第145話.反則行動
凛の隣にしっかりと腰かけると、オープニング映像の流れ始めたアニメを見始める。
手にはなぜか凛に持たされた、もう一つのクッションが握られていた。クリーム色が基調のこのクッションは俺の腕にすっぽりと埋まるほどの大きさで、非常に柔らかいので抱き心地が凄く良い。
クッションを少しギュッと抱き直してから、もう一度テレビに向き直った。
「始まったね〜」
隣で少しワクワクしたような、楽しみから来たドキドキとした感情なのか、とにかく可愛らしい笑顔を浮かべながらそう言う。
「だな。最後まで今日はとことん楽しんでやるぞ」
「うん!だね!」
にへらと笑いながら、先程の俺と同じようにクッションをギュッと抱き直した。俺はその仕草に一瞬目を奪われそうになるが、すぐに目を凛から逸らす。
アニメは一話冒頭から俺達をその世界にへと引き込んでいき、気が付けば五話にまで差し掛かろうかという所まで来ていた。
アニメの一話分がCMなしのオープニングとエンディング有りでだいたい23分程だから、既に四話分見終わっている俺達は確定で1時間を過ごしたことになる。
本当に夢中にしてくるものは、人といい物といい、時間の流れを忘れさせてくる。
「ちょっと休憩しよっか?」
凛は唐突にそう提案してきた。
「そうだな。同じ姿勢ってのも別に楽じゃないからな」
「そうそう。僕も少しだけ腰が痛くなってきちゃったよ」
「イテテ……」と、そう言いながら少し腰をさする。
俺と凛はベッドに腰掛けているだけなので、背もたれが存在しない。なので今の凛のように長時間同じ姿勢だと、どこか体を痛めてしまう可能性があるのだ。
「ふんー………!っはぁ!」
凛は大きく伸びをすると、そのままの勢いでボスっと後ろに倒れ込んだ。
「ふかふかベッドくん。君はいつでも疲れた僕の体を癒してくれるよ〜」
「何言ってんだ?」
「ん〜?ベッドくんの良い所?」
そう言いながらバッと腕を俺の方に向けて広げてきた。
唐突すぎる行動に理解が追いつかないでいると、凛が喋り始める。
「ほら、刻くんもおいで。横になったらすごく気持ちいいよ〜」
(行くってどこに!?凛の腕の中か!?それは色々と大変そうなので遠慮しときますね!!)
そう思いながら「大丈夫だ」と一言、俺は凛に伝える。
するとそれを聞いた凛は少し寂しそうな顔を浮かべながら「せっかく勇気出して誘ったのになぁ……」と、俺に聞こえるか聞こえないか程度の音量でそう言った。まぁでも、結果的には俺には聞こえていたのだが。
「はぁ……」
軽くため息をつくと凛の腕の中にこそ行かないが、凛の寝転ぶ隣に俺はドサッと倒れ込む。
チラリと目線だけ右を向くと、凛は目を丸くしてこちらを凝視していた。そして次第に凛の頬が段々と朱に染まり、口をパクパクとさせ始めた。
「どうした?俺の事誘ったんだろ?」
そう言うと凛は顔を一気に真っ赤にして、手に持っていたクッションに顔を埋めてしまう。
そしてクッションに顔を埋めたまま凛は俺の名前を呼んだ。
「と、刻くん!」
「何だ?」
そう聞くと、凛は俺の名前を呼んだ時よりかは幾分か弱々しい声で「そ、それは……反則だよぉ……」と返してくる。
「何が反則なんだ?」
俺は少し意地悪でそう聞いてみた。
すると凛はクッションを少しだけずらし、目だけ俺にも見えるようにしてから話し始めた。
凛の目は涙で濡れ室内の明かりに反射している。
「そうやって……そうやって、僕にとって予想外の行動を取ってくるところだよ!」
「なるほど。じゃあ凛的には俺がどんな行動を取ると思ってたんだ?」
さらに意地悪で凛にそう聞くと凛は「少しぶっきらぼうになって、ちょっと照れる、とか?」と言った。
まぁ、あながち間違いじゃないと思う。凛からは見えないかもしれないが実際俺の耳は今もの凄く熱を帯びているし。
「じゃあ凛にとって俺が取ると思う行動と俺は違う行動をとるよ」
そう言うと凛の頭にポンッと手を乗せて、優しく撫でてやる。すると凛は顔をさらに真っ赤に染め、言葉にならない声を出した。
第145話終わりましたね。今回は甘々目指して頑張りましたよ!次回もさらに甘々を目指して頑張りますね!
さてと次回は、10日です。お楽しみに!
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