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第189話.魔法の呪文

 そそくさと(うつみ)の元から去ると、俺は呪文作成に勤しんでいる空宮の隣に座った。椅子を引いた音で気が付いたのか、空宮は不思議そうにキョトンとした顔で俺を見てくる。


「どうしたの?凛達の方に行ってたんじゃなかった?」

「行ってたぞ。ただ(うつみ)に祟られそうだったから避難してきただけだ」

「祟られるって(うつみ)ちゃんに一体何したの……」


 少し呆れたような表情を浮かべながら空宮は俺にそう言ってくる。

 しかし、事実として俺は本来祟られるような事はしていないはずなのだ。「痛いの痛いの飛んでいけー」なんて昔はよくしていたし。


「はぁ……。まぁ、刻が何をしたとかはどうでもいいんだけどさ」

「どうでもいいんかい」


 そうツッコミを入れつつ、俺は空宮が次に喋る事に耳を傾けた。


「それよりもさ、こんな呪文どうかな!」


 そう言うと、空宮は俺に文字の書かれた紙を両手に持って見せてくる。


「どれどれ?」


 書かれている文字は全て英語だった。よく見れば翻訳アプリの開かれたスマホが、テーブルの上に無造作に置かれている。

 多分頑張って調べながら作ったのだろう。


「Eat nightmares and sprinkle happiness.意味は何なんだ?」


 そう聞くと空宮は少し誇らしげに胸をそらす。

 まだ意味を聞いてないから、そんなに自慢げにされても困るのだが。


「意味はね、悪夢を喰らえそして幸せを振り撒け!だよ!」

「ほぉ。その心は?」

「ほら、ハロウィンって一応お化けさんとかが沢山いるでしょ?もしかしたらその中には悪いお化けさんが悪夢として悪さするかもしれないから、魔法で食べちゃおうってこと!そのついでにみんな幸せになったらいいな〜って思ってね」


 しっかりと意味まで考えられている空宮の魔法の呪文に、俺は少しの驚きを覚えた。


「いいなこの魔法」

「でしょ?」


 ニコニコと嬉しそうに笑う空宮を見て思わず俺の頬も緩んだ。心の底から嬉しそうで、俺は呪文の力のよりも空宮の笑顔の魔法に心が暖かくなる。



✲✲✲



「さて、もうそろそろ子供達が巡ってくるからね!気合い入れてくよー!!」

「「「おー!!」」」


 (うつみ)の音頭に合わせて俺達は声を上げた。

 今いるのはよく俺と空宮が行く近所の小さな公園。昔は凛ともよく遊んだ公園。

 周りには小さなジャックオランタンがいくつか置かれており、俺達以外の大人の人もせっせとお菓子の準備をしている。


「みんな気合入ってるね」

「ですね」


 2人はにひひと笑いながらそんな話をしていた。


「あ、あの……」

「ん?」


 周りの大人に混じって準備を進めていると、後ろからクイッと服を引っ張られた。

 見ればそこには下を向いた華山が立っている。


「どうした?」

「私の頭のこれ外しちゃ……ダメですか?」


 そう言われて俺は華山の頭上を見る。

 乗っかっているのはぴょこっと生えた猫の耳。そう文化祭の時に見たものと同じ耳だ。なぜかは知らないが、華山の仮装だけ直前で空宮達の用意したものに変更されたらしい。


「ダメだよ!」


 まじまじと華山のその姿を眺めていると、俺の後ろからそう言った声が聞こえてくる。見てみればムフんと腰に手をやっている凛と空宮が立っていた。なお(うつみ)は子供の誘導に先程駆り出されている模様。


「で、でも、猫耳じゃお化けっぽくないですし……。何より怖くないじゃないですか!」

「大丈夫!ユウは猫じゃなくて猫又だから!妖怪だから!それにユウは怖くなくても可愛いからそれでいいの!」

「で、でもぉ……」


 目をうるうるとさせて頭上にある耳を隠す。

 その表情は少し幼げで可愛らしい。


「ほら、刻の仮装がさ、無駄にリアルで怖いから、ユウみたいに可愛いお化けさんがいた方が子供たちも安心できるんだよ?」

「む、無駄……」

「だから華山さんにはその姿をしてもらいたいという事なのだよ!」


 そう言われると華山も思う所があったのか、俺の方をちらりと一瞥し、そしてこくりと頷く。


(こら?俺の仮装が怖い事を今一度確認したね?僕知ってるんだよ?)


「わ、分かりました……」

「やったね!」


 渋々承諾したらしい華山がそう言うと空宮達は喜ぶ。しかしその後すぐに少しだけ大きな華山の声が響いた。


「……けど!」

「けど?」

「その、ニマニマと私の姿を見るのは……その、恥ずかしいので……やめてください」


 そう言うのでもう一度空宮達の方を向くと確かに2人の口角は微妙に上がっていた。


「んふふ〜、わかったわかった!ずっとは見ないから安心してて!」


 空宮がそう宣言するのを見て華山は「ずっと見るつもりだったんですか……」とぼそりと呟いていた。

 俺は苦笑いを浮かべながらそのやり取りを眺める。


第189話終わりましたね。今回明かされたのは華山の仮装でした!ちなみに腰には二又に分かれた猫のしっぽが着いています。可愛いですよ!きっと!

さてと次回は、6日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!

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