表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

229/700

第229話.タピオカ

 電車を乗り継ぎ原宿駅に俺達は向かう。

 駅を出てすぐの所から真っ直ぐ前を見ると、異様な数の人がごった返していた。


「分かってはいたけど、やっぱり竹下通りは人が多いね」

「うん、三ノ宮のセンター街といい勝負するよ。」

「ほんとにね」


 凛とそんな会話をしながら、俺は後から改札を抜けてきた華山と空宮の方に視線をやった。

 2人は仲良さげに話しながら笑っている。


「それで刻がね〜」

「ふふっ」


 会話の内容はどうやら俺の事だったらしい。

 変な事を話されていないように祈りながら、俺は凛の方を見る。


「よしっ、行くか」

「だね!美味しいクレープが僕を待っている!」

「おう。太らない程度に食べるぞ!」

「……ダイエット……帰ったらしよ」


 あからさまに表情を陰らせながら凛は「ははっ」と笑った。見るからに絶望感が漂ってきている。


「あー、その何だ。ダイエット俺も協力するから、今は楽しもうぜ?」

「うん……。そうだね。未来の事を気にしても今はどうせ分からない!今を楽しむのだ!」


 そう言ってから、凛は手を引いてこちらに笑顔を向けてきた。凛の髪はふわりと揺れる。


「刻くんも楽しもうぜ!」

「おう」


 笑顔には笑顔で返す。

 凛の元気の源は、きっとこういう楽しむ所は楽しむという事を徹底した性格のおかげなのだろう。

 少しその性格を羨ましいと思いながら、俺達は空宮達を呼んで人の波が荒れ狂う竹下通りに突入した。



✲✲✲



「それで、クレープを食べる前に何で俺達はタピオカを飲んでいるのでしょうか?」

「え?美味しいから?」


 キョトンとした表情を浮かべながら、空宮はチューっとタピオカを飲む。

 美味しいのかどうかはさておき、タピオカが流行ったのって少し前な気がするのは俺だけだろうか?今はやはりマリトッツォな気が……あれ?これももう乗り遅れてる感じ?

 今の流行りが一体何なのか分からない自分に少し悲しさを覚えつつ、俺も空宮達と同じ様にチューっと抹茶ラテのタピオカを飲んだ。

 定期的にタピオカに喉を撃ち抜かれて痛い。


「ケホッ……」

「と、刻?大丈夫?」


 背中を空宮に優しく摩られながら俺は手で大丈夫だと伝えた。あまりにも自然にされたので少し驚いたことは内緒。


「刻くんはドジっ子だなぁ〜」

「これにドジも何も無いって」

「そう〜?」

「そうだ」


 プクッと頬を膨らませながら凛は「本当かなー?」と言って納得出来なさそうにしていた。


「ほーら、凛?刻が困ってるよ?」

「ぶー」

「可愛いブタさんはこの子か!」

「ブヒャッ!?」


 空宮が凛の鼻をつまんだためか、凛はボッと頬を赤くしながら目を丸くして驚いた。


「仲良しですね」

「だな」


 華山はいつも通りの聖母スマイルを浮かべながらそう言う。

 聖母マリアじゃなくて聖母有理でいいんじゃないかと思い始めた今日この頃です。


「蒼ちゃん!恥ずかしいじゃない!」

「えー?可愛かったよ?」

「蒼ちゃんがそう思っても、刻くんと華山さんがそう思わないかもでしょ!」

「そうかな?刻とユウはどう思う?」


 そう聞かれた俺達はお互いに顔を見合わせると「ふっ」と笑って同時にこう言った。


「可愛かったですよ」

「可愛かったぞ」

「と、2人は言っているけど?」

「う、嘘だぁ……。可愛くなんかなかったもん!」


 両手で持ったタピオカですっぽりと顔を隠すと凛は「うぅ……」と声を漏らした。


「凛照れちゃったねぇ」

「て、照れてないし!恥ずかしいだけだし!」

「あんまり変わらない気がするけど」

「いいの!細かい事は!」


 プクッとまた頬を膨らませると凛は「ほら、クレープのお店行くよ!」と言って歩き出す。

 3人はお互いに顔を見合わせて笑みを浮かべると、先を進む凛の後に着いて行った。



✲✲✲



 楽しい時間ほど過ぎるのが早いものはない。

 昨日の半分をホテルで過ごした空宮との時間を取り戻すためか、凛と華山は想像以上に張り切って楽しんでいた。

 もちろん俺も楽しかったし、空宮も楽しんでいたと思う。

 だけど、今日はタイムリミットがあるわけだ。修学旅行の終わりを告げるタイムリミットが。

 そして、それはもう目前にまで迫っている。どれくらい目前かと聞かれれば、あと30分と答えるくらいには。


「はぁ……もう終わりかぁ」


 揺れる電車の座席に座りながら凛は寂しそうにそう呟いた。


「だね。あともう少しあったらもっと楽しめたんだけど」

「うん。蒼ちゃんと遊べたのも数時間だけだし」

「寂しいですね」


 女子3人はそんな会話をしながらどこを見るでもなく視線を彷徨わせる。


(どれだけ名残惜しいんだよ)


 そう内心でツッコミながら俺はくすりと笑った。

 あまりにも3人のその姿が可愛らしく写ったから。


「おい、美女3人衆」


 そう言うと3人ともキョトンとした顔で俺の顔を見る。

 どうやら美女の自覚は全員あったよう。


「明日は明日で楽しい日なんだから、その事だけを今は考えておこうぜ」


第229話終わりましたね。修学旅行が終わった次の日の日付は修学旅行の日程説明があったところを読み返してくれれば分かりますよ!何となく次の話の展開を先に知りたい方はぜひそちらをご確認くださいな!

さてと次回は、25日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ