番外編第150話.夏休みのとある一日
蝉がうるさく鳴き、外は湿度の高さと気温の高さにゴリゴリと精神を削られる夏。どうして俺は今花火専門店などにいるのかと、段々と分からなくなってきていた。
いや、店に来た理由は分かっているのだけど、それにしても今日である必要があったのかまでは分からない。
(ほんと、なんで凛は今日みんなで手持ち花火で遊ぼうだなんて言い出したのか。今日今週で一番気温高い日よ?)
「刻くん刻くん!どっちの花火がいいかな?」
金髪のボブに碧眼が綺麗な凛は、両手に手持ち花火を二種類持ちながら俺の所にまで駆け寄ってそう聞いてきた。
「知らん」
「えぇー。何かアドバイスとか捻り出してよー」
凛は頬をふくらませながらそう言った。
その様子を見ていると何だか突っつきたくなる衝動に襲われるが、ここでそんな事をしたら変態扱いされかねないのでそこは抑えておく。
「んー、ならどっちも買っとけ。どうせ手持ち花火なんて一本長くても十数秒なんだから、多く買ってても遊び終えれないなんてことはないだろうよ」
「そうかな?」
「うん、多分そう。家族で手持ち花火する時も現はいっつもバカみたいに買っていくしな。そんでもって一瞬でなくなる」
まぁ、一瞬でなくなる理由なんて、片手に二本持ちの合計四本同時ファイヤーで遊んでるのが理由なんだけど。
「うーん、それならどっちも買っちゃおうか」
「そうしとけ〜」
そう言うと凛は腕にかけていたカゴにポイッと花火を入れた。
「蒼姉!このバッ!て開く花火面白そうじゃない!?」
「おぉ!面白そう!これバッ!て開くの!?」
「そうみたいだよ!バッ!って!!」
俺と凛のいる所と反対側では空宮と現がジェスチャーを混じえながら花火について喋っている。
そんな空宮達の会話を聞きながら、少し顔を見合わせて「ふっ」と苦笑いを浮かべた。
しばらくの間他にどんな花火を買おうかと悩んでいると、真剣な面持ちで花火を眺めている女子を見つける。光が反射すると灰色に近い銀色に輝く黒髪の持ち主であり、学年一の才女。そして我が部の部長。そう華山有理だ。
「何見てんだ?」
「え?あぁ、鏡坂くんですか。いえ、線香花火を沢山買うべきか地面に置く噴射系をいくつか買うべきか悩んでたんです」
「線香花火と噴射系か。これまたジャンルが全然違うもので悩んでんだな」
そう言うと華山はこくりと頷き首を縦に振った。
「そうなんです。派手なものを選ぶのか、派手さはそこまでないけど見てて落ち着くものを選ぶのかっていう所で少し」
線香花火が見てて落ち着くってのはよく分かる。実際俺なんか現と花火した時の場合、初めだけ何種類か派手な手持ち花火をして、あとは全部線香花火に費やすからな。最後の火の玉が落ちないように出来るだけ長持ちさせるのが、何気に一番楽しかったりするし。
だからと言って噴射系が要らないという訳でもないんだよな。あれはあれで見てて楽しい。絶対に現とかはキャーと叫ぶからうるさいけど、叫んでしまうのもわかる程度には派手で心躍るものがあるからな。
結論どちらにも良い点があるという事で、俺が取れる策はこれだな。
「じゃあ俺が噴射系何個か選んで買っとくから華山は線香花火を束で沢山買っといてくれ」
そう提案すると、華山はこちらを向いて「いいんですか?」と聞いてきた。
(提案してるのはこっちなわけだし当然でしょうよ!)
俺はそう思いながら首肯をした。
✲✲✲
花火をする場所は、ちゃんと花火をしてもいいという事が決められた東遊園地ですることにした。
俺達は水の入ったバケツとゴミ袋、そしてをライター用意して早速花火を始める。
カチッとライターに火を灯すと空宮から順にどんどん花火の先端をかざしていく。ライターの火が花火に移るとプシュッという音を立てて光り始めた。
「わぁー!刻、見て見て!綺麗だよ!」
「そうだな」
俺は幼い子供のように嬉しそうに遊ぶ空宮の様子を微笑ましく思いながら凛、華山、現とどんどん花火に火をつけていった。
「はい、刻兄にも火のおすそ分け」
現はそう言うと俺の花火に火を分けてくれる。
「ありがとな」
「いえいえ〜。さ、楽しまないと損だよ!無くなるまで遊び尽くそう!」
「だな」
俺は笑いながら楽しそうにに前を歩く現を見ていた。
番外編第150話が終わりましたね。今回の番外編は2部構成です!次回はこのお話の続き。皆さんもうすぐ来る夏休み、盛大に楽しんでやろうじゃありませんか!
さてと次回は、20日です。お楽しみに!
それと「面白い!」「続きが気になる!」「花火はパチパチと静かに燃える線香花火派!」「花火はドカンと大きな打上花火派!」という人はぜひブックマークと下の☆から評価の方をお願いしますね!