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第182話.ほっぺた

 熟れたリンゴのように赤く空宮の頬は染まっている。髪の隙間からチラリと見えた耳も、ほんのりと赤くなっていた。

 浮かべる表情はやり切ったことによる満足感溢れる笑み。口の両端を上げてニッと笑うその姿は、見ていてどこか落ち着くものがある。


「ほっぺた真っ赤だな」


 そう言いながら俺はなんとなく空宮の頬をつついた。

 柔らかくて繊細で、強引に扱えば簡単に傷ついてしまいそうな頬。「ひゃっ!?」と高く可愛らしい声を出しながら、空宮は頬を隠すように両手で覆った。


「な、なな、何するのさっ!!」

「触りたかったから触った?」


 正直にそう答えると「何で疑問形!?」というツッコミが音速で飛んでくる。


「あぁ、すまん。突然何の断りもなく触ったのは俺だし、嫌だったんならそれこそもっと誠心誠意謝る」


 そこまで言うと空宮は少しオロオロとし始めた。


「い、いや。別に、そ、そこまで深く捉えなくてもいいよ?と、刻ならまだ許せるし。……す、少し驚いただけだから」

「そう?」

「……う、うん」


 こくりと頷くその姿を見ると、俺は切り替えるために「ふぅ」と息を吐いた。


「つまり、いつでも触っていいってことだな!」

「へ?……いやいやいや!いつでもはダメだよ!?せめて断りを入れてからにして!」


 プンスカと頬を膨らませながら怒る空宮の姿は、とても可愛らしい。


(それと、今言質取りましたからね?断りを入れてから触るぞ?いいんだな?)


 そう思っていると、邪な事を考えているのがきっと空宮にも感じ取られたのだろう。サッと一歩後ろに後退りして「や、やっぱり、断りを入れてからでもダメ」と言われてしまった。


「えー」

「えーって言っても、ダメなものはダメ!このまま許可しちゃうと私が恥ずか死ぬことになりそうだから!」

「大丈夫。そんときはAEDでもなんでも使って蘇生する」

「んー、謎の頼りがいっ!!」


 そんなバカみたいなやり取りをしながら俺達はカラッと笑った。

 やはり空宮には笑顔が一番似合う。頬をふくらませた顔も、ほんの少し照れて赤くなった顔も、センチメンタルになった顔も、全部似合ってる。だけどやっぱり笑顔が一番。


「さてと、もうそろそろ男女混合リレーだな」

「だね。早く私も着替えて戻ってこないと」


 空宮はそう言うとクルっとその場で回れ右をして、更衣室の方に向かった。「じゃあ、すぐ戻ってくるよ〜」とそう言いながら空宮は片手を上げて小走りになる。

 次の次に始まる競技。それが俺達の参加する男女混合リレーだ。

 結局何に出ようかと困っているところを空宮に誘われた感じで今に至る訳だが、一つだけ解せない部分がある。


「よーし、鏡坂!男女混合リレーでも一位取るぞ!」


 そう。このイケメンバカ野郎の灯崎が一緒ということだ。男子2人女子2人だから確かに出場する男子が俺だけというのは不可能だが、それでも他の人材がいたはずなのだ。なのに灯崎って。


(まぁ、アンカーをしなくて済んだのはラッキーだけど)


「そーだよっ!刻くん頑張るぞー!!」


 さらに後ろからは、空宮よりも先に更衣室で着替えを終えていた凛がそう言ってきた。


「そうだな」

「もっと元気よーく!」

「おー!」


 そんなやり取りをしながら俺は「ふっ」と軽く笑った。

 男女混合リレーのメンバーは凛、俺、空宮、そして灯崎。ある意味いつも通りで、ある意味最強のメンバー。それが少しおかしくて、だけど頼りがいしかなくて。


「よしっ」


 そう言って立ち上がると、ずっと座っててすっかりなまってしまった体をググッと伸ばした。


「やってやるか」


 独り言のようにそう言うと両肩に二つの違う感触の手が置かれて、「「もちろん!」」と聞こえてくる。そしてその後続くようにまた首が急に締まった。


「よぉし!この4人で頑張るぞー!!」

「「「おー!!」」」


 聞こえてくる空宮の声。


「し、死ぬ……。ギ、ギブアップ……」


 高速で首にある空宮の腕をトントントンっと叩きながら、俺はそう言った。


「あ……ご、ごめん」

「ケホッ、お、お前少しは学習しろ……」


 そう言うと空宮はシュンとなりながら「はい、反省してます」と言う。


(そんな顔をされると俺が悪いことをしてるように見えてくるから不思議なんだよな!?)


 世界七不思議の一つに可愛い女の子は最強というものを足してもいいのではないのかと思いながら、俺は空宮の頭に手を乗せて軽く撫でた。すると少しだけ希望を見出したのか、上目遣いになりながら空宮は俺の事を見てくる。


「ゆ、許してくれるの?」

「あぁ、次やったらシバく」

「ゆ、許してくれてなかった……」


 ガックリと項垂れる空宮を見て俺達は笑った。

 青空の下のスタジアムに、アナウンスの声が響く。


第182話終わりましたね。

今回は謝辞です。ありがたいことにどんどんポイントが頂けております。突然僕は毎回飛び跳ねて喜んでいるわけです。一度は部室で「増えてるっ!」と叫び、部員に変な目で見られるほどでした。これからもぜひよろしくお願いします!

さてと次回は、22日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」という方はぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!飛び跳ねて喜びます!

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