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第241話.従姉妹は後輩

 教室に着くといつものように自分の席に着いた。周りにいるクラスメイト達は俺と空宮が付き合いだした事を知らない。だから、いつも通り接してくれていた。


「よう鏡坂!明日から冬休みだぜっ!」

「だな。上木はどう過ごすんだ?」

「あれ!?俺の予定は聞かないの!?」


 上木は少し腕を組みながら「そうだな」と呟く。

 男の俺からしても上木のこういった仕草はかっこいいと思える。クールな性格って羨ましい。


「多分12月中は部活三昧かな。それで新年明けたら多分実家で祖父母と従姉妹と過ごすと思う」

「従姉妹か。俺は従姉妹いないからちょっと羨ましいな」

「そうか?従姉妹って言ってもほとんど後輩みたいなもんだぞ?」


 首をひねりながら上木はそう言うので、俺は「そう言うもんかな」としか言えない。


「従姉妹って何歳差なんだ?」


 後輩みたいと聞いて俺は疑問に思ってそう聞いてみた。

 後輩という事はそこまで離れていない気もするが、まぁ、聞くに越したことではない。


「一個下だな。一応鏡坂の後輩でもあるぞ?」

「えっ?俺の後輩ってどういう事?」


 唐突に知らされた事実に俺は思わずそう聞いてしまった。

 上木の従姉妹が俺の後輩という事はこの学校のやつなのだろうか。

 そう思っていたら上木はおもむろにスマホを取り出し、そしてスマホカメラを指さした。


「俺の隠れ趣味は写真撮影だ。一眼レフでのな」

「へー、それは意外」

「意外だろうな。言ってなかったし」


 にしてもなぜ急にカメラの話なんてしだしたのだろう。それが何か後輩の従姉妹と関係があるのだろうか。


「あるぞ」

「ナチュラルに心読むのやめてもらっても?」

「それはすまん。それでだな、いるだろ?」

「誰が」

「後輩だよ。鏡坂の部活の」


 PhotoClubに属している俺達の直属の後輩は1人しかいない。もしかするとだが、上木がカメラが趣味だと言ったのって……。


「まぁ大方今頭の中で想像ついてるだろ。PhotoClubの江草早苗は俺との血の繋がりがある従姉妹だよ」

「嘘だろっ!?」

「本当だ。一回くらい聞いたことあるんじゃないか?早苗がカメラ始めたきっかけ」

「えーっと、江草がカメラを始めたのって確か従兄弟の兄ちゃんに影響されてだった気が……」


 江草が入部してきたその日の帰り道での会話を頑張って思い出しながら俺はそう言った。


「大正解。その従兄弟の兄ちゃんってのが俺の事」

「はぁー、そうなるといよいよ世間は狭いって思うなぁ」


 かなり実感の籠った声を出しながら俺はじーっと上木の顔を見た。

 確かにどことなくパーツが似ている気がする。鼻筋とか唇の形とか。ちなみに目はあまり似ていない。上木の目は切れ長で、江草の目はぱっちりと大きいから似ていないように見えるのだろう。


「まぁ、そういう事で俺は早苗の家族達と過ごすと思うよ」

「なるほどね」

「それで鏡坂はどう過ごすんだ?家でゆっくり過ごす感じか?」

「かなー。あ、でも今回の冬休みは例年と違うか……」


 最後にそうぼそりと呟くと上木は首を傾げながら「何が違うんだ?」と聞いてきた。どうするのがいいのだろうか。素直に言った方がいいのか、空宮からのゴーサインを待つのか。

 俺は空宮のいる方を少し見てみる。しかし空宮は九条や山下と話していて、まるでこちらの視線に気づいていない。


(ひとまず濁しとくか……)


「あー、そのなんだ。ワンチャン従兄弟ができるかも、的な?」

「両親に兄弟は?」

「……いないです。どっちも生粋の一人っ子です」

「ならその線は潰れた。従兄弟ができる可能性は無いから安心してくれ」


 鬼だ。咄嗟に思いついた嘘とは言えども、ちょっとした俺の夢でもあったのに。木っ端微塵に砕きやがった。

 しくしくと心の中で泣きながら、観念して俺は上木に少し近付いて耳打ちをする。

 灯崎にだけはまだ聞かれたくない。間違いなくこいつは大声で驚くから。


「……あのだな、その、空宮と」

「空宮と?」

「その……付き合うことになったから……多分2人で過ごす」

「あー、そういう事か。納得した」


 頬に熱がこもるのを感じながら俺は上木から離れた。


「まだ言うなよ?お前にしか言ってないから」

「分かったよ。にしてもやっとなんだな」

「何がだよ」

「いーや、こっちの話」


 「ふっ」と笑いながら上木はそう言うと灯崎も連れて「他のバレー部の所にでも行ってくる」とだけ残して去っていった。

 あいつはやはり男でも惚れそうになるくらいクールでかっこいい。

 2人が出ていくのを見届けるのとほとんど同時に、教室の後方の扉から元気な声が飛んできた。俺がけじめをつけなければならない相手の声。そちらの方を向くと俺は立ち上がって「おはよう」と告げた。

 そいつは荷物を俺の隣の席の机にかけると「やっ、今日も寒いね〜」と言ってマフラーを外す。

 切り出すなら、この後、すぐにだ。

 拳が少し震えるのを感じながら、俺は隣に立つ凛を見据えた。


第241話終わりましたね。はい、伏線回収が一つ完了です!いつ回収するか迷って、約100話越しの回収となりました。長すぎましたね。

さてと次回は、18日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

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