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第18話.ゆっくり帰宅

 凛の歌声が響く中、俺達は凛の声に合いの手を入れる。それに合わせて凛の調子はどんどん上がっていった。それを繰り返しながら過ごしていると、俺達がカラオケに来てからそれなりに時間が経っている。スマホをつけて時間を見てみると8時を示していた。


「結構経ってるな」


 ボソッと独り言をこぼす。するとそれに気付いたのか、華山がこちらを見てきた。


「鏡坂くんどうかしましたか?」

「いや、ここに来てもう2時間も経ってることに驚いてな」

「あぁ。そうですね、楽しい時間は過ぎるのが早いです」

「そう、それに対し授業とかの嫌な時間はなかなか過ぎないんだよな」


 そう言うと華山も深く頷いている。

 楽しい時間が早く過ぎるのは時間を気にしないから。反対に嫌な時間が長く感じるのは時間をしょっちゅう気にするからだそうだ。つまり俺はこの時間を楽しんでいるという事になる。

 そして華山も。多分空宮も凛もこの時間は早く過ぎていると感じているだろう。

 そんな事を考えていながら凛の歌を聴いていると、モニターの画面が採点の結果を教えてくれる状態になっていた。


(前々から思っていたが、カラオケの採点ってさ結構辛辣だよな)


「やった、機械にビブラート褒められたよん〜」


 凛は採点結果にご満足な様子。

 どうやらこの3人、全員歌が上手いらしい。先程から80点台が出ていないのだ。

 俺以外。

 そう俺以外……。何だかこの後に歌うのが少し辛い。



✲✲✲



 俺達はその後も、時間になるまで歌い続けた。お陰様で喉は潰れて、歌い慣れている空宮以外全員の声がハスキー状態になっていた。


「じゃあ私と刻はこっち方面の駅だからここでお別れだね」


 空宮がそう言うと、華山と凛もそれに反応して口を開く。


「私は最寄り駅がここなのでそのままバスに乗って帰りますね」

「僕は学校方面に一個戻った駅だから駅までは一緒だよ〜」


 皆それぞれ自分の家の方向と帰宅方法を伝える。


「じゃあそういう事でな、華山気をつけて帰れよ」

「ありがとうございます、鏡坂くん」

「じゃあね」

「バイバーイ」


 挨拶を交わすとそれぞれの家の方向へと向かう。

 駅に着き改札を抜けた後には、凛と別れた。


「じゃあまた明日ね刻くん、蒼ちゃん」

「おう、お前も気をつけて帰れよ」

「また、明日ね〜」


 凛と空宮は手を振り、そしてそれぞれのホームへと登れる階段へ向かった。

 空宮とは家が近いので必然的に最寄り駅も同じとなる。だから昔から小学校の校外学習でも、中学の時の修学旅行の時でも集合場所に行く時はいつも一緒に行っていたのだ。正確には俺が空宮に連れられてただけなんだけど。

 まぁ、今思えば色々ありがたかったけどな。修学旅行に関しては朝あいつが迎えに来てくれなきゃ俺遅刻するところだったわけだし。

 ホームで喋りながら電車を待つ。


「今日楽しかったね」

「そうだな、楽しかった」

「お、刻が珍しく素直に言った!」

「俺だって素直に言うことぐらいあるわ」


 そんな風に話をしていると周りからは「痴話喧嘩かしら?」などと言う声が聞こえてきた。


(痴話もチワワも無いよ?)


「あ、電車来た」


 空宮が右を向きながらそう言った。俺もその方向を向くと明かりを点けた電車がこちらに向かって走って来ている。


「よし、じゃあ乗るか」

「だね」


 来た電車に乗り込むと、一番近くの空いている席に隣り合わせで座った。


「ふぃー」


 空宮は椅子に座ると大きなため息を吐いた。どうやら歌いまくって結構疲れていたらしい。


「疲れたな」

「そうだねぇ」


 俺達はそう言うと、暫くの間無言になった。隣からは空宮の息遣いがよく聞こえる。


「すー」


(ん、あれもしかして空宮さん寝ていらっしゃる?)


 俺が空宮の方を向こうとして確認しようとすると、不意に俺の肩に体重が乗っかった。俺は静かに隣を向くと、俺の肩の上には空宮の頭がもたれかかっている。


「あれ、完全に寝てるじゃん。どうしよう起こそうかな」


 空宮の事を起こそうか起こすまいか悩んだ末に、起こさないという選択をした。なぜかと聞かれれば、こんなに安心しきった顔で幸せそうに寝ている女の子を俺に起こせるわけがない。

 俺達は駅に着くまでの間静かに過ごす。


「駅に着いたら起こすか」



✲✲✲



 暫くの間電車に揺られていると、目的の駅に着いた。


「おーい、空宮駅に着いたぞ。起きろー」

「むにゃ?」


 俺が空宮に声をかけると、空宮は目を擦りながら俺の方を見て起きる。目には欠伸を少ししたのか、涙が浮かんでいる。


「おはよぉ……」


 空宮はこの数分でどうやら寝ぼけた様だ。


「ほら、寝ぼけてないで降りるぞ」

「はーい」


 俺達は駅の改札を出ると家に向かって帰る。空宮はまだ眠そうに時折目を擦っていた。


「空宮、荷物貸せ」

「何で?」

「疲れてんだろ、そんぐらいなら持ってやれるから」

「うーん、分かった、ありがと」


 空宮はそう言うと、背負っていたリュックを俺に手渡ししてくる。教科書は置き勉しているらしく、そこまでは重くなかったが、眠たそうにしているらしく空宮を見る限り今の空宮には中々負担だったのだろう。たまには、男の俺をコキ使えばいいのだ。それくらいしか俺は出来ないし。

 しばらく夜の涼しい風に当たりながら家に向かって歩く。

俺は一度空宮の方を見て見た。すると、この涼しい風のおかげでもうだいぶ目が覚めているみたいだった。


「空宮、家まで送ってくよ」

「ありがとー」


 そう言うと空宮は俺に礼を言ってくれた。

 俺達はゆっくりと歩幅を合わせて帰る。昔と同じように。


第18話終わりました。何話の時に言ったのかはかは忘れましたが、相変わらず空宮可愛いっ!こんな幼なじみ欲しかった。

さてと、次回は29日です。お楽しみに!

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