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第199話.試験本番とお出かけ

「では、始め」


 手首に付けた腕時計を確認すると、担任の羽峡先生はテスト開始の合図を出した。合図と同時にチャイムの音がスピーカーから鳴り響く。


(ふぅ、落ち着け私!頑張れ私!)


 自分で自分にエールを送るとテストの問題用紙を開き、解答用紙には名前などの必要事項を書き込んだ。

 今日の科目は一時間目に化学。そして二時間目は英語。どちらも刻や凛に沢山教えて貰った教科だ。沢山教えて貰っただけに、この二教科だけは何としてでも良い点数を取りたい。


(まず大問一は簡単なmol計算だね)


 molの問題において最も基礎的な問題。ここではできるだけミスを減らして、かつ点数を稼ぐ必要がある。後半の方が必然的に難易度も上がるから余計にここでは落とせない。

 だが、やはりここは刻の手腕というか何というか。全く詰まることなく解き終えることが出来た。多分、私史上最速だ。

 しかし、たった一度の成果で決して喜び浮かれる事はなく、今はひたすらクールに頭を冷静に動かすことだけに専念させた。


(変に調子づいてミスに気づけない事の方が危険だからね)


 続く大問二は、具体的な数字はあまり載せられていないちょっとしたmol計算。ただこちらも、冷静に解いていけば回答にたどり着くことは容易だ。


(ふふっ、少し楽しくなってきちゃった)


 今までここまで解けることがなかったから、少し気分が高揚する。


(だけど、やっぱし油断は禁物!クールだよ!私!!)



✲✲✲



 5日間丸々をかけて期末テストが行われ、それがつい先程終わった。手首と首。あとは目と頭に肩と、色々な部位に疲労が溜まっている。


「疲れた……」


 私は部室の机にぐでーっと倒れ込みながらそう言った。


「おつかれさん」

「あ、刻だ」

「おう、俺だぞ」


 そう言いながら、刻は私の頭の上にトンっとペットボトルを置いた。私はそのペットボトルを手に取るとラベルを確認する。


「あ、ミルクティー」

「それやるよ」

「いいの?」

「いいぞ。今回は頑張ってたみたいだしな。ちょっとしたご褒美だ」

「んふ〜、ありがと!」


 そうお礼を言いながら、私はキュッと閉まっているキャップを開いた。開けると同時にペットボトル内に空気が入り込み、ポコッという音が鳴る。

 冷たいペットボトルの飲み口を口元に近付けると、クピりと一口口に含んだ。ほんのりと口に広がるミルクと紅茶の香り。程よく合わさって心が安らぐ。


「そういえば凛と華山はまだ来てないんだな」

「みたいだね。江草ちゃんは今日は榊原くんだっけ?と一緒に先に帰ったけど」

「みたいだな。今日はバレー部オフみたいだし」

「かくいう私達もオフと何ら変わらないけどね」

「だな」


 まったりした空気感の中そんな話をしていると、ガラガラと音を立てて部室の扉が開いた。入って来たのはPhotoClubの部長、ユウだ。そして後ろには綺麗な碧眼と金髪が目立つ凛も立っている。


「やぁ刻くん、蒼ちゃん。さっきぶりだね!」

「お2人共こんにちは」


 いつも通り元気な凛と、いつも通り礼儀正しいユウ。相変わらず普段通りで安心する。


「よう」

「やっほ〜」


 私達も似たような感じで返事を返すと、4人一緒に机を囲んだ。

 今日は短めの部活になるらしい。なにせ一週間後には修学旅行が迫っている。あまり部活に重きを置くのも違うだろうという、ユウのお姉さんであり、顧問である華山先生からのお達しだ。


「じゃあ今日は何する?短めだったらどこか撮りに行くのも大変な気がするけど」


 隣に座る刻がそう言うので私もこくりと頷いた。


(確かにどうするんだろ)


 そう思いながらユウの方を向くと、ユウは少し腕を組んで考える仕草を見せた。


「そうですね。じゃあいっその事今からオフにして少しみんなでお出かけに行きますか?来週には修学旅行がありますし、必要な物を買うっていう口実付きで」

「あぁ、それはいいかもな」

「だねぇ」

「いいと思う!」


 ユウからみんなでお出かけという提案が出たのは意外だったが、これは結構いい話なのではないか。

 つまり、これは隙を探せば刻と2人きりになれるかもしれないという……いや、やっぱり今日はみんなと楽しもう。楽しみは後に取っておくタイプなのです。



✲✲✲



 そしていざ訪れたのはロフトやSOGO等が目立つ三ノ宮だ。人がかなり多い。制服の上にコートを羽織った高校生の人もいれば、営業中らしきサラリーマンも多数見られる。


「まずどこに行く〜?」

「ひとまず服屋に行ってもいいか?」

「いいけど、服欲しいの?」

「いや、修学旅行用に新しいのが一着ぐらいあってもいいかなって思ってな」

「そういうことね」


 私が納得した素振りを見せると刻はこくりと頷く。


「凛達はどこか行きたいとかある?」

「僕はLOFTで小物探しでもしようかな。もしかしたらそこで、修学旅行に持っていけそうなアイテムが見つかるかもだしね」

「あ、なら私も一緒に行ってもいいですか?」

「うん、いいよ〜。一緒に行こ!」


 段々と三ノ宮でどう行動するのか決まってきた頃に、私はある事に気づいた。


(あれ?もしかして刻と2人っきりになる展開になってる?)


 そう凛とユウは2人でLOFTに向かうが、私と刻は別の所にある服屋さんに行くのだ。つまりは完璧に2人っきり。


「じゃあ僕達はLOFTに行ってくるね〜」


 凛は手を振りながらそう言うと「あ、信号青だ!行こっ華山さん!」と言って走り出してしまった。


「よし、じゃあ俺達も行くか」


 首に巻いたマフラーをキュッと巻き直しながら、刻はそう言う。


「う、うん!」


 少し予想していなかった展開だが、ここは何とか平常心を保とう。深く深呼吸をすると、私も刻に習ってマフラーを巻き直す。


「じゃあ刻行こっ」


 私は自然に刻の手を取る。

 お互いに手袋はしておらず指先まで冷たい。しかし、少しすれば2人の手の間に仄かに熱が保たれ始めた。


「暖かいな」

「だね」


 12月に入ったためか空気の寒さとは別に、クリスマス特有の煌びやかな雰囲気が街には漂う。


「刻は服どんなのが欲しいとかあるの?」

「んー、そうだな。強いて言うなら空宮達の隣にいても、恥ずかしくない格好ってとこかな」

「なるほど?」


 少し疑問形でそう言ったためか刻が言葉の補足に入った。


「ほら、空宮も凛も華山も、みんな可愛い華の高校生なわけであって、その隣にいようと思ったらせめて恥ずかしくない程度の格好はしておきたいなと……思ってな」


 ほんのりと刻は頬を赤くしながらそう言った。それは冬の寒さのせいなのか、羞恥のせいなのかは定かではない。


「そっかそっか〜♪」


 だけど間違いなく私の頬は嬉しさでほんのりと赤くなっていた。


第199話終わりましたね。さて、もうそろそろ修学旅行編が始まるぞー!!楽しみだな〜、と僕も思っております!皆さんも楽しみにしていてくださいね!

さてと次回は、26日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下のポイントから評価の方をお願いしますね!

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