第222話.2人でのディナー
地下鉄を乗り継ぎ日比谷駅に着くと、私達は日比谷公園に向かった。
周りには私達と同じく日比谷公園に向かっている人なのか、たくさんの人がぞろぞろと歩いていた。割合としてはどちらかと言うと子供連れの家族よりも、夫婦やカップルだけで来ている人が多い印象だ。
きっと、本場のドイツを模して行われるイベントだからなのだろう。どちらかと言うとお酒の方が多く出ているイメージだし。いや、ちゃんと子供でも食べれるものは沢山あるのだけど。
「昼間よりも一段と冷えるな」
そんな事を考えていると、私の隣を歩く刻はそう言った。
確かに昼間よりも寒い気がする。昼はまだ空が曇っていたとは言えども日は出ていたわけで、今は完全に日が暮れて、さらには雪もチラついているのだ。そりゃ寒く感じて当然だろう。
冬の寒さに震える刻の手を温めてあげながら、見えてきた日比谷公園に入る。
「綺麗だね」
「だな」
目の前に広がるのは、暖色系の色で統一された電飾の明かり達。周りの人の活気も相まってか、先程まで感じていた寒さは少し和らいだような気がした。
「どうする?」
首を小さく傾げながら私は隣に立つ刻にそう聞いた。刻は「ほぅ」っと白い息を吐きながら「そうだなぁ」と言った。マフラーをくいっと上げ直す刻のその仕草が無駄にかっこよくて、私は思わず顔を逸らしてしまいながら刻の話を聞く。
「晩飯時だしな。腹に溜まるものが食べたいし、ひとまずソーセージ系行っとくか?」
「うん、そうしよー!」
「うし、じゃあ行くか」
手を優しく引きながら、刻は私の前を歩き始める。
私が他の人にぶつからないようにさり気なく刻が人避けになってくれていて私は内心で感謝した。
刻には特に言っていないが、やはりまだ人が多い所では少し目が回ってしまいそうになる。だから、刻の背中だけが見えている今の状況は凄くありがたい。
「ありがとうね」
「ん、何か言ったか?」
「いいや〜、別に何も言ってないよ」
何となく私は誤魔化しながら、少しだけこちらを振り返っている刻に向かってニッと笑い返した。
✲✲✲
パリッといい音のなるソーセージを私はパクリと口に入れる。噛んだそばから熱々の肉汁が出てきて、美味しいとかよりも先に熱いという感覚に襲われてしまった。
「はふはふ……熱い」
「だろうな。焼き立てだし」
少し可笑しそうに刻は笑う。
私は少し「むっ」となりながらも、口の中がアツアツなのですぐには何も言い返せなかった。
(熱い熱い熱い!焼き立てにしても熱い!)
内心では悶絶を続けながら、私はゴクリと意を決して飲み込んだ。
「ふぅ……やっと飲み込めた」
「よく出来ました」
「私は刻の子供か何かなのかな!?」
個人的には隣に立つ恋人になりたいのだけれども。まぁ、そんな事刻に直接言えるほど肝も座ってないけどね。
「あ、そうだ。刻も食べなよ」
「えっ」
「はい、あーん」
刻が拒否をする前に、私はソーセージを刻の口元付近にまで運ぶ。アツアツなためかソーセージの断面からは白い蒸気がもくもくと上がっていた。
「も、もう少し冷ましてからでも……」
「ダメだよー」
「えぇ……」
「はい!口を開ける!」
そう言うと刻はゆっくり口を開いた。
私はゆっくりと刻にソーセージを食べさせてあげる。
「はふ、熱い……」
「んふふ〜、私の事を笑った罰なのだ!」
「もう……笑いません」
刻は熱そうにはふはふしながらゴクリと最後は飲み込んだ。
最後の方は少し目を潤ませていたのが可愛らしい。
「じゃあ、次のお店に行こ!」
「おう、まだ口の中熱いけど」
刻はボソリとそう言いながら、また私の前に立って歩く。
お次のお店はどこでしょう?
第222話終わりましたね。さて、もうそろそろ僕のテスト期間が終了です。やったぜ!テストが終わればさらに小説に集中できますよ!
さてと次回は、11日です。お楽しみに!
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