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第184話.妹からのお誘い

「刻兄〜」


 ベッドの上に座りながらパソコンをいじっていると、ガチャりとドアを開けながら(うつみ)が入って来た。


「どうした?」


 パソコンを閉じながらそう聞くと「10月といえばなんでしょ〜」と唐突な問題形式で聞かる。


「10月といえば?」

「そ、10月」

「10月?……ハロウィン?」


 頭の中にある10月の印象、知識、それらを全て総動員して俺はそう答えた。すると(うつみ)はあからさまに顔をにぱーっとさせて笑う。


「ふっふっふっ〜、大正解だよ刻兄!」

「おー、当てた景品はなんと(うつみ)の全財産というサプライズ付きですか」

「あげないよ!?」


 少し焦ったように(うつみ)はそう答えると「コホン」と一つ咳払いをして話を切り替えた。


「景品云々はどうでもいいとして」

「俺的にはどうでもよくはないんだけど」

「あーもうっ!話進まないから少しの間お口チャックしてて!」

「へいへい」


 そう言いながら俺は口元に指を持っていき左から右にファスナーを閉めるようにスライドさせると、俺はどうぞお喋り下さいとジェスチャーで示した。


「えっとハロウィンについてなんだけどね」


 お口チャックをしている俺は何も喋れないので、こくりと頷き返してしっかりと聞いていることを示す。


「地域でハロウィンのイベントするみたいなんだよね。それでなんか手伝ってこいというマイマザーからのお告げがあった訳ですよ」

「それでね蒼姉と凛さんに有理さんは誘い終わったからあとは刻兄だけなんだよ」

「え?今なんて言った?」

「あとは刻兄だけなんだよ?」

「違うその前」

「蒼姉と凛さんに有理さんは誘い終わった?」


 それを聞いて俺は思わず頭を抱えてしまった。


(というか、お口チャックを思わずやめてたよ)


 それは誘ったことに対してではない。俺の知らないところで華山達と繋がっているという事実に対してだ。

 確かに空宮と繋がっている分にはなんとも思わない。なにせ幼なじみ同士なのだから。しかし華山達は少し違う。一緒にプールに行ったことや水族館なんかでばったり会ったことはあるけれども、(うつみ)と連絡先を交換するほどでもなかったはずなのだ。

 なのに繋がってるって。


(女子の連絡網の広がり方まじでわけ分からん)


 「はぁ」と一つため息をつきながら俺は(うつみ)のことを見据えた。怒られると思ったのか(うつみ)は少し体を強ばらせている。


「いや、うん。もう何でもいいや」

「それは参加の意味として捉えてもいい?」

「お好きに」


 そうとだけ答えると「分かった!」と嬉しそうに言いながら(うつみ)は自室へと帰ってしまった。


(俺が参加することって別に重要じゃないと思うんだけどな)


 そう思いながらまたパソコンを開いた。



✲✲✲



 そして来たるハロウィン当日、ではなくその前日。

 俺達は一度全員俺と(うつみ)の家に集まった。なんでも明日着る仮装についての話と、地域の子に配るお菓子を何にするのかという会議らしい。

 会議とは言ってもそれは名ばかりで、ほとんど談笑してるだけなのだが。


「じゃあ皆それぞれの仮装はこれで決定として、次はお菓子についてだね」


 ここでは同じ地域に住む空宮がイベントについての会話を回していた。


(お菓子か。正直子供のうちは沢山貰えるだけで嬉しそうなもんだけどな)


 そう思いながら他のメンバーを見てみると割と真剣に全員思案している。

 とは言っても今の子供が何を好きなのかとかは知らないわけで、だから俺はしばらく1人で考え込んでしまった。


(グミはまぁ嫌いな子供はいないと思う。煎餅とかだと好き嫌いが出てきそうだよなぁ。マシュマロとか?あれなら割とみんな食べれそう)


 必死に様々な案を出しては保留、もしくは消して俺は考える。するとそのタイミングで凛がビシッと手を挙げた。


「はい、凛どうぞ」

「僕はクッキーとかがいいと思います!」

「その心は?」

「ほら、クッキーだったら手作り出来るしアレンジも簡単だからね!」


 凛がそこまで言うと華山も「確かにいいかもしれませんね」と言いながら頷いている。

 女子2人の意見が合致したのだ。ここで俺が出した案を出すのはなんか違う気がする。というか、俺も納得した。空宮と(うつみ)も俺と同様らしくこくりと頷いている。


「じゃあクッキーにするか」


 ここで俺がそう言うと他の4人は「うん」と頷いた。


「よし、じゃあ手作りの場合どのタイミングで作り始めるかだよな」


 そう言うと空宮が喋り始める。


「クッキーの手作り自体は明日の朝からやれば、ラッピングも含めて全然間に合うと思うよ。それに作り方も簡単だから5人もいればだいぶ役割分担もしやすいだろうし」

「なるほど。じゃあどこで作る?」

「そこは刻兄、ここを貸し出そうよ!ここなら5人のうち3人がキッチンの使い勝手が分かってるわけだし効率がさらに上がるでしょ?」

「だな」


 そう返すと「3人?2人じゃなくて?」という凛の声が聞こえてきた。その疑問にはすかさず(うつみ)が答える。


「3人の理由はですね蒼姉が時々晩ご飯を作りに来てくれるからですよ!」

「そうそう。刻のご両親って共働きでね、よく刻達2人だけでご飯を作らないといけないことが多いらしいの。それで聞くところによると(うつみ)ちゃんの帰宅が遅れた時は刻が作るんだけど、レパートリーがパスタしかないから(うつみ)ちゃん飽きちゃったみたいで」

「だから蒼ちゃんが作ってるってことなんだね」

「そういうこと」


 凛は納得したと同時に少し羨ましそうに俺の顔をじっと見つめてきた。


(やだ照れる)


 そしてずいと近づいてくると「僕も料理出来るんだけどなぁ?」と謎の主張をしてきた。


「美味しいご飯作れちゃうんだけどなぁ?」

「そ、そうか」

「刻くんにも食べてもらいたいなぁ?」

「う、うん……またいつかな?」


 そう返すと凛は「ふーん?」と言って質問をしてきた。


「ね、刻くんのご両親は次、いつが夜遅くまで働く日なの?」

「えっと、多分3日後」

「OK、3日後ね」

「え、何でこんなこと聞いたの?」


 そう聞くと「それはまた後日のお楽しみだよ♪」と笑顔で返されてしまった。隣からは(うつみ)の「何で分からないんだよ」という呆れた声が聞こえてくる。

 分からないものは分からないと言いたいところだが、本当は内心少し気づいている自分もいた。


(まさか凛がここで空宮に対抗心を燃やすとは思わないだろ)


 「はぁ」とため息をつくと俺は窓の外を眺めた。

 日はまだ高く、今日という日がまだ続くことを暗に意味している。


第184話終わりましたね。さて始まりましたハロウィン編。とは言っても10話も行かずに収まるとは思いますけど。どのみち楽しみにしててくださいね!可愛く書きまくりますか!!

さてと次回は、26日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方お願いしますね!

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