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第137話.映画館

「これも良いし〜、あ!これも可愛い!」


 オシャレなBGMが流れる服屋で、空宮は色んな服を手に取りながらキャッキャと楽しんでいる。俺はその様子を後ろで見守りながら、空宮にイタズラで被らされたハットを両手に持っていた。


「ん?あれれー?もしかしてそのハット気に入っちゃったのかな〜?」


 しばらくハットを色々な角度で眺めていると、空宮がそう聞いてくる。


「悪いか?思ったよりも良かったんだから別にいいだろ」


 そう言うとなぜか空宮は慎ましやかな胸を反らしながら、ドヤ顔を浮かべていた。


「何でドヤ顔」

「そりゃあね、刻がそのハットの存在を知るきっかけを作ったのは他の誰でもない私なんだからね!ドヤ顔の一つや二つも浮かべたくなるでしょうよ」

「そういうものか?というか、イタズラがきっかけな気もするけど?」


 そう言うと空宮はわざとらしくコホンと咳き込み「まぁ、それは置いといて」と言って話題をそらした。


「ほら、そんな事より私服の試着したいからさ見てくれない?」

「話しそらした上に頼み事かよ」

「まぁまぁ、幼馴染のお願いってことで旦那ここは一つ頼めねぇかい?」


 空宮はなぜか江戸っ子風にそう尋ねてくる。

 江戸っ子ガール……良い、と頭の隅でそんなどうでもいい事を考えながら「分かった」と一言空宮に返す。


「じゃあ早速試着室にゴー!」


 空宮はそう言うと、店の奥にある試着室の方にテテテッと小走りで行ってしまった。俺はそれを追うようにしながら歩く。

 数歩も歩けばすぐに試着室にたどり着いた。


「あ、刻」

「何だ?」


 靴を脱いで試着室に入ろうとする空宮に名前を呼ばれ、空宮の方を向いた。


「覗いちゃダメだからね」

「覗かねぇよ」

「ホントかなぁ?」

「何でここで嘘つく必要があるんだよ!」


 そう言うと空宮はくつくつと笑いながら「ごめん冗談冗談」と言った。


「まぁ、でも覗きたくなっても覗いちゃダメなのは変わらないからね〜」


 空宮はそうとだけ言い残すと、シャッとカーテンを閉めてしまった。俺は試着室で着替えている人間に話しかけるのは些かどうなのかと思い、空宮に文句を言おうにも言えない状況に陥ってしまった。


 試着室の中からはスルスルっと空宮が着ていた黒のノースリーブワンピースを脱ぐ音が鮮明に聞こえてきて、なんだかいけない事をしているような気分になる。


(もう少し防音性を高めた方がいいかもこの試着室)


 そう思いながら空宮がカーテンを開けるのを待った。



✲✲✲



「ねぇ何見る?」


 私は隣で今日新しく買ったハットを嬉しそうに被っている刻にそう聞いた。

 今は映画館にいるのだ。そして何を見るのかは決めてなかったから、今はそれを決めている最中。


「別に俺は何でもいいけどなぁ」


 刻がそう言うので私は思わずため息を大きく一つ漏らしてしまった。


「あのね?そういった何でもいいっていう煮え切らない答えがいちばん困るんだよ?」

「えー。でも本当に何でもいいしな」

「本当になんでもよくても適当に何か考えて提案する!これ大事!だから適当に決めて!」


 私がそう言うと、刻は「めんどくさいなぁ」と言いながら今やっている映画を調べ始めた。


「じゃあこのホラーは?」

「絶対ダメ。私泣いちゃう」


 刻が提案してきた映画を私がズバッと一刀両断すると、刻はガクッと項垂れてしまう。


「流れるように却下するじゃん。俺的に今の結構ダメージデカいぞ?」

「それはごめんね?でもしょうがないじゃん。怖いの嫌いだし。もっと恋愛とか海外の映画とか来ると思ってたからさ」


 私がそう言うと刻は「確かに空宮はそっち系の方が好きだろうとは思ったけど」と零している。


(なるほど、明確な悪意があったわけだね?後でお説教しなきゃ)


 そう思いながら適当にCMで宣伝していた映画を選ぶ。


「ねぇ、席どこがいい?」

「別にどこでもいいけど、やっぱり後ろの方がいいんじゃないのか?」

「かな〜」


 私はそう言いながらタッチパネルを操作した。



✲✲✲



 シアターに入ると私達は先程取った席に座った。

 私達の周りにもたくさんの人がいて、少しザワザワとしている。


「何か少し緊張する」


 私がそう言うと刻は少し笑いながら「何でだよ」と言った。


「別に俺たちが何かするわけじゃないんだし」

「そうだけどさぁ」


 私はそう言いながらやはり少し緊張していた。

 映画を見ることに対してじゃない。刻と2人でデートと言われてもおかしくないこの状況下で、映画を見ることに緊張しているのだ。そしてその緊張は朝からずっと。


(昔は全然こんなことにならなかったんだけどなぁ)


 そう思いながら私はスクリーンに目をやる。

 シアター内のライトはゆっくりと光を落とし、そして見える光はスクリーンの明かりだけとなった。

 いよいよ始まる。


第137話終わりましたね。最近は映画を見ることがめっきり減ってしまいました。忙しいんですよ学校が。

さてと次回は、24日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」「映画を見に行きたい!」という人はブックマークと下の☆から評価の方をお願いしますね!

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