第148話.意識してしまう今日この頃
朝学校に登校し教室に入ると、いつもはもう少し遅くに登校してくる凛がいた。その珍しい光景に少し目を開きながら凛に声をかける。
「お、おはよう」
「うん、おはよう」
凛の方はそうでも無いが俺はどうしても昨日の事を思い出してしまい、少し言葉に詰まってしまう。
意外と女々しいのかもしれないと思いながら、俺はカバンを机に掛けて椅子を引き座った。今日は小テストがある訳でもないし、出さなければならない課題がある訳でもない。つまるところいつも通りに登校した結果、暇を持て余すという事態に陥っただけのこと。
「ふあぁ……」
昨日の夜凛に言われた言葉について考え過ぎたせいであまり寝付けなかったためか、自然とあくびが出た。そしてそれは隣に座る凛にも伝播する。
「ふあぁ……眠たい」
「だな。昨日はあまり寝付けなかった」
「うんうん。昨日の夜はね、色々と考え事してたから。その……色々と」
凛はそこまで言って自分が何を考えていたのかという事を思い出したのか、言葉を詰まらせながら耳をほんのりと赤く染めてそう言った。
そして凛の言った内容が大方分かる俺も耳に熱を帯びる。
「そ、そんな事よりさ!今日の数学の内容ってどんなだったっけ?僕数学苦手だから軽く予習しとかないと着いて行けなくてさ」
凛は無理やり話題を変えるべくそう聞いてきた。
ここは俺も乗っておくべきだろう。
「今日の範囲は指数関数とかそんなんじゃなかったか?ちょっと俺も正確には覚えてない」
「そっか。ありがと!あとは自分で確認してみるよ!」
そう言って俺に礼を伝えてくると、いそいそと机の中を漁り始めた。そしてものの数秒もすれば、机の中から数IIの教科書を取り出してくる。
文庫本より少し大きいサイズの教科書を片手に、凛はパラパラっと前回の授業で最後にやったページを開いた。
「多分ここかな?」
凛は少し不安そうにそう言いながら教科書と睨めっこを始めた。
さっきから凛のことばっかり見てるけど、俺も俺で別に数学得意じゃないからな。凛を見習って軽く予習でもしといた方がいいのか?
答えなんて分かりきっている自問自答をしながら自席を立った。
結局予習はしないという選択を取る俺って一体。
「灯崎ー」
ダラダラと歩きながらクラス1の高身長イケメン馬鹿野郎の元に向かった。近くには上木もいる。
「お、鏡坂おはよう!」
「よう、鏡坂」
「何だ?何か用か〜?」
灯崎はイラつきそうになるニマニマとした顔を浮かべながら俺にそう聞いてきた。上木も同様に俺に向けてそのような視線を送って来ている。
「別に。暇だったから上木を借りに来ただけだ」
「えっ!?さっき俺の名前呼びながら来なかったっけ!?」
「じゃあ鏡坂行くか」
「おう」
「あれっ!?上木も!?」
灯崎は大声でワーギャー騒ぎながら俺と上木の後ろを着いてきた。
「なぁ、どこ行くんだ?」
「「自販機」」
俺と上木が口を揃えてそう言うと灯崎は「お!ハモった!」と言って1人笑っている。
「なぁ、上木。灯崎を置いて一気に自販機まで行くってのはどうだ?」
隣にいる上木にボソッと耳打ちすると、上木はこちらの顔を見てニカッと笑った。
(それは作戦の了承ということで捉えるぞ!)
俺と上木は次の瞬間脱兎のごとく駆け出した。少し反応の遅れた灯崎は「え?え!?何なに!?」と言って廊下で1人騒いでいる。
✲✲✲
「……となるので、ここの答えは5√3となります」
1時間目の数学。俺は「ふあぁ」とあくびをしながら授業を受けていた。しかしあくびの声が少し大きかったのかおじさん先生に少し睨まれる。
「刻くん睨まれちゃったね」
隣に座っている凛はクスッと笑いながら、俺にそう話しかけてきた。
「だって眠いからなぁ。それに数学よく分からんし」
「もう、それじゃあテスト大変なことになっちゃうよ?」
俺は「めっ」と凛に軽くお小言を貰う。
「じゃあ、ひとまず赤点回避を目標にするわ」
「もう……。じゃあテスト勉強は一緒にしたげるよ」
「いいのか?」
「うん。このまま行くとなんだか刻くん数学だけ赤点取りそうな勢いだからね」
凛はそう言うと「さ、授業に集中だよ」と言って前を向いてしまった。
第148話終わりましたね。今回は何だか書き足りないというか何と言うか。また編集していきますね!
さてと次回は、16日です。お楽しみに!
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