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第22話.出発

「よしっと、用意はこれだけでいいかな?」


 旅行カバンに二泊分の服などを入れて、カバンのファスナーを閉めた。

 今日が合宿の初日。広島までは新幹線で行くので、集合は新神戸駅に9時だ。ちなみに俺は空宮が迎えに来てくれるらしい。普通は逆な気もするが、俺の家の方が電車の最寄り駅に近いのでついでらしいのだが。


「ふぅ」


 ソファに座り込んで時間までスマホをいじる。俺はスマホの時計で時間を確認すると、集合時間まではあと1時間ほどある。だが、電車に乗ると言っても20分もあれば着くのだ。

 時間の事を考えながらゆっくりしていると、インターホンが鳴った。どうやら空宮が来たそうだ。俺はソファから立ち上がり、インターホンの画面を見てマイクをオンにする。すると、やはりそこにいたのは空宮だった。


「今から出るわ」

『分かった〜』


 そう言うと旅行カバンを持ち玄関に行く。玄関に着くと俺はスニーカーの靴紐を結び直して履き、玄関の扉を開けた。玄関を出ると、門の向こうには空宮が手にキャリーバッグを持って立っている。


「刻おはよっ!」

「おう、おはよう」


 空宮は半袖のボーダーにショートパンツと涼し気な服装だ。髪の毛はいつも通りポニーテール。普段と違うところがあるとすれば、それはブレスレットなどのアクセサリーをつけている点だろう。

 こういう姿を見ると、やはり空宮はかなり可愛い女の子だということに気付かされるのだ。


「じゃあ行くか」

「だね」


 家の門から出て空宮と一緒に駅に向かって歩き始めた。空は晴れていて太陽の日が直接当たり、普段なら暑いような天気だが、今日はいつもよりも風が多く比較的過ごしやすい。


「涼しいね〜」

「そうだな」


 空宮は鼻歌を歌いながら楽しそうに歩いている。

 楽しそうな理由は分かりきっているから別におかしいとも思わないが。

 しばらく歩くと駅に着く。俺達は改札を抜けて、新神戸の方面に行く電車のあるホームに出た。小中高と夏休みに入ったためか、駅には旅行に行くような荷物を持っている家族連れの人達が沢山いる。


「沢山人いるね」

「だな」

「みんな家族なのかな?」

「そうなんじゃないか?手を繋いでる大人と子供がいるわけだし」


 本当に家族連れが多い。パッと見た感じ少なくとも五組の家族はいる。家族連れの子供の多くは小学生くらいの子が多い。

 そんな感じで周りの人達の様子を見ていると空宮が口を開いた。


「私達は他の人から見たらどう見られてるのかな?」

「どういう事だ?」

「ほ、ほらっ!こ、恋人同士とかみたいに見えるのかな〜って……」

「なっ!?」


 空宮は顔と耳を真っ赤にしながらそう言った。それ以前に、最後の方はもう声が消えかかっていた。


「た、多分見えないんじゃないのか?ほら、俺とお前じゃ釣り合わんしな」

「そ、そうかな?わ、私はそうは思わないんだけど……」


 空宮は顔を俯かせてモジモジしてる。


(照れるくらいならそんな事言うんじゃねぇよ……)


 するとちょうどいいタイミングで電車が来た。


「よし、乗るか」

「だ、だねっ!」


 電車に乗り込むと吊革に捕まる。座席はホームにいた家族連れの皆さんで埋まっていた。まぁ当たり前だね。

 電車が進み始めると同時に慣性が働いて、吊革をまだ掴めていない空宮が俺の腕を掴む形になった。


「ご、ごめん」

「いや、別にいい」


 ついさっきあんな会話をしたためか、2人の間には微妙に気まずい様な、恥ずかしい様な、そんな空気が流れる。空宮は俺の腕から離れて吊革をしっかり掴むと、少しため息をついた。


「どうした?」

「いや、何でもないよ?」

「そうか」


 何でもない様な状態に見えないから、俺は心配してるんだけどな。聞かれたくないことか?まぁ、空宮が言いたくないのだ。無理に言わせるのはあまり良くない。

 俺は切り替えると空宮に話題を振る。


「そういや、華山と凛以外には誰か来るっけ?」


 誰かいたような居なかったような。うーむ、どうにも思い出せん。


「いたよ〜」


 空宮は間延びした声で俺の問いに答えてくれた。


「誰だ?」

「えーっとね、ユウのお姉ちゃんの華山亜理先生だよ」


 あぁ、いたな。二ヶ月ぐらい前に部室で会った。俺は美術の授業取ってないから全然会わなくて忘れてたわ。というか、よくよく思い出せば打ち合わせの時に来る的な事言ってたような。



✲✲✲



 電車に揺られる事、数十分。俺達は新神戸の最寄り駅に着いた。そこから歩いて新神戸駅に入り、改札のある方へ向かうとそこにはキャリーバッグを持った華山と凛、そして先生がいた。


「やぁ、刻くんに蒼ちゃん」

「おはようございます、鏡坂くん、蒼さん」


 華山と凛の2人は俺に挨拶をしてくれた。そして華山先生の方は、近くの柱に寄りかかってうたた寝している。

 多分夏休みに入ったからと言って、教師陣も俺達生徒のように休めるという訳では無いのだろう。今日くらいは学校のことなんか忘れて、合宿と言う名の旅行を楽しんで欲しいものだ。


「よし、じゃあ全員揃った事だしレッツゴー!」


 凛の声で皆は改札を抜けていく。華山は先生を起こしに行った。新幹線が来るのを待つ間は、女子達がトークで盛り上がっている。楽しそうだこと。


第22話終わりました。遂に夏休みに入り、刻達は広島へ向かいますね。宮島行きたい。

さてと、次回は6日です。お楽しみに!

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