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第215話.パンケーキ

 外の気温に比べて店内は暖房が良く効いていてとても暖かい。店内の雰囲気もあってか、非常に心が落ち着く空間に仕上がっている。

 私達以外には若い夫婦や、女子大生らしき人達などがいた。

 あと数年であの人達と同じ歳になるわけだが、私は到底あんな大人な感じになるとは思えない。むしろ、なぜあそこまで大人びた雰囲気を纏えるのか不思議だ。


(刻も大人な雰囲気を纏う事はあるけど、でも常にじゃないからね。時々子供になってるし)


 少しクスリと笑いながら私は目の前に座る刻の顔を覗いた。私の視線に気がついたのか「どうした?何か顔に付いてるか?」と、刻は聞いてくる。


「いいや〜?何も付いてないよ」

「そうか?」

「うん」

「なら、何か用か?」


 そう聞かれると私は首を横に振る。

 ただ、刻の事を見ていたいだけなのだから、用があるわけではない。


「ま、何でもいいか」

「そうそう、私の事は気にせずに、どうぞスマホをご覧になってくださいな」


 そう言うと「そうさせてもらう」と言ってまたスマホに向き合う。先程ちらりと画面を盗み見た感じ、電車の時間やルート確認などをしているらしい。

 私のわがままのためにここまでしてもらうのはなんだか気が引けるが、ここは素直に厚意を受け取っておこう。

 しばらくすると店員さんがパンケーキを運んできた。

 目の前にはフルーツとたっぷりかけられたホイップクリーム。ホイップクリームのキャンバスにフルーツの色彩が載って、とても可愛らしい見た目だった。

 そして何よりも美味しそう。


「果物の量すごいな」

「だよね。私も想像以上で少し驚いてる」


 そう言ってから、私は刻の目の前にあるパンケーキに目を向けた。

 黄金の輝くシロップ。そしていい感じに溶けたバター。食べなくても分かる。これは美味しいやつだ。


「シンプルもやっぱりいいね」

「やっぱりそうだろ?食べたけりゃ後で少し分けてやるよ」

「いいの!?」

「おう、別にそれくらい構わん」

「やった!」


 子供のように喜びながら私も「じゃあ、私も分けてあげる!」と言った。

 貰ってばかりはなんだか気が引けるので、これくらいはしなければ気が済まない。まぁ、物々交換と何も変わらないんだけど。


「ありがとな」


 刻にそう言われると自然と頬が緩む。「えへへ」と笑いながら私はフォークとパンケーキ用のナイフで切込みを入れ、一口食べた。

 口の中にはフルーツの酸味と甘さに加え、パンケーキの柔らかさが印象に残る。ほんのりバターの香りもして、味同士が喧嘩をするものかと思っていたが、これがなかなかどうしてすごく相性がいい。


「美味しい」


 一言だけそう言うと私は黙々と食べ進めた。

 止まらない。刻の分は残さないと。その事だけを頭に留めておくと私は幸せに満たされながら一口、また一口と食べる。


「美味そうに食べるな」

「美味しいもん」

「そうか」


 「ふっ」と笑いながら刻は微笑ましげに私の事を見てきた。


「刻も食べないの?」

「ん?そうだな、食うか」


 私と同じようにフォークとナイフを両手に持つと、刻はプスリとメスを入れるようにパンケーキに切込みを入れた。切り込みにはシロップと溶けたバターが流れ込む。


「じゃあ、いただきます」


 パクリと刻の口の中に消えていくパンケーキ。

 もぐもぐと口を動かした後に、刻は少し目を見開いてこちらを向いた。


「これ、めちゃくちゃ美味しい」


 見せるテンションは私ほどは高くないがそれでも分かる。


(刻めちゃくちゃ内心は楽しんでる) 


「よかったじゃん!」

「おう、空宮も食べてみるか?」


 そう言ってフォークに一口分刺された状態で、私の目の前にパンケーキが差し出されるた。私は躊躇うことなくパクリと食べると、頬を緩ませる。


「甘々だ〜」

「だろ」


 まるで、刻は自分の作った料理が褒められたみたいな笑顔になりながらそう言った。


「私のもあげる」


 フルーツとパンケーキをフォークで取り、少しホイップクリームを付けると、私も刻が私にしたように差し出す。


「はい、あーん」


 私はあからさまに高校生カップルがいかにもいちゃついていますよ感が出そうなセリフを吐く。

 刻はそのセリフに反応したのか少し頬を染めながらぎこちなく「あ、あーん」と言ってパクリと食べた。


「美味しい。美味しいけど、空宮はバカ……」

「急に罵らないでくれる!?」


 私がそうツッコミを入れると、刻は染まったままの頬を少し掻きながらこちらを見た。


「いや、その何だ。き、急にああいう感じのセリフを言われるとだな……か、勘違いする。俺も……バカだから」


 頬はさらに染まり、刻はついに耐えられなくなったのか女の子みたいに両手で顔を隠す。

 私はその姿を見て少し笑いながら、聞こえるか聞こえないかの声量で「勘違いじゃないよ」と、刻に向かって言った。


第215話終わりましたね。パンケーキは甘くて美味しいですが、みなさんはケーキなら何が好きですか?僕は圧倒的にチョコケーキですね。甘くて苦い感じが好きです。

さてと次回は27日です。お楽しみに!

それと次回は「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

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