だろう。そんな表現が正しいと思える表情で刻はゆっくりと頷いた。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日ね」
手を振りながら玄関の方に向かおうとすると「あ、ちょっと待って!」と言って服の裾が引っ張られる。
「どうしたの?何か忘れてた?」
「いや、そうじゃなくて」
「ん?」
首を傾げながら続きを話すように促してみると、刻にしては珍しく頬を再度染めながら話し始めた。
「あ、あの……家まで送ってく。その、もう暗いし」
「あぁ〜」
呼び止めた理由が存外シンプルなもので、納得しつつも笑いそうになってしまった。
しかし、ここで笑ってしまっては失礼。何とか感嘆だけで済ませると「じゃあ、お願いするね」と言って刻の手を握った。
✲✲✲
恋人繋ぎをしながら寒空の下を歩く。
隣を通っている車のヘッドライトに時々照らされながら、私はふと隣を見た。私の選んだチェスターコートを着て、マフラーに顔を埋めている彼。相変わらず頬は赤くなっていて、息も白い。いや、それは私にも言える事か。
「寒い……」
「うん……想像以上に寒いな……」
初詣に行った時よりも遥かに寒くなっている。天気予報は見ていないが、もしかしてここから気温は下り坂だったりするのだろうか。
そんな事を考えながらずいっと刻に近寄る。
そんな私の行動に対して刻は何を言うでもなく受け入れた。
段々と2人の間は暖かくなってきて、少しだけ体が動かしやすくなってきた。
「また明日は沢山イチャイチャする?」
「そうしようか」
「分かった」
そんな約束を交わすと私の家まであと少しの道のりを歩んだ。
第259話終わりましたね。今回も甘々は少なめでしたね。うむ、甘々が書きたい。書きたいけどまだなのでスっ!その時がいずれ来る!
さてと次回は、23日です。お楽しみに!
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