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第233話.ソファでのイチャつき

「はい、どーぞ」


 ことりと音を立てながらお母さんは二つの紅茶の入ったティーカップを置いた。中からはほのかに湯気が立っている。


「あれ、お母さん。私の紅茶は?」


 首をこてんと傾げながら、(うつみ)は紅茶を置いたばかりのお母さんにそう聞いた。お母さんは「あっ……」と声を漏らすと年齢に合致しない行動を取る。


「てへっ、忘れてた」

「えぇ……」

「だってしょうがない!蒼ちゃんが来てくれたのよ?そっちに意識向くじゃない!」


 プンプンと怒りながらお母さんは(うつみ)にそう話した。しかし、お母さんの熱量に対して(うつみ)は割とクールに返した。


「確かにお母さんは蒼姉と会うの久しぶりだからテンション上がるかもね」

「何?その口ぶりじゃよく会ってるみたいじゃない」


 そこまで言うのを聞き届けると「ふっ」と(うつみ)は不敵な笑みを浮かべる。まるで切り札でも隠し持った悪役の様な笑い方だ。

 女の子がそんな笑い方でいいのかは定かではないが。いや、いいわけないな。


「お母さんは勘がいいね?」

「え?」

「そうだよ。蒼姉とはよく会ってるよ!お母さん達の帰りが遅い時によく晩ご飯作りに来てくれるからね!」

「う、嘘でしょ!?」

「ほんとだよ!」


 母と子のそんなやり取りを俺と空宮は特に言葉を発さずに見続ける。


「一体俺達は何を見せられてんだか」

「あはは。まぁ、賑やかでいいんじゃない?」


 柔らかい笑顔を浮かべながら俺の方にちらりと目をやった。「どうした?」という意味を込めて首を少し傾げてみせると、空宮は「何でもない」という意味で首を横に振り、代わりに少し俺に近付いて座った。

 左太ももの上に空宮の右手が置かれる。少しくすぐったいなと思いながらも、空宮の笑顔を見てたらそんな事は気にならなくなってきた。

 頭を撫でやると空宮も少しくすぐったそうに、けど決して嫌がってはいない表情で「えへへ」と笑った。


「ねぇお母さん」

「どうしたの(うつみ)

「私達もしかしてお邪魔かな」

「かもしれないわね」


 何やらボソボソと喋りながら、こちらの方をチラチラっと見てくる。

 言いたい事があるのなら普通に言えばいいのにと思いながら、俺はムニッと空宮の頬をつまんだ。「喋りにくい」と言いながら空宮はこちらを見てくる。


「うん、お母さんやっぱり私達お邪魔だね」

「そうみたいね。まだ見ていたいけど一旦部屋に戻りましょうか」

「だね」


 2人は顔を見合わせてこくりと頷くとぞろぞろと歩き始めた。そして、リビングを出る扉に手をかけるとこちらを見て「部屋に戻っとくね」と言って出ていってしまう。


「結局あの2人は何がしたかったんだろうな」

「うーん、分かんにゃい」

「あ、ごめん」


 頬をつまんだままだった事を忘れていたので、急いで離し謝りながら俺は空宮の頭を撫でる。


「頭撫でてくれたから許す」

「ありがと」

「むふぅ」


 満足気な笑顔を浮かべながら、空宮は頭を俺の胸元に押し付けてくる。

 可愛いな……。

 そう思いながら空宮をしっかりと抱き寄せた。急な予想外の事に驚いたのか「きゃっ」と高い声を出す。


「いちいち可愛すぎるんだよ……」

「ふえ?褒めてくれてる?」

「褒めてる」

「やった」


 広いソファの大半を余し、隅の方で2人仲良く固まりながら俺達は喋り続けた。


「そういや時間大丈夫なのか?」

「あ、ほんとだ」


 壁に掛けてある時計を見ると短針は既に12を指している。


「やばくない?」

「かも」


 空宮は急いでスマホを取り出しLINEのアイコンをタップする。赤い丸で何件か通知が届いているのが俺の角度からも見えた。


「何て来てたんだ?」


 そう聞くと空宮は耳を赤くしながらこちらを振り返る。なぜそんなに赤くなっているのかは全く分からない。


「あの……ですね?お母さんから連絡が来てたんだけど」

「おう」

「どうやらお母さん、刻のお母さんに頼んで今日は私、刻の部屋に泊まることになってたみたい……」

「まじか」

「うん、まじ」


 2人で寝たことは一昨日もあったが、あれはホテルというアウェイな状況での話だ。だが、今回は俺の部屋。使い慣れた部屋だ。


「その、どうしよっか」

「どうするか」


 お互いに顔は染まりきっている。お互いの体温が常にわかるような距離にいるのだ。空宮の体温が急上昇した事は図らずとも分かる。

 ダメだ何回経験しても緊張する。

 至近距離で向けられる潤んだ空宮の瞳に心臓を大きく動かしながら、俺は空宮ごと立ち上がった。


「部屋、行くか……」


 精一杯の勇気を持って発した言葉。空宮はその言葉に小さく頷いてくれる。

 手を引き扉に手をかけ、階段を上がると自室に入った。

 ベッドは一つ。

 きっと、前回の続きが始まる。

 謎の確信を胸に抱きながら俺と空宮はベッドの縁に座った。


第233話終わりましたね。ヒロインを可愛く書く方法は何回書いてもなかなか見つからないものです。照れさすのがいいのか、笑顔にしてあげるのがいいのか。はたまた寝ぼけ顔を主人公に眺めさせるのがいいのか。ヒロインはやはり奥が深いですね。あとは今年もありがとうございました!ぜひ来年もおねがいしますね!

さてと次回は、2日です。お楽しに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

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