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第131話.後輩

 いつも通り部活動をこなし、部室に戻って帰宅する準備をしていると不意に部室の扉がコンコンとノックされた。部室内を見渡すと、俺と同じように少し驚いた表情を浮かべるの空宮達がいる。


「みんないるし、誰かな?先生?」


 そう言いながら率先してノックされた扉に近づいて行った。空宮は扉に手をかけるとガラガラと開ける。すると扉の向こうにいたのは制服のリボンが緑色女の子。髪の毛は茶色がかっている。


「リボンが緑ってことはもしかして1年生の子?」


 空宮は訪れてきたその女の子にそう聞いた。

 確かにうちの学校では学年色がそれぞれ設定されており、俺達は青だ。ちなみに3年が赤で1年が緑。

空宮がそう聞くとその女の子はこくりと頷いた。


「はい。私1年7組の江草(えぐさ)早苗(さなえ)と言います!」

「はぁ。ちなみに江草ちゃんは何か用があってここに来たの?」


 空宮がそう聞くと江草と名乗る女の子はコホンとわざとらしく咳を一回した後に、一枚の紙を取り出してから口を開いた。紙にはPhotoClubと記載されている。


「私このPhotoClubに入部希望です!!」

「えぇーー!!?」

「はぁっ!?」

「あれ!?華山さん倒れたよ!?」


 江草がそう言った事によって部室は一時騒然となってしまった。



✲✲✲



「ご、ごめんね?驚かせちゃって」

「い、いえ!」


 空宮は部室の椅子にちょこんと座る江草にそう言うと、部室の端にあった椅子を何個か持ってきて、俺達にも座るように視線で指示を出してくる。

 それに従うと俺達は適当に座った。


「それで、聞き間違えじゃなければ江草ちゃんはこの部活に入部したいんだよね?」


 空宮が優しい口調でそう聞くと、江草は「はい!」と元気のいい声でそう答えた。

 それを目の前で聞いていた空宮は、何とか意識を取り戻した華山にどうするのかアイコンタクトを交すと相談し始める。


(確かにこの部活の部長は華山だもんな。この手の話はだいたいは部長に一任されるわけだし、空宮の判断は正しいって事だな)


 そう思いながら華山がなんと言うのか耳を傾ける。


「えっと、まずなんですけど、この部活って特に存在を知られてるわけではないですし、特に部員募集とかもしてなかったのでどういった経緯で知ったのか教えてくれませんか?」


 華山がそう聞くと江草はその経緯を話し始めてくれる。


「この部活自体を知ったのはこの前の文化祭のときです。文化祭のときに配られてたプリントに掲載されてた写真を撮ったのがPhotoClubってポスターの下に書いてあって、それを見て存在を知りました」

「という事は知ったこと自体はわりと最近ということですね」

「はい」


 華山はそう聞くと腕を組んで少し考え始める。俺と空宮、凛は一体華山が何について考えているのかが分からず、お互いに顔を見合せた。

 そんな事をしていると華山が喋り始める。


「えっと、実はというか、まだ鏡坂くん達にも話したことがなかったんですけど」


 そう言うと全員の視線が華山一点に集中する。


(何なんだ?俺達にも話したことがない事って)


 俺達の思ってる事が伝わったのか、華山はすぐに話し始めた。


「えっと、実はこの部活私達が卒業したら廃部になるんです」

「え、何それ聞いてないよ!」


 空宮は驚きを隠せずに動揺した様子の声でそう華山に言った。


「まぁ、落ち着け」


 空宮の肩に手を乗せて制止すると空宮は「ごめん。少し取り乱しちゃった」と言ってしゅんとなる。


「それで、どういう事だ?」


 俺は華山の方を見て聞くと、華山はゆっくりとその理由を話し始めてくれた。


「鏡坂くんには一度言ったことがあるので知っていると思いますけど、この部活自体私のために作られたものなんです」


 確かにその話は華山と出会ってすぐの頃に聞いた。


「それで、本来部員が3人以上いないと部活動として認められないところをこの部活だけが唯一の例外として存在していたんです」

「つまり?」


 そう聞くと華山はこちらを向いて口を開いた。


「この部活は私の卒業と同時に廃部となることを条件に成立してたんです」

「なるほどな」


 華山の言葉を聞いて華山の言いたい大方の意味を理解した。

 つまりは俺達がいてもいなくても廃部すること自体は決まっていて、でも同学年だから俺達が入部すること自体に抵抗はなかったと。ただ、それが一つ下の後輩が入ってくるとなると話は変わってくるわけだ。

 仮に江草が入部したとして俺達が卒業してしまえば、この部活の部員はさらに誰かが入部しない限り江草1人だけの部活になってしまう。だが1人だけの部員で部として成り立っていたのは華山にのみ許された例外であって、それが江草に適用されるわけではない。

 つまりどのみち入部したとしても、すぐに廃部になってしまう可能性の方が高いということ。

 だから華山は江草が入部するということに対して、少し考えていたのだろう。

 俺が大方の内容を頭の中でまとめていると「それでも!」と言う声が部室に響いた。


「それでも。私はこの部活に入りたいです!文化祭で存在を知ってから何度か活動してる様子も見ました。全部楽しそうでみんな仲良さげで私もあんな風に笑いたくて」


 江草は一拍置くともう一度口を開く。


「だから、やっぱりこの部活に入りたいです!」


 華山はそう言う江草の言葉に少し圧倒されていた。


「入れてやってもいいんじゃないのか?」


 俺が華山にそう提案すると凛と空宮も「うんうん!」と加勢してくれる。


「廃部に……ほとんどの確率でなるんですよ?」

「はい!」

「それでも入りたいですか?」

「もちろん!」


 華山はそう言う江草についに折れたのか少しだけ息を多く吸うと一言喋った。


「分かりました。入部届けを受理します」


 その声は静かになった部室に響いた。


第131話終わりましたね。今回は後輩が出てきました。実は江草は元々江草先輩として登場する予定でした。ですが話が進んでいくにつれて3年生は受験で刻達に絡んでる暇なんかねぇわ、ということに気がつき急遽後輩となった次第です!

さてと次回は、12日です。お楽しみに!

それと「面白い!」「続きが気になる!」「まだまだ来い新キャラ!」という人はぜひブックマークと下の☆から評価の方お願いします!作者の励みになります!

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