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第188話.仮装2

 先程は空宮が想像以上に俺の仮装の出来栄えに驚いたせいで気にする暇すらなかったが、よく考えたら空宮達も今は仮装をしていた。

 すぐ目の前にいる空宮は、ちょうど両手でギュッと握っていた黒くて縁の大きなとんがり帽子を被っているところだ。

 おおよそ何の仮装なのかは分かるが一応聞いてみる。


「空宮は何の仮装にしたんだ?」

「魔女だよ〜」


 そう言うと腰に着けている茶色いポーチから、杖をヒュッと取り出した。そしてその杖をクルクルと回しながら楽しそうに呪文を唱えている。


「エクスペクトパトロー……」

「はいストップね?君守護霊呼び出せないでしょ?」


 そう言いながら俺は空宮の杖をキュッと握った。

 空宮は少し不服そうに頬を膨らませながら「唱えるくらいいいじゃん!」と俺に言ってくる。

 苦笑いを浮かべながら一つ提案をしてみた。


「呪文を唱えるなら、既にあるものよりも自分で作った方が楽しいんじゃないか?そしたら呪文の意味も完璧に理解してるし、魔法を使ってるっていう気分にも浸れるだろ?」

「んー、確かに」


 腕を組みながら空宮はうーむと悩んでいる。だが自分で作るという点に惹かれたのか、答えはほとんど決まりつつあるようだ。


「そうだねぇ。よしっ!私オリジナルの呪文考えてみる!」

「ん、そうしろ」

「うん!」


 小さい子供のような無邪気な笑顔を浮かべながら、空宮は「紙とペン借りるね〜」と言ってダイニングテーブルの方に1人向かっていった。

 テーブルに向き合うと、カリカリと紙に呪文の原案を書き込んでいる様子が、こちらからも伺える。


「蒼ちゃんってさ、こういう時凄く素直だよね〜」

「だな」

「うんうん。特に刻くんの言葉には物凄く素直」

「そうか?案外みんなの言葉に対してもそうだと思うんだけど」


 隣に立っている凛にそう言うと、凛は首を横に振った。


「確かに素直は素直なんだけど、刻くんからの場合は蒼ちゃんどことなく嬉しそうなんだよね」


 そういう凛の言葉に俺は少し首を傾げた。

 俺が空宮に言う言葉と、他のみんなが空宮に言う言葉に大して差はないから、だから特に俺の言葉に対して特別な反応を空宮がしているようには見えないし、何よりそんな反応をしていると全く考えなかった。


「ま、刻くんは鈍感さんだから分からないかもだけどね♪」

「ん?」


 隣を見ればこちらに向かってウインクをしている凛の顔がある。少しその表情が可愛いなと思いながらも、俺はその感情を表に出さないように努めた。


(何かバレないように気を逸らせる話題ないかな)


 そう思っていると一つ、むしろなぜすぐにこの話題が出なかったのかと不思議に思うものが見つかる。


「あー、そういや凛は何の仮装にしたんだ?」


 そう仮装だ。空宮の時に触れたのに、凛の時に触れないというのは少しもったいない気がする。

 折角のハロウィンなのだ。全員の仮装についてくらい少し触れておきたい。


「ん?僕の仮装はね」


 そう言うと凛は俺に尖った四本の八重歯を強調するように口をうっすらと開きながらこう言った。


「ヴァンパイアだよ!がお〜!」


 両手をバッと上にあげながら俺を襲うようなポーズを凛は取っているが「がお〜!」というのが可愛らしすぎて全く怖くないという現象に陥ってしまう。


「ち、ちょっと刻くん?少しはつっこんでくれてもいいんじゃないかな?僕、恥ずかしいんだけど」

「恥ずかしいって自覚はあったのかよ」

「そ、そりゃね。我ながらあざといな自分って思ったし」


 凛の頬はほんのりと上気していて、本当に恥ずかしかったということが伺えた。


「クスッ」


 思わずその様子を見ていると少し笑いが漏れてしまった。

 先程よりも頬を赤くする凛は、俺の肩を両手の握り拳でポカポカと叩いてくる。


「わ、笑わないでよー!」

「ごめんごめん」


 まだ少し顔に微笑みを湛えたまま俺はそう言った。


(こんな感じの凛も普段と少し違ってて可愛い)


 内心でそう思いながら、俺は後ろからジリジリと近づいてきている足音の主の方を向き、少し痛めのデコピンをお見舞する。

 パシッという乾いた音がリビングに響き、デコピンをされたそいつはおでこを擦りながら「いったぁ……」と言っている。


「兄を驚かせようなんて2年早いんだよ」

「刻兄!刻兄のデコピン無駄に痛いし、妙にリアルな数字もやめてもらえます!?」


 そうプンスカと抗議してくるのは、俺の妹である(うつみ)だ。


「なら初めから俺の事を驚かせようとしなければいい」


 そう正論を吐くと(うつみ)は「ぐぬぅ」と唸り始める。

 少しいい気味だと思いながら一応赤くなった(うつみ)の額を撫でておく。


「痛いの痛いの飛んでいけー」

「おぉ、ほんとに飛んでいった……って!子供扱いするなー!」

「俺からしたら(うつみ)はまだまだ子供だよ」


 そう返すと「またバカにされた!?」とさらに抗議の声を強めてきた。

 「触らぬ神に祟りなし」とよく言うが少し妹様に掠ってしまったので、おれは完全に祟られる前にその場を去ることに決める。


第188話終わりましたね。さて出てきました凛のヴァンパイアの仮装!まず最初に出来ましたよね、凛の仮装は。むしろそれ以外思いつかないという異常事態笑

さてと次回は、4日です!お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!感想もどしどしお願いします!飛び跳ねて喜びます!

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