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第169話.不意打ちの撮影

「な、何が凄いのかは分からないけど、まぁ、馬鹿にされてる訳じゃなさそうだしいっか!」

「そうだな。馬鹿にするよりもむしろ褒めてるまである」

「えへへ〜、そう?私凄い?」

「おー、凄いぞー」


 適当に空宮に返事を返しながら俺と凛は笑った。

 空宮のこういう時の能天気さはあまりにも平和で、見ていて微笑ましく思う。それに、この特有の緩い空気感は空宮にしか作れない。だから俺はそんな事が出来る空宮を少し羨ましくも思った。


「ちなみにだけどさ、蒼ちゃんは何か出たい競技とかあるの?」

「私?私はね男女混合リレーと、チアリーディングに出てみたい!!」

「チアリーディング?空宮が?」


 正直に言って俺は空宮がポンポンを両手に持って、チアをしているその様子をあまり想像できない。どちらかと言うと応援される側な気もする。


「むむ、何か刻のその言い方私がチアに向いてないみたいじゃん!」

「いや、向いてないとは言ってないぞ?ただ、想像できなかっただけであって」

「それって結局遠回しに向いてないって言ってるようなものじゃない!?」


 プクッと頬を膨らませながら、トンっと俺の胸元に空宮は指を突き立てた。


「じゃあさ刻」

「何?」

「私がちゃんとチアできるって事を本番で見してあげるから覚悟しといてね!」

「ん、楽しみにしとくよ」

「それでよろしい!」


 不敵に笑いながら空宮は俺から指を離す。そしてその様子を見ていた凛が不意に「よし、僕も決めた」とそうボソッと言ったのが聞こえた。



✲✲✲



 放課後になり俺達は少し久しぶりに全員集まってでの部活動を開始した。この前は江草と俺しかいなかった上に、華山の看病に向かってたわけだし、勉強会は部活動ではないのでカウントはしない。

 10月に入ったためか、中庭の木々は緑色からすっかりと赤や黄色に色を変えていた。燃えたぎるような色なのに感じる温度は少し涼しげ。そんな不思議な体験をしながら一枚フィルターにその景色を収める。


「刻ってば本当に中庭の景色好きだよね」


 撮れた写真を確認していると不意に後ろから声を掛けられる。俺は少しピクっと体を強ばらせながらも、すぐに緊張を解いた。


「中庭に一番木とか花が植わってるからな。この学校で多分季節を一番感じやすい場所だし」

「ふーん、季節ねぇ。刻はいつの季節が一番好きなの?」

「うーん、そう聞かれると悩むけどやっぱり秋かな」

「ほう。その心は?」


 理由なんてもの考え出したらキリがない気もするが、所詮は季節の話だ。安直な理由でいい十分だろう。


「俺の誕生日があるのと、紅葉狩りができるからだな」


 そう思って俺が理由を話すと空宮は「ぷふっ」と少し吹き出しながら笑った。


「やっぱり刻らしい理由だね。それとも何かな?俺の誕生日忘れるなよアピール?」

「ちげーよ」

「ふふっ、分かってるって。それにちゃんと祝ってあげるから」

「あっそ」


 好きな季節の話をしていたはずなのに、気が付けば俺の誕生日にスポットが向いている事に対して少し苦笑いを浮かべつつ、仕返しとばかりに空宮の笑っている表情をカメラに収めてやった。


「ち、ちょっと!?いきなりなんで撮ったのさ!?」

「仕返しだよバーカ」

「なっ!?バカって言った方がバカだし、それに変な顔で写ってたら嫌なんですけど!」


 そう言いながら空宮は俺のカメラを取り上げようとしてきた。そして俺はその空宮の手から逃れるためにカメラを高く掲げる。


「ひ、卑怯者っ!えいっ!」


 俺よりも身長の低い空宮はジャンプしても僅かにカメラの下の部分の空気を指で切るだけで、届くことは決してなかった。


「甘いな」

「むふー!!こんな時に身長があればよかったのに!」


 両手で頭を抱えながら空宮は「ぬわー!」と嘆いていた。この隙を好機と見た俺は先程撮った空宮の写真を確認する。

 ……なんだ。


「空宮に一つ良いお知らせがあります」

「何?今この状況がひっくり返るほどに良いお知らせなの?」

「さぁ?それは空宮次第だな」

「何それ。まぁ、いいや。もったいぶらないで早く教えて!」


 そう言いながら俺の服の袖をクイッと引っ張って促してきた。

 距離的に発生する空宮の上目遣い。それに少し鼓動を早めながら、俺はいいお知らせを口にした。


「ちゃんと可愛く写ってたよ」

「へ?」


 何を言っているのかよく分からないといった表情を浮かべた後、段々と言葉の意味を理解してきたのか少しずつ空宮の顔に羞恥心と照れと色々な感情が混ざった表情を浮か始めた。

 そして最後には綺麗に熟れたりんごのように真っ赤に染まる。


「へ、へぁ……か、かわ……可愛く……」

「そうだぞ。可愛く写ってた」


 もう一度そう言えば空宮は完全にオーバーヒートしたかのようにボンッ!と頭上から湯気を出した。


「と、刻に……可愛いって言ってもらえた」


 何やらボソッとそう呟きながら空宮はこちらを見据える。


「か、可愛く撮れてたんなら……そ、その、許す」

「どーも」


 そう返すと俺はまた写真を撮り始めた。


第169話終わりましたね。今回もまたまた微笑ましい回です。いいね空宮、可愛いね空宮。

さてと次回は、27日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」と言う人はぜひブックマークと下の☆から評価の方お願いしますね!ぜひ☆を全部★に変えてあげてください!作者飛んで喜びます!

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