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第159話.熱

 鍵を使って玄関扉を解錠すると俺達は華山宅の中に入る。


「おじゃまします」


 そう言うと靴を脱いでひとまず先生から渡されたメモを見ることにした。


「メモによるとですね、一階にリビングがあって二階に有理先輩の部屋があるみたいです。あ、あそこの階段から登る感じですね」


 江草は指をさしながら俺にそう言った。


「どうする?ひとまず荷物だけリビングに置いとくか?」

「そうですね。その後有理先輩の部屋に一回行きましょうか」

「だな」


 玄関から入ってすぐの扉を開き、リビングと思しき部屋に入った。部屋には白と言うよりもベージュに近いような色合いのソファが置いてあり、カウンター式のキッチンの近くにはダイニングテーブルが置いてある。

 そしてキッチンのある方とは反対側を見れば大きな窓があり、外からたくさんの光を取り入れていた。窓付近には観葉植物も置いてあって全体的に『綺麗』という表現が正しいのかは分からないが、間違いなく過ごしやすい部屋であることには違いない。


「リビング綺麗ですね」

「だな」


 持っていたカバンをひとまずダイニングテーブルの所にある椅子に掛けておく。


「じゃあまずは有理先輩の生存確認からですっ!」


 江草はそう言うと胸の前でグッと両手拳を握った。


「まぁ、場合によっちゃ必要な物も、近くのコンビニかなんかに買い出しに行けばいいしな」

「はい」


 リビングを出て先程確認した階段を俺達は登っていく。

 二階に着くと直線上に廊下が伸びていて、サイドにはそれぞれ二部屋あり一番奥にも一部屋あった。

 大方の部屋配置を確認していると、隣から紙を開くような音が聞こえる。隣を見てみるとそれは江草がメモを開いている最中だった。


「有理先輩の部屋は左の奥の方の部屋みたいですね。行きましょう」


 江草はそう言ってずんずんと歩いていく。

 俺はその後ろから着いて行く形で華山の部屋に向かった。

 コンコンっと扉をノックし江草は「有理先輩おじゃまします」と言って中に入る。

 俺は一瞬女子の部屋に本人の許可なく入ってもいいものかと躊躇ったが、すぐに江草がちょいちょいっと手招きをしたのでつられて中に入った。

 中に入ってみると部屋からは全体的にいい匂いがする。軽く見回すとスティック状の芳香剤が扉付近に置いてあった。香りはいわゆるフローラル系。もっと詳しく言えば柑橘系のフルーティーフローラル。パッと気分も明るくなるような香りで、心地いい。


「有理先輩寝てますね」


 そう言われて俺は江草のいる方を向いた。江草のすぐ近くにはシングルのベッドが置いてあり綺麗に布団がかかっている。

 俺は近くまで歩いていくと華山の寝顔が見えた。


「有理先輩、寝顔まで可愛いなんてズルくないですか」

「いや、俺に言われてもどうしようもないし」


 江草が羨ましそうにそう言うので、俺は肩を竦めながらそう返した。

 だが実際江草が言う通り華山の寝顔は可愛い。目が閉じられることによって長いまつ毛がさらに強調され、さらに整った目鼻立ちも目立つ。

 頬は熱の影響かほんのりと赤く染まっていた。


「有理先輩安静に寝てはいますけど、少し寝苦しそうですよね」

「そうだな。少し汗もかいてるし暑いのかもしれない」

「ですね。冷えピタとかも有理先輩してないですからしてあげましょうか」

「だな。だけど冷えピタどこにあるんだろ」


 俺がそう言うと江草は先生から預かっているメモを開く。


「あー、今は無いみたいです。先生学校から帰る途中に買って帰るつもりだったみたいで」

「そういう事か。じゃ、俺が今から買ってくるわ」


 そう言ってその場を離れようとすると、俺の服の裾がキュッと掴まれた。


「ん?」


 見てみると布団から少しだけ指が出ている。もちろんその指の持ち主はその場で寝ている華山なわけであって。いや、むしろ華山以外のだったら怖すぎる。


 俺はそっと離そうとすると、華山の指はさらに強くキュッと裾を掴んできた。


「え、江草」


 俺は反対サイドにいる江草を華山を起こさないように小声で呼ぶと、江草は何事かとすぐに俺の方に来てくれた。


「どうしました?」

「華山が離してくれないんだけど」


 そう言うと、江草は口元に手を当ててポッと頬を赤くし始めた。


(なんで江草が赤くなってるんだよ)


 俺がそうツッコミを入れようとすると、江草がもう片方の手で俺を制止してきた。


「先輩動かないで下さい。動いたら有理先輩が起きちゃいます」

「でも、そうしたら俺冷えピタ買いに行けないんだけど」

「私が代わりに行きます」

「でも、こういう時って男が行くものじゃないか?それにもし起きた時に女子がいた方が華山も落ち着くだろうし」


 俺がそう言うと江草は「はぁ」と呆れたようにため息をついた。


「別に落ち着く対象が女の子だけとは限らないですよ?男の子でも落ち着く人がいるかもしれませんし」

「いや、そうかもしれないけど。でも華山がそのタイプって確証はないわけだし」

「んー、もうっ!うだうだ言ってても仕方がありません!と・に・か・く!私が買いに行ってきますので、先輩は有理先輩の事、ちゃんと見ててあげてください!」


 江草はそう言うとそそくさと部屋から出ていってしまった。少しすれば玄関の扉が開き、鍵を閉める音も聞こえる。


(まじで行きやがったよ)


 そう思いながら華山の前髪を少しだけのけて、おでこに華山に掴まれてない方の手をピトッと当てた。

 じんわりと華山の熱が俺の手を介して伝わってくる。


(しんどかっただろうな)


 俺は華山の頭を撫でてやった。


第159話終わりましたね。さてさて、熱で寝ているはずの華山が無意識のうちにピンポイントで鏡坂のことを引き止めてましたね。可愛いですね!!

さてと次回は、7日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」「江草ナイスアシストぉー!!」という人はぜひブックマークと下の☆から評価の方をお願いしますね!

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